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4/11 一青窈✖️山田悠史✖️稲葉可奈子対談

登壇:一青窈、山田悠史、稲葉加奈子


山田(以下 山):これまでの私達との会話を通じて、ワクチン接種に対する不安は何か変わりましたか?

一青窈(以下一):自分自身がワクチンに対して推奨派ではなかったし、もしかして製薬会社からお金をもらっているんじゃないかと思っていましたが、そんなことはなくて、医師の方がワクチンの意義を理解して、たくさんの人に接種を受けてほしいからという思いで動いていることがわかって、腑に落ち、自分と同じ考えを持つ人の意見に左右されて勝手に不安になっているという自分自身の立ち位置が浮き彫りになりました。ワクチンを受けることで世の中が明るい方向に舵を切れそうだということに共感を持てました。今はワクチンを受けたいと思っています。ただ、それでもやっぱり怖いという人もまわりにはいると思います。この話を聞いても不安になる心理は理解できますが、その不安になる「なにか」とはそれぞれなんだろうと思います。

山:そのあたりが解き明かせると、より大切なものが見えて来るのでしょうね!

一:それでも、例えば日本製の方がいいかなと思う気持ちが出てきたり、アストラゼネカ社のニュースのように不安要素を煽る話も多く、それがアップデートされる環境にあると、ワクチン接種を受けることの大切さより、デメリットのインパクトのほうが勝ってきてしまうんですよね。

山:報道の紙面に踊る文字も恐怖を煽るような文字だったりしますもんね。文字自体がもたらす不安というのもあるかもしれませんね。

一:インフルエンザの予防接種の経験のように、打ってもかかってしまうという経験があったり、打った経験のないワクチンへの有効性に対する疑問というのもあると思います。それを丁寧に解説してくれているニュースやワイドショーもあると思いますが、数は限られていて、全体に懐疑的に見えてしまう現状もあるかもしれません。

山:そのあたりも今後の議題にしていきましょう。今回の議題はまずアストラゼネカの話でしたね。まず明らかにしておきたいのは、アストラゼネカ社のワクチンとファイザー社のワクチンとは少し違うということです。全ておなじワクチンと一括りにすると誤解を招くかもしれませんので。ファイザー製はモデルナ製と同様のmRNAワクチンで、アストラゼネカ製のワクチンはウイルスベクターワクチンという違う技術を用いています。違うワクチンなので、副反応も違う可能性というのは予想もされていたことだと思います。さて、今回アストラゼネカ製のワクチンの接種後に血栓ができる事象が報告されたわけですが、そもそも血栓ってきいたことがありましたか?

一:血が詰まるなにかなんだろうなという程度の知識しかないですね。

山:そうですよね。例えば私たち医師が病院でよく見る「血栓」の病気の代表例といては昔「エコノミークラス症候群」と呼ばれていた病気があります。この「エコノミー症候群」なら聞いたことがあったでしょうか?

一:長い時間、飛行機に乗っていると体を動かさないので、足がうっ血した状態になるようなことですよね。

山:おっしゃるとおりです。血のめぐりが悪くなると血液には固まる性質があります。だから包丁で手を切ったときに血が止まるんです。ところが、長時間飛行機に乗っていて足を動かさないと足の血管の循環が悪くなります。すると、血のかたまりができてしまうことがあります。これが血栓です。血栓が足の血管に詰まるだけであれば足の問題だけで済みますが、血管は体中つながっているので、その血栓が足の血管から剥がれて体の中を旅して、やがて心臓に到達し、心臓から肺にうつり、肺の血管は非常に細いので、そこで詰まってしまうことがあります。肺は酸素などのガス交換をしている臓器なので、肺の血管が詰まると酸素が取り込めなくなり命に関わります。これがいわゆるエコノミークラス症候群の大きな問題です。血栓ができる病気はままあることなので、因果関係なくワクチン接種後に発生する人が一定数現れることは予想できたことでした。しかし、今回アストラゼネカ社に報告された血栓症は少し毛色が違いそうなのです。一つは脳の中など変わった部位に血栓が見られていること。変なところに血栓ができたというと、やはり普通では起こらないことが起こっていると考えることが自然ですよね。もう一つは、血栓を作る際にはたらく細胞で血小板というものがあるのですが、ここにも変化が起きています。通常血小板が減っている人というのは血が止まりにくく、血が出やすくなるのですが、アストラゼネカ社のワクチン接種後で血栓ができた人の血液検査を見ると、なんと血小板が減っていたのです。血小板の数も減りながら、血栓ができる病気というのは私もかつて専門にしていたのですが非常に稀な病態です。このような病気がワクチン接種のあとのタイミングでまとまって偶然発症したというのはやはり不自然で、因果関係のある可能性がありそうだという話になってきました。それで、きちんと調べないといけないよねという流れになっています。今その調査が行われていますが、非常に興味深いことがわかってきました。病院でよく用いる薬の一つにヘパリンというものがありますが、このヘパリンを使ったあとに稀に血小板が減って血栓ができる病気が起こることがよく知られています。この病気とワクチン接種後に血栓が見られた人たちに、なんと同じ血液検査項目の陽性がでたという報告がいくつか上がってきたのです。ということもあり、ワクチン接種後に起こる血栓症は、因果関係のある可能性がますます高まり、ヘパリンの副作用と似たようなことが体の中で起こってるのではないかというところまで今のところ突き止められています。この先、どんな人が発症するのか、どんな人が注意しなければいけないかのデータを集めていくことになります。

一:試験的にワクチンを用いた試験を踏まえて承認を出したけれども、それでもエラーが起きたということですか?

山:これについては100万回、1000万回打ったことではじめて見えてきたもので、頻度が非常に稀ですよね。非常に稀なものは5万回や6万回接種の試験では拾えないこともあります。1000万人の単位に広がることで初めて見えてきたのです。それはどんな薬にもあることです。また、同様の技術で作られたジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンでも非常に少数ながら報告されてきています。ジョンソン・エンド・ジョンソンは1回接種なので数はより少ないかもしれませんが、600万回ほど接種した中で、4名ほどの報告が出てきているようです。まだ因果関係は明らかではありませんが、mRNAワクチンでは血栓症の報告はないので、もしかするとウイルスベクターワクチンに共通した副反応なのかもしれません。

一:日本でアストラゼネカ社のワクチンを受ける選択肢というのは今のところないんですよね?

山:今のところ、日本では承認の申請だけが行われている状況で、それ以降には進んでいません。また、こちらアメリカでも使われていません。主に接種が行われているのはヨーロッパや韓国です。ヨーロッパの一部の国では、30歳未満の人はアストラゼネカ社のワクチンではなく別のワクチンを使うほうがいいと考えが少し変わってきた所もあります。60歳、70歳の方や持病のある方は、今の社会を生きている中でコロナにかかって命を落とす確率が、血栓症の頻度よりもだいぶ高いということで、両社を天秤にかけた結果アストラゼネカ製であってもワクチンを接種したほうが良い。一方、若い方は、コロナで命を落とす確率はゼロではないが低いため、副反応とコロナ感染とを天秤にかけたときに要検討という議論が出てくるのは自然なことかもしれません。このような背景があって、アストラゼネカとジョンソン・エンド・ジョンソンについては血栓症について検討中ということになりましたが、裏を返せば、ファイザーやモデルナについては1億を超えるような回数を打っていてもアナフィラキシーについては稀にありますが、血栓症のような重篤なその他の副反応は報告されてきていないということで、安全といえる実績がますます上がってきたと言えるのではないでしょうか。

一:アストラゼネカ製のワクチンは有効性が下がるという情報も聞いたことがあるのですが、有効性が下がるのはどういうことでしょうか?

山:まず、それぞれの治験の環境、条件が違うので、各社のワクチンの有効性の数字を単純比較することはできません。その前提の上で、低い可能性は指摘されています。アストラゼネカのワクチンはチンパンジーに風邪を起こすウイルスを使っているのですが、このウイルスは人にとっては感染したことがないウイルスなので、接種を受けると、このウイルス自体に対する免疫も獲得してしまいます。すると、2回目の接種を受けたときに、運び屋であるウイルス自体が攻撃されてしまい、コロナウイルスのレシピを十分届けられなくなり、2回目の接種の効果が低下する可能性が懸念されています。

一:ありがとうございます。アストラゼネカ社のワクチンは選択肢として我々が選ぶことができないものなので、今のところはそもそもそんなに心配しなくてもよいということですよね。

山:日本では現在ファイザーのワクチンのみが利用可能で、次に治験をしているのもモデルナのものなので、血栓症などの副反応が報告されていないものですね。

一:日本で使われているものはそのほかでは問題なく進んでいますか?

山:ファイザー製のワクチンは累計は不明ですが、3億回ぐらい打たれているかもしれません。そんな中で、アストラゼネカ製のような有害事象の報告がないことから、mRNAワクチンの安全性の実績は高まってきていると言っていいと思います。

一:あとは、高齢者や医療従事者への優先接種は進んでいますが、いつ自分が打てるのかという不安もありますね。

山:アメリカの事例だと、医療従事者への接種は12月中旬から下旬に実施され、一般高齢者への接種は1月の中旬から、その後ニューヨーク州で全年齢に対象が拡大されたのが4月。高齢者に接種が開始されてからだいたい3ヶ月弱ですね。人口比と接種する側のマンパワーにもよりますが、どうしても数ヶ月のタイムラグは発生すると思われます。

一:今、高齢者で「受けたくない」という方は大半を占めているのでしょうか?

山:正確には接種を始めないとわかりませんが、どの国でも一般に持病を持っている人であったり、高齢者のほうがより個人のリスクが大きくなるので、相対的に受けたいという方が増えてくる傾向にはあると思います。

一:私が受けられるのは夏、もしくは秋。秋もどうかなということろでしょうか。

山:夏以降ということにはなると思います。夏以降でどれだけ早くなるかについては、ワクチンがどれだけ確保できるのか、接種する人をどれだけ確保できるかによると思います。実際アメリカでは、スケジュールがだいぶ前倒しになっています。しっかりマンパワーを確保できて接種場所も広がってくれば前倒しも可能ではないかと思います。

一:前回が終わってから、女児を持つママ友から連絡があり、BCGについて跡が残ることを気にして、腕以外に打つことはできないのか?という質問を受けました。私も腕以外にできないのか?と医師にききましたが、「できない」というのが率直な返答でした。腕以外に打つことができないのはなぜなのでしょう?指向性のようなものはあるのでしょうか?

山:筋肉注射の場合、大きな筋肉があって、かつ大きな血管や神経が通っていないところを選びます。最も安全で安定した場所ということで腕を選んでいます。ただ、たとえば両腕やけどをしていて腕に打てないというような場合もあります。その場合に、他の部位に打つこともあります。

一:BCGについても安全面から腕が選ばれているのか?

山:一番の理由はそうだと思いますが、添付文書にも腕に注射をするようにと明記されているかもしれません。

一:あともう一つ質問なのですが、コロナに罹患した人は抗体はどれくらいの期間もつのでしょうか?

山:「コロナに罹患した人」と言っても個人差があります。いくつかの試験で、罹患から6ヶ月くらい経過を追ってもまだ抗体は維持されていることが判明しています。ただ、抗体は「あり」「なし」だけではなく、どれくらいあるか?も重要になります。そのような視点で見たときに、かかった人とワクチンを接種した人とでは、ワクチンを接種した人のほうが抗体が多いという調査結果が出てきています。過去に感染した人を半年ほど追って再感染の確率を調査した結果、過去の感染の「有効性」は8割程度ということがわかっています。しかし、南アフリカの変異ウイルスのように、過去の感染で獲得した免疫の効果をほとんどキャンセルしてしまうような変異ウイルスも懸念されています。このようなウイルスが広がってしまうと、過去に感染した人ももう一度感染することが懸念されます。しかし例えば、こんな研究があります。過去に感染した人の血液を調査したところ、南アフリカの変異ウイルスをうまく防げるだけの抗体がありませんでしたが、この人たちにmRNAワクチンを1回打ってみたところ、十分な抗体が得られたのです。こういったことを総合して、過去に感染した人もワクチンを打つことを推奨されています。

一:これだけ話を伺って、もう私は質問もないのですが、逆にこれだけ聞いても、ワクチンを打ちたくないという方がいらっしゃればぜひ意見を聞いてみたいですね。

山:そうですね、これを聞いていてなお今でも受けたくないという方は、ぜひ手をあげていただきたいですね。あげにくいかもしれませんが。

一:ニュースやテレビと違って、より近いところで対話をしてくれる医師がいるというのはなにがしかの強い安心材料になると思っていて、それでも「周りが打ってからにしよう」「もう少し様子をみたい」という方の心理はどういうものなのでしょう?

山:私のもとにいただいている意見としては、長期のリスクがありますね。ワクチンを打って、5年後に何が起こるかわからないのではないですか?という意見です。確かにそう言われれば現実問題としてわかりません。このため、答えがなく5年後のリスクがわからないのであれば5年後まで待ちたいですという思いがある方はいらっしゃるのだと思います。理論的には、ワクチン全体として、副反応の報告が多いのは最初の2ヶ月。なので、2〜3ヶ月見てみれば十分だろうと思われているのが一つ。また、ワクチンの成分であるmRNAやmRNAからできるタンパク質、こういったものがどのくらい体に残りますか?と聞かれれば、mRNAであれば1週間、mRNAからつくられたタンパク質は2週間ほどで消えてしまうことが知られています。そういった意味でも長期的な副反応というのは理論的にはあまり懸念されていませんが、それでもちゃんと観察して結果を待ちたいという方はいらっしゃるのでしょう。

一:mRNAという聞き慣れない言葉や遺伝子というキーワードによって、マイナンバーではないがマイクロチップがワクチンに入っていて国というかなにか大きなものに個人が管理されるのではないか?という懸念を持っている人もいるようですが、そのあたりはどうでしょうか?

山:ワクチンの技術を使ってそれを実現しようとすると、またすごい額の投資が必要になるのでしょうね。話としては非常に興味深いと思いますが、あまり現実的な話ではないですね。これだけワクチンを世界中に広げるというのは、今までなかったことですから、世界規模で皆にワクチンを広げるという、その規模の大きさからそういった懸念が出てきたものと推測します。ただ、規模の大きさを考える場合、他の感染症は局地的な流行はありましたが、今回のように世界中にインパクトを与える感染症ということはなく、そのインパクトの大きさの違いを前提に考えるべきだと思います。

稲葉(以下、稲):マイクロチップの話ですが、そういったものが微塵でも入っている可能性があるのであれば、私は打ちたくないです。でも私は受けましたよ。そんな風に世界中の医療者は思っているでしょう。また、理論上の長期的な安全性に懸念があれば、承認はされていないと思いますし、考えうる大きなリスクというのは排除された上で承認に至っています。日本だとほとんど医療関係者しかまだ打っていませんが、医療関係者はみな安心して接種を受けていると思っていただければ良いと思います。

一:そういえば、東京新聞に稲葉先生が寄稿されていたHPVワクチンの記事を読みました。アメリカなどでは前から打たれていたHPVワクチンが日本で定期接種になるまでに時間がかかったのは法律の問題ですか?

稲:そもそも、まだHPVワクチン自体が比較的新しいワクチンではあります。世界で接種が始まるタイミングと日本で導入されるタイミングにはあまりタイムラグはありませんでした。ただ、その後様々な報道があり、定期接種になるのには時間がかかりました。がんを予防できるということで、取り入れるべきという様々な働きかけがあってやっと実現しました。

一:まだ実現に至らない国はたくさんあるのですか?

稲:HPVワクチンについては、ほぼ全世界の国で接種されています。男の子たちにも無料で接種が行われている国もあります。

一:男の子に接種をするということは、男の子にもいい影響があるのですか?

稲:HPVの感染で起こるのは、子宮頸がんだけではなく、肛門がんなど他のがんもあります。その予防にもなりますし、女性を守る効果も考えられます。また、男性、女性関係なくもっているウイルスなので、多くの人が接種することでウイルスを集団から排除していく集団免疫の効果も考えられます。

一:自国でワクチンを作れないような途上国については、ワクチンは順番待ちをするしかないんですか?

稲:HPVに関しては、もうほぼ世界に行き渡っています。日本については、入荷はされているが使用されていなかったという状況です。子宮頸がんにかかってしまうと、高度な医療が必要になりますが、途上国だと治療が受けられるところは限られます。一方、予防接種は高度な医療が受けられないところでも、ワクチンさえあれば高度な医療設備などなくても接種ができるので、ワクチンを広げる取り組みはしっかりしようと熱心に取り組まれています。これは、新型コロナについても同様だと思います。

山:新型コロナに関しては、国によって差が出ているのが現状です。途上国には新型コロナのワクチンが十分届いていません。世界的に、重症化しやすい人からワクチン接種を進めていくことが求められます。これを実現するために、WHOが主導して先進国がお金を出しあって途上国が使うワクチンを届けるCOVAXという仕組みも存在します。

一:世界中を見渡すと、国ごとにいろんなワクチンがあって、日本でファイザー製のワクチンが導入されているということは、アメリカとの強い関係があるのかとか、他の国にはもっといいワクチンがあるのではないか?などの疑問も出てきます。

山:まず、ワクチンをこれだけのスピードで開発できる国は限られています。アメリカ、イギリス、インド、中国、ロシアなどが独自のワクチンを開発しています。その多くは研究が終わり、論文も公表されています。そんな中でも早い段階でしっかりとした研究結果が出て、論文もリリースされたのが、アメリカのファイザーのものでした。そういったスピード感などもあってファイザーが入ってきたという背景もあります。今あげた国以外ではほとんどまだワクチンの試験が完了していませんので、もっといいワクチンが今後開発される可能性はありますが、今のところはありません。

稲:少し話が戻りますが、BCGの話なのですが、添付文書に「上腕に接種」と記載があリます。新型コロナワクチンだと筋肉内に注射とだけ記載があるので、添付文書上も腕ではない場所への接種も可能です。BCGで添付文書に上腕と記載があるのは、おそらく治験で上腕での効果しか確認されていなくて、他の部位でも効果はあるんだろうけれど、分からないので上腕が望ましいとされているのだと思います。

一:BCGのあとを残したくないお母さんなんかは、腕じゃないところに接種したよという話を聞いたことがあったので、うちの子も接種する場所を選べるのかと思って医師に聞いてみましたが、ダメでしたね。

稲:そんなにひどいあとというのは残りにくいとは思うんですけどね。

一:子供が将来気にするかもしれないという親心でしょうね。

参加者:ワクチンを怖がっている方が、5年後、10年後にどうなるかわからないという話で、たくさんの医療者の方が理論的には起こる可能性が低いという話がりましたが、ワクチンを打たずに新型コロナにかかった場合の5年後、10年後にこんなことが起こるなどの情報もないと思います。これについては今言えることはありますか?

山:非常に大切な指摘ですね。このウイルスとの戦いは5年もたっていないのでそれについてもわからないのが現状です。ただ、たくさんの方の後遺症の報告があり、想像以上に後遺症に苦しむ人がいることはわかっています。まだ半年や1年のデータしかありませんが、今後遺症に苦しんでいる人が今後2年続くのか、3年続くのかなども時間が経ってからでないとわかりませんし、ワクチンに後遺症を減らす効果も期待しています。まだデータはありませんが、これからそういったワクチンの効果も見えてくると思います。

参加者:現状では、ワクチンを打たないほうがよっぽどひどくなるという予測をされていますか?

山:打たないほうが今後の社会は厳しくなるということは想像できているので、だからこそワクチンをできるだけ多くの人に広めたいと思っています。このウイルスは今後も消えていかないと考えられているので、免疫がなければ人生のどこかで新型コロナウイルスにかかることを想定しなくてはいけません。感染したときに命を落とす可能性、後遺症が残る可能性を思うと、個人としても社会としてもワクチンを接種することの意義が高いのは確実です。

参加者:ワクチンが不活化や弱毒ワクチンではなく、mRNAワクチンということですが、今までもそういうワクチンの開発はあったのですか?

山:これだけ大きな新しい感染症というのがなかったので、これだけ大規模に試験が行われるという経験はありませんが、今までにもmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンは他の感染症の研究での使用経験はありました。

参加者:Youtubeなどを見ていると不安を煽る情報も多い一方、実際にファイザーのワクチンを打っての致命的な副反応の報告は無いとのことですが、長期間のことを考えればやはりまだ不確かではないかと思いますが?

山:おっしゃる通り、mRNAワクチンは初めての実用化で、アストラゼネカ社などのウイルスベクターワクチンについては、すでにエボラなどで実用化がありました。5年後どうなるかについては、5年後に分かるということになりますが、先程の議論のように、理論上は大きな副反応は起こる可能性が低いと考えられています。また、その「分からない」リスク以上にメリットが大きいと考えられているのです。未知のリスクというのはどんなことにも付きものです。例えば地球で生きているだけで、地球上に隕石が落ちてくる未知のリスクだってあるかもしれません。

参加者:先程のチップの話ではないが、ワクチンを売るために病気が発生したというような陰謀的な話を聞くと、どうしたらいいものかと困惑もしています。世界の感染者数とは違って、日本の感染者数の桁が違うので、日本の医療で対応できると思っていましたが、先生の話を伺うとワクチンの有効性を信じたほうがいいということですよね。

山:日本の医療は優れていますが、それでもこれまで劇的な効果を示すような治療を見つけられていません。治療薬はいくつか候補もありますが、やはり予防が一番です。後遺症についても、発症したあとでは防げません。予防は負担に思うところもあると思いますが、実は予防が最も理にかなっていて最も大切なことなので、コロナに関わらず、今後予防医療がもっと広がっていけばいいと思っています。

一:7年ほど前にレーシック手術を受けましたが、当時はレーシックに対する情報もあやふやで、未知のリスクへの不安もありました。でも、やらないデメリットを考えると、未知のリスク以上に受けるメリットの方が大きいだろうということで受けました。新型コロナワクチンについても、同じような考え方で判断をすればいいのだと思います。

山:そうですね、ありがとうございます。それでは、今日はこの辺でおしまいにしましょう。本日はありがとうございました。

稲・一:ありがとうございました!

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