男闘呼組ライブに行ったことと、その後の日々について


1.ガーデンシアターへ

私にとって男闘呼組は「好きな俳優さんが昔やっていたバンド」でした。2016年頃から岡本健一さんの大ファンである私ですが、男闘呼組デビュー時にはまだ生まれておらず、自分がこのバンドを見ることはないんだろうなぁと思ってたんです。ところが2022年7月、ある日突然彼らがテレビに現れました。
健一さんが歌ってる!!かっこいい!
活動期間は翌年8月までの1年間で、まずは東京で復活ライブをやるのだといいます。有名どころの曲しか知らなかったので正直最初は迷いましたが、健一さんの原点たるバンドの復活を見届けねばとの思いから、ガーデンシアターに行くことを決めました。

会場に着くと当時からのファンと思しき方がたくさんいて、開演前から辺りは大変な熱気に包まれていました。やはり自分は場違いだっただろうかと一瞬思いましたが、来てしまったのだからもう戻れません。入場して開演を待ちました。

時間になると暗転し、スクリーンにメンバーが1人また1人と集まる様子が映し出されます。「再集結」を強く印象付ける演出に、割れんばかりの拍手と歓声が響きました。入場前に感じていた若干の居た堪れなさは早くも消え去り、自分は何かすごいものを見に来たらしいと興奮したのを今でも覚えています。
そこから始まった約2時間のステージは、私が体験したことのない類のものでした。もちろん馴染みのない曲もあったのですが、メンバーが全力で届けようとする音楽と、29年分の情熱でもってそれに応えるオーディエンス、その両者が創り出す奇跡のような空間に、私はただただ圧倒されていたのです。そして何より印象的だったのが、とにかくご本人たちが嬉しそうだったということです。この再始動が他の誰でもない「メンバーたちの」意志によるものだということが、客席にも確かに伝わってきたのでした。

2.帰宅後

帰宅後もライブのことが頭から離れませんでした。一夜にしてアラサー女がファンになったのです。だとすると、約30年間待ち続けた人の感動はどれ程のものだったでしょうか。会場で1人静かに泣いていた女性を思い出しながら、私は漠然と、生きてりゃ良いことあるって本当かもなと思いました。今が苦しくても、数年先数十年先に何が待ってるかなんて分からないよな、と。
あるいは私があの日感じたのは、もっと大きくて根源的な何かだったのかもしれません。日々の悩みとか不安とか、そういう個別のことを全部超えた、ただ「生きろ!」と背中を押してくれるような強烈なエネルギーを、客席で受け取った気がしてならないのです。
更に思い出されるのは、成田さんのことでした。あの人何があんなに魅力的だったんだろうとずっと考えていました。考えてるうちにめちゃくちゃ好きになってました。長年芸能界に身を置いてきた他の3人の、いわゆるタレント然とした華やかさとはまた違う、少し影のある佇まいととんでもなく魅力的な歌声。特に印象に残っているのは、ライブ中盤に披露されたバラードかもしれません。後にタイトルを知った「不良」というその曲はあまりに切なくて、でも憂いを含んだ歌声にぴったりで、彼の復帰を待ち続けた人が大勢いた理由が分かった気がしました。

そんなことを考えているうちに、この感動を話したいという欲望を抑えられなくなってきました。誰かに聞いてもらいたい…!しかし周りに男闘呼組ファンの友人はいません。私はスマホを手に取り、ほとんど使っていなかったTwitterを開き、世界に向かって叫びました。「男闘呼組がすごかった」と。有難いことにこの心の叫びに反応してくださった方々がいて、その日を境に私は更なる深みへハマっていくことになります。

3.SNSのこと

「沼に落ちる」という俗語があります。SNSを通じて見るファンの方の熱意や知識は想像以上で、メンバーのバックグラウンドや必聴の名曲、30年前のエピソードといった情報に触れるたび、自分が目に見えない何かに引きずりこまれていく感覚がありました。沼落ちとは言い得て妙であり、これもまた私にとっては初めての経験だったのです。
更なる発見があったとすれば、SNSでのつながりが日々の生活にも良い影響を与えてくれるということでしょうか。同じアーティストのファンであるというその1点は、ただそれだけでゆるやかな連帯感を感じさせてくれました。例えばものすごく辛いことがあったとき、「今日から職場が変わるあの人も今頑張ってるんだろうな」とか、「繁忙期のあの人は大丈夫かな」とか、「あの人がアップしてた焼肉美味しそうだったな」とか、そういうことをふと思い出すのです。男闘呼組ファンであるということ以外ほぼ何も知らない方々の日々の投稿に、私は確かに勇気づけられています。

4.おわりに

月並みな表現ですが、ガーデンシアターのライブに行って以降、少し自分の世界が広がった気がします。毎日の生活にどうしても閉塞感を感じてしまうとき、あるいはなんだか追い詰められたような感覚を覚えるとき、あの非日常の空間に思いを馳せるのです。意図せずあれだけすごいことに出会えたのだから、これから先も思いがけない感動と出くわすことはあるのでしょう。

男闘呼組は今週末からTHE LAST LIVE と銘打ったツアーを開始し、その後は新バンドRockon Social Clubとして活動していくことを公表しています。当時からのファンの方の思いは大変複雑であろうと推測しますが、私自身は勝手に「屋号は変わるが屋台骨は同じ」といったイメージを持っています。バンドの形態や活動の頻度は変わるかもしれませんが、これからも彼らの音楽を聴けることがたまらなく嬉しいのです。だからこそまずは8月まで、新たなスタートを切る9月以降も、どうか色々な人がずっと元気で、長く長く応援できますようにと願わずにはいられません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?