第八十三話:日系の会社で働き始める

 数日後、改めて連絡先を交換した日本人と会い、履歴書を渡した。それを社長に渡して、面接の日取りを決めましょうということになった。日本にいる母親に少しでも安心させたく連絡をすると、「すごい話だけれども、なんか騙されているんじゃないの」と今までのごたごたを色々聞いていたからか、私よりも大分慎重になっていた。私が、「でもさ、そんなの騙すメリット何もなくない?名刺も貰ったし、面接は会社でするんだよ!」と言うと、ようやく少し安心したようで、「わらしべ長者みたいね!」と独特な言い回しで喜んでくれた。

 そして数日後の面接、日本から持って来て一度も来たことがなかったスーツを着て会社まで向かった。ほとんどは意思確認くらいで、あとは世間話とかをして、もう一人出向で来られている直属の上司になる日本人を紹介されて面接は終わった。そして翌月の4月から働くことになった。

 カジノのオーナーに辞めたい旨を伝えると、給料を上げることを提案されたが、やはり夜勤でカジノのキャッシャーよりはオフィス勤務をしたいという思いもあり、丁重に断った。

 社長にちゃんとしたところに住んでほしいと言われ、まずはそれに見合うアパートが見つかるまでの間はホテル暮らしをすることになった。会社はマンガン電池を製造販売している会社で、私が配属されたのは営業マーケティング部門だった。日本人の出向のかたが部長としていて、そのすぐ下にタンザニア人の課長、そして課長補佐として私は働くことになった。

 部下となるセールスマンたちは明らかに皆私より年上、当初は明らかにこんな女の子に何ができるんだよと言った態度だった。部長からはタンザニア人の課長のエクセルなどのスキルが低く、レポートなどが何も満足に作れない状態のため、彼の仕事を全部引き継ぐつもりでやって欲しいと言われた。

 部長がいつもかなりその課長のことを叱咤していたのだが、その上で彼のやっている仕事を私がこれからはやるようにと、入社して1か月がたったときに言われた。あまりにそれが露骨だったので、なんか彼の仕事をとったみたいになってて、恨まれたりしないかなと私は若干心配になった。その不安が数か月後、的中することとなる。

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