紡ぎ糸

登場人物
カイト
ツムギ 
サク 
ミサト

机が四つ、カイトを囲むように置いてある
中心の下を向いて立つカイト
糸が引き継ぎれそうな音と時計の針の音が鳴り響く

サクとミサトが入ってくる

サク「カーイト!」

カイト「お、おう」

ミサト「なにしてんの?」

カイト「いやぁ俺おっちょこちょいだからさ、教室に忘れ物(無理に笑う)」

ミサト「カイトいつも何かしら忘れてんじゃん笑」

サク「ほんとだよ〜しっかりしてくれよ〜」

ミサト「クラスの人気者で学級委員長さんなんだからさー」

カイト「そう…だよな」

サク「早く帰ろうぜー」

サクとミサトがはける
カイトは2人と反対にはける
チャイムの音
カイトが走り込んでくる

カイト「おーい、もう授業始まるからみんな席ついてー!ミサトー!サクー!ほらみんなも」

ツムギだけが席につく
声のみで「カイト、級長なんだからみんなをまとめるのがお前の仕事だろ?」

カイト「はい、すみません…ほらみんな!」

ミサトとサクが笑いながら入ってくる

カイト「サク!ミサト!遅いよ」

サク「トイレ行ってたんだから仕方ないだろ〜カリカリすんなって」

ミサト「ごめんごめん笑」

音がなくなり、カイトは1人立つ

カイト「なんで俺だけ…」

またガヤガヤし始める
チャイムの音
カイトは1人クラスのことを黙々とやる
それを見つめるツムギ

カイト「母さん進路のことなんだけど」

母(ミサト)「お母さん疲れてるの後にして」

カイト「先生、クラスの文化祭のことで」

先生(サク)「それくらいカイトならできるだろ、まかせるよ」

カイト「進路のプリントまだ出せないかな早めに出してくれないと」

生徒(ツムギ)「えぇ、あーそのうちだすわ」

みんなから無視され振り回されるカイト

ツムギ「カイト」

カイト「あ、ツムギどうした?」

ツムギ「大丈夫?」

カイト「え?…平気平気!俺やらなきゃいけないことあるからまたな」

ツムギ「カイト!」

カイト「ん?」

ツムギ「糸が切れなきゃいいね」

カイト「え?」

ツムギ「じゃあね」

糸が引き継ぎれそうな音がまた鳴る

母(ミサト)「カイト!なんでもっと早く進路のこと言わないの!お母さん恥かいたじゃない!」

カイト「ごめん、母さんでも」

机を一つ真ん中に持っていく

先生(サク)「クラスのことは級長の務めだろ!カイト!」

カイト「ごめんなさい…」

机をもう一つ真ん中に持っていく

生徒(ツムギ)「カイト君、ごめんあのプリントなくしっちゃったー先生に言っといてー」

カイト「え、ちょっと」

机をもう一つ真ん中に持っていく

カイト「もう無理だ…」

残った一つの机にはツムギがいる
セリフを言いながら集めた机を適当に解散させていく

カイト「俺は進路の話しようとしたのに聞かなかったのは母さんじゃないか」

カイト「級長級長って俺は完璧な人間じゃない!」

カイト「みんな俺のことを良いようにしか思ってない!!」

少しの沈黙

カイト「俺なんていなくても」

机の上に立ち跳び降りようとする

ツムギ「カイト!待って!」

カイト「ツムギ?」

ツムギ「待って、まだまだ行っちゃだめ」

カイト「誰も俺のことをなんて良いようにしか思ってないんだよ、理不尽で自分勝手で…」

ツムギ「私見てたよ」

カイト「何を」

ツムギ「カイトがクラスのことを一生懸命やってくれてたことも、進路について真剣に考えてたことも、みんなのこと考えて声をかけてたことも全部、カイトは頑張ってたよずっと」

カイト「でも」

ツムギ「限界を超えるまで、糸が切れちゃうまで本当によく頑張ってたよ、私があの時もっと心配して声をかければよかった」

カイト「いいよ、もう…」

ツムギ「カイト!」

カイト「もう切れたんだよ、糸、もう二度と繋げれないよ」

ツムギ「切れたらまた結び直せばいいじゃん」

カイト「だからっ!」

ツムギ「カイト、みんなね、カイトのこと信頼してたんだよ」

カイト「……」

ツムギ「それにカイトは優しすぎるし、周りのことばっかり、自分のこと大切にしてない、」

ツムギ「靴紐が解けた時、走るのは危ないでしょ?そしたらどうすればいいと思う?」

カイト「また結び直す」

ツムギ「そう、だからもっかい結び直そ?自分のことも見つめ直してみようよ」

ツムギ、机から降りてカイトに手を差し伸べる
カイトも机を降りツムギの手をとる
そこにサクとミサトがくる

サク「カイト!」

ミサト「もう心配させないでよ」

サク「カイトいなくなったらクラス崩壊するわ!」

ミサト「みんなカイトを必要としてるよ」

カイト「2人とも…」

サク「俺、カイトならなんでも頼めるって頼りすぎたごめん(机を運びながら)」

ミサト「私も、カイトと仲良いはずなのにカイトの辛さに気づかなかった(机を運びながら)」

ツムギ「私、カイトのこと気づいてたのに助けられなかった(机を運びながら)」

カイト「俺、もっと周りに助けを求めらるようにする。だからこれからも頑張るからついてきてほしい(机を運びながら)」

机はひし形に作られている

ツムギ「カイト」

カイト「これで結び直せたかな」

ツムギ「うん、また歩き出せるね」

サク「え、結び直すってなんの話?」

カイトとツムギ笑い合い

カイト・ツムギ「内緒!」

ミサト「えぇなんでぇ?」

4人笑い合う

カイト「ツムギ、ありがと」

ツムギ「もしまた切れたとしても私が結び直してあげる」




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