確かに今ここにはないもの、だけど確かにあの日ここにあったもの。

いつからだろう。あんなに一緒に喜んだり、悲しんだり、家族の様な、当時は何なら家族よりも何よりも優先にしたいと思っていた仲間と、なんだろな、なんだかどうしても比べてしまって。羨ましくて。みじめになってしまって。素を出せなくて。いい恰好しいになってしなって。。。

・・・毎日の挨拶が暑いね~の言葉しかでない夏の日々の中、横断歩道で信号待ちしている時に何げなく空を見上げた瞬間、突然にあの夏を思い出す。よくこんな暑い中、テニスなんか出来たな。何の疑いもなくギューっと抱きしめていた夏の青春。眩しすぎてもうまっすぐには見れない夏の思い出。だな。こりゃあ。  

私は大学時代、テニスサークルに所属していた。いわゆるテニサー。チャラくてマイナスイメージを持つ人もいるけれど、とにかく真剣に一生懸命にテニスに飲みにイベントに頑張る、笑顔あふれる仲が良いサークルだった。どんなキャラの人も温かく迎えてくれる空気がそこにはあり、何事も楽しんでなんぼ!を大切にするこの空間が私には居心地が良くて大好きだった。初めての彼氏なんかも出来て。永遠に話してられるような仲間も出来て。皆で様々な所に行き、遊び、話をして、私の世界は一気に広がった。中にはサークルを辞めてしまう人も居たけれど、だからこそ残った同学年の男女の仲間とはたくさんの時を過ごし、時々ケンカもしながらも確かな絆で結ばれていた。いわゆる男女の関係ではない、仲の良い友情に周りは驚くばかりだった。

夏には大きなテニス大会があり、仲間を自分の事のように何時間も炎天下の中一生懸命応援した。勝利すると乱舞し、負けると涙ぐんで悔しがった。そして自分の試合にも仲間はそうやって応援してくれた。真っ黒に日焼けしTシャツは汗だくからの乾いて塩がついてることもしょっちゅう、一生懸命にテニスボールを追っかけ、合間で面白いことを見つけたり、ご飯を食べ、ビールも驚くほど飲み、もちろん酔っ払って、毎日皆で笑い転げていた。(・・・ここには書けない数々の伝説も。いつか書きたい。)合宿ではどうやったら楽しく上手くサークルを運営できるかアレコレ話合いそれぞれの役割分担を決め頑張ってまとめあげた。・・・大学時代の自由で長い夏休み時間とバイトで稼いだお金を全てサークルの仲間と過ごす日々に使っていた。時間もお金もあるなら他にもっと色々出来たかもしれないと今なら思う一方、大事な経験だった。当時私にとっては必要な世界だった。この世界が全てだった。何においても優先したい居場所と仲間だった。きっと皆もそうだったと思う。・・・その後、大学を卒業し、社会人になっても皆で励ましあいながら過ごし、社会人になったし今までの様な貧乏旅行ではなく大人な旅館になんかも行って、その時お風呂上りに汗をうちわ仰ぎながら仲間が無意識に「最高だわこの仲間」と言ったのを思い出す。が、時が経ちもちろん当たり前の様に、仕事、結婚、子供、住宅、などなどなど。仲間それぞれの道を歩むことになる。それぞれの大事にしたいもの共に。少しづつ確実に大きく皆それぞれに置かれた環境が異なっていく。時々は皆で集合していたけれど、最近は各々の環境で必死に生きている最中でめっきり会えていない。皆元気かな。

・・・なぜ赤から青信号になるわずかな時間にあの夏を思い出したんだろう。今も変わらず大好きで大切な仲間。会えば楽しくて仕方ない仲間。連絡すればすぐ集合できる仲間。でも心の奥の奥の奥の方にある、ちっぽけな自分の気持ちを知ってるから自分から連絡出来ないでいる。皆も苦労しながら生活しているけれど、それでも皆が輝いて見えて自分との差に比べてしまって羨ましくて仕方ないこと、カッコ悪い素の自分をさらけ出せず隠し強がってしまうこと、置かれた環境が違いすぎて少し話が合わないこと。そんな自分も情けなくて申し訳なくて。

あの頃のようにはいかない。でも思う。私を作ってくれたのは世界を広げてくれたのは大好きな皆だ。

あの夏を超えて私たちは生きている。確かにここにはない、あの夏に乾杯!そしてまたいつの日かあの夏以上に心から笑って会える夏を願い乾杯!必ず皆と素でさらけ出して、そのまんまで会える自分になってみせる!

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