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フィレンツェ守護聖人のお祭り


【守護聖人のお祭り】

少し過ぎてしまいましたが、6月24日はフィレンツェの守護聖人、洗礼者ヨハネ誕生の祝日でした。

キリスト教圏では各市町村に守護聖人がおり、共同体の聖人の日は祝日です。学校もお店も銀行も全てお休みです。代わりに時代衣装を着たパレードを行ったり、市を開いたりとイベントが催されます。


ヨハネはキリストよりも先に布教活動を始め、彼の言葉に賛同した人達に洗礼式―キリスト教への入会儀式―を行っていた人です。

ヨハネがいつも通り荒野で洗礼を信者たちに行っていたところ、布教の旅に出たキリストがやって来ます。彼にも洗礼を行い、ヨハネの死後も洗礼式はキリスト教徒になるための大切な儀式となりました。

キリスト教の確立になくてはならない存在です。


そんなヨハネを祝うフィレンツェで行われる2つのイベントがあります。


一つは洗礼者ヨハネの水と呼ばれる魔法の水をお祭り前夜に作る事。

もう一つは夜に花火を上げることです。


【洗礼者ヨハネの水】

洗礼者ヨハネの水は、洗礼者ヨハネの祝日の前夜に準備します。そのため前夜は洗礼者ヨハネの夜とも呼ばれます。真夏の夜とも称されることも。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」とも関連があります。


祭日の前日23日の日没後、野の草花を集めてたらいに水と共に浸し、窓辺やバルコニーで月の光に当てます。翌朝、この「魔法の水」で顔を洗ったり、怪我や病気を抱えている所に付けたりします。美容、治癒の効果、健康促進、運にも恵まれると言われるからです。


使う草花に厳格な決まりはありませんが、多くのレシピを見ると、ヨモギ、セージ、ローズマリー、ヴェルヴェーヌ、ラベンダー、コモン・ルー、サンザシ、ミント、セントジョンズワートの花が挙げられています。みんな昔から薬草として重宝されているものばかりです。

特に最後の花はイタリアでは洗礼者ヨハネの花と呼ばれているので、欠かせないようです。

その他はバラ、カモミール、ポピー、ヤグルマギクなどが見られます。


洗礼者ヨハネの水

この伝統は古代のケルト起源とされます。

かつて洗礼者ヨハネの誕生日は夏至の日と重ねられていました。ケルト文明では古代から夏至の日は自然の目覚め、再生を祝っていました。光が増し夏の花が咲き誇る事から、妖精による不思議な力が働いていると考えられていたからです。

教会はその慣習を取り入れ、洗礼者ヨハネの誕生をこの日に祝う事にします。作物が育つこの時期が天気に恵まれ実りある収穫を得られるよう、願いを込めながらです。この伝統が洗礼者ヨハネの水の起源であり、また洗礼にも結び付けられています。


洗礼者ヨハネの水は民間伝承の為、観光地ではあまり見かけません。でも2年前、シニョリーア広場で公開されたので、またお披露目するかもしれません。



【洗礼者ヨハネの花火】

フィレンツェ守護聖人のお祭のクライマックスは、花火です。毎年22時位にミケランジェロ広場から20〜40分打ち上げます。


元々は花火でなく、焚き火でした。夏至の日に広場で焚き火をし、火が尽きた後に灰を髪に付けると魔除けになると信じられていたためです。これはヨーロッパでよく見られる風習です。イタリア語ではファロ(falò)といいます。


フィレンツェでは洗礼者ヨハネの日の前夜(昔は夏至の前日)、大聖堂広場、城壁の門の上、シニョリーア広場などで行っていました。

13世紀からは火薬の発見により、焚き火は人工の「火」に取って代わられ、主に白い花火が上げられるようになります。


コジモ・デ・メディチ1世の時代(16世紀)には「ジランドーレ」と呼ばれる大きな花火装置が使用され、華やかさを増していきました。

1800年代初頭以降、赤、青、緑の色の花火が開発され、輝き、燃焼速度など、現代のものに近づきます。


夏至の日は太陽が年間で一番力を増す日であり、水の象徴である満月とも重なる日です。太陽の神と月の女神が結婚する日とも称されます。そのため、フィレンツェではお祭前夜に洗礼者ヨハネの水を準備し、お祭の夜には花火を上げます。


今年はお祭り当日、朝から雨降りで花火は上がらないだろうと思っていたら、22時過ぎにいきなり花火の音が聞こえたので驚きました。慌てて窓から顔を出したら、とてもきれいに夜空を照らしていました。


家の窓から


今日から夏本番、1年の後半戦の始まりです。

Buon estate a tutti🎇




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