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あの頃、あたたかな赤

イギリスはすっかり夏、ビールがとても美味しい季節、正味ビールはいつでも一番うまい。ビールをどれだけ飲めるかで社会的に評価される世界ならいいのにな、ビールめちゃくちゃ飲むから内定くれ、、、。

そして今は、イタリアの洞窟住居群、マテーラにきている。スーツケースはイタリアに届かず、未だ所在不明だが、リュックにはワインオープナー常備、私は思ったよりもポジティブな人間かもしれない、テラスから連日ノンストップ飲酒、本日も元気に全文駄文。

今日はとても大事な場所について。
わたくし、大学2年生頃から、近所にできた赤い金魚の提灯のある居酒屋でバイトをしていた。単純に、家から30秒だったのと、店先の求人張り紙に、「お酒の場が好きな人」と「地獄です。。。」、酒飲んでみんな元気になろうぜ!!的なことが書いてあり、電話した。

面接をしてくれたボス(以降兄者)、とても暑い8月の日に、冷たいネクターを出してくれた。兄者、わたしの生い立ちを色々聞いてくれて、サードカルチャーキッズあるあるの、「帰る地元、あるようでない」という話、「ここがホームになったらいいと思っています」と言ったら、信じられないくらい、真剣に聞いてくれてびっくりしたのがとても印象的だった。

わたくし、高校生の時から青春コンプレックスがあった。高校時代はあまり周りに馴染めず、死顔で課題に追いかけられる日々の中で、SNSに投稿される友達たちのキラキラした青春の日々、SNS補正だと分かっていても、冴えない自分の日々と比べて卑屈になり、深夜ラジオを聴きながら、大丈夫、大丈夫と言い聞かせ眠る日々だった。憧れだった大学に入ってからも、毎日はそんなに大きく変わらなかったし、青春コンプレックスをしっかり拗らせ、ヘッ!!と思っていた。

わたしの他に、同じ時期からもう二人、一緒にバイトを始めた。二人はとても明るくて、かわいいしかっこいい、学校でも、サークルでも、完全に一番人気者だった。一番人気者なのに、めちゃくちゃ優しくて、鼻につくところが一切なくて、いつもとても気さくに喋ってくれ、非の打ち所なくて普通に腹立ってきたな???となりつつも、しっかり捻くれたわたしのことを認めて、飲む時も、話す時も、いつも、いつもわたしを真ん中に入れてくれた。このようなインクルージョンの塊、私が人生で培ってきたさいあく先入観も一掃の、悔しいけど大好きにならざるを得ないお二人、酒の力をしっかり借りて、大笑いし、泣いたりして得た生きる糧ということはnot大袈裟、コンプだらけの教室の隅っこの高校生の私が、まるっと救われた気持ちです。これはクールな2人とマブになれたからということではなく、クールな2人とマブになることを、私の先入観とか自信のなさとかが阻止しようとしてきても、2人がそんなものはどうでもいいとぶち破って、両手を引いて連れ出してくれたからですね。ずっと、いつも、救われています。

わたくし、自分のことを知ってほしい人と話をする時、自分のアイデンティティが結構苦しかったことで形成されているため、さいあくな話をしがちだと思う。あの時はきつかった、苦しかったな、など。
兄者、私が酒を飲んだりして、そのような黒歴史を発表するたび、想像できないところを潜り抜けてきたんだね、というようなことを言ってくれた。びっくりした。自分よりも一回り以上年上で、人生の様々、私なんかより全然たくさん経験してきている大人が、若い私の話を対等に、真剣に聞いて、認めてくれたこと、あまりにも救いに感じる。辛いことは誰の人生にもあるから、と言わず、「私の」話を聞いてくれる、親ではない大人の存在、本当に恵まれていた。嫌なことがあったと公園で話したとき、自分の気持ちを一番に尊重してほしい、サポートはする、と言ってくれ、こんなに私の話を真摯に聞いてくれる大人がいるんだと、嬉しかった。わたしも、兄者と同じくらいの歳になって、わたしより若い人と関わることができたら、兄者のように、尊重して、その人のことを心から応援できるような、その人の人生で、私を思い出して、元気を出してもらえるような、そんな青春ガガガスペシャルな大人になりたい。

兄者とは違う優しさを見せてくれるニキ、いつも面白い(つまらない)冗談を言って笑わせてくれていた。「人には人の笑い」、マイウェイと日本のうま飯を教えてくれる、しっかり胃袋を掴まれているし、ガチ恋に告白する時におすすめのアクアタイムズの名曲も教えてくれる。何より、どれほど忙しく、おまえ、何やってんだよ!ということがあったであろう時も、明るく、笑顔とジョークを絶やさないニキ、人生の、「不測の事態こそ冷静に、ポジティブに」という最重要項を体現してくれている、わたし、絶対、このような大人になれ、、、頼むから、、、!

先日、限界酒カス兄者が店で限界を迎え、バンザイをして寝ている写真が送られてきて、不覚にもロンドンの街中で泣いてしまった。ライフルライフル!!!!と構えちゃう毎日の中に感じる、社会の救済と、あたたかみ。

(軽いお気持ちで)バイトを始めた時からずいぶん時間が経って、自分があの時想像していたよりもずっと、ずっと、大事なホームになっている。あの時のわたくし、しっかり、いつでも帰る居場所を守ってもらっていますよ。

一緒に、世知辛い社会に折り合いをつけながら、うちらの東京ドームに立つために戦っている親友、いつでも、どんなに時間が経ってもまた一緒のペースで酒を浴びてくれる親友、帰る場所をずっと守っていてくれる大人たちと、ちゃんとした大人が、あんなに酒飲んでいいんだと思わせてくれる大人たち、全てに救いがありますね。救済、ありがとうございます。

マテーラのホテルのイタリアお母さんマリア、この最高ホテルはマリアの家らしく、一部屋だけホテルにしてるそう。だから最高のテラスはずっと貸切、朝日も夕焼けも独り占め、素敵で、ありがたい。

マテーラは田舎で、英語があんまり通じない。マリア、私の英語はダメダメだからと言いつつ、イタリア語でテラスからの景色を説明してくれ、朝ごはんの時間を翻訳機使いながら頑張って聞いてくれ、美味しい朝食を説明してくれ、私にここでのステイを楽しんでほしいというお気持ち、すごくあたたかく伝わっている。別に言葉がわからなくても、楽しんでほしいという気持ちと、人のあったかマインドはめちゃくちゃ伝わる、どこに行っても、その場所が好きな場所になるかどうかは、やっぱり、絶対人だよな、と兄者たちの笑顔と、あたたかな提灯の赤、最愛人たちの顔を、遠く離れたイタリアで思い出した。

楽しんでほしいというお気持ち、やさしい人間たちの笑顔とその思い出は、ずっと誰かの心をあたたかく照らし続け、そういう甘い記憶たちが、いつも誰かの心の拠り所になり続けるんですね。


また、大きくなって、たくさん酒を抱えて、帰ってきます。

あの頃の、当たり前じゃない日々を想って

でかい愛

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