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"Road to Paris 2024" part1-視覚障害者柔道の世界ランキング-

昨年11月にIBSA JUDOから「Road to Paris 2024」という資料が公開されました。

この資料ではパリ2024パラリンピック出場権獲得のためのランキング方式や試合予定などが記載されており、この資料をもってパリまでの道筋がほぼ明らかになったと言えます。

公開からやや時間が空いてしまいましたが、今回と次回でこの資料と関連するいくつかの資料について解説し、パリ2024の出場までの道筋をお伝えしようと思います。
今回はpart1ということで、当該資料の前半部分、ランキングについてです。

この記事には私の翻訳・解釈が含まれるため必ずしも正確である保証がないこと、現在公開されている情報も今後変更される可能性があることなどは予めご了承ください。

ワールドランキングリスト

視覚障害者柔道の世界ランキング「IBSA JUDO World Ranking List」は過去の大会成績をもとに各階級ごとに作成されるランキングで、各選手の実力を示す指標となるとともに、各大会のシード権の付与に用いられます。

ランキングのルール

世界ランキングは大会に出場・入賞することによって得られるランキングポイントの合計で決まります。

大会に出場し1〜7位に入賞すれば入賞ポイント、入賞できなければ参加ポイントが与えられます。

大会で得たポイントはその後2年間有効ですが、大陸選手権については仮に2年間で2大会以上開催された場合でも2大会分までしか加算されません。

仮に1度も勝つことなく1〜7位に入賞した場合は、本来の入賞ポイントの半分のポイントが与えられます。
出場者が階級に1人だった場合も同様です。

ポイントが並んだ場合は次の順で獲得ポイントの最大値を比較し順位をつけます。
1.パラリンピック
2.世界選手権
3.グランプリ
4.大陸選手権

ランキングは大会ごとに更新されウェブサイト上で公表されます。また、各大会は最新のランキングに従ってシードを設定します。

↑ IBSA柔道webのランキングページ
「Download」から全てのランキングをご覧になれます。

大会の種別とランキングポイント

視覚障害者柔道の大会には主催団体や規模によっていくつかの種別に分けられています。

IBSA JUDO
World Championships「世界選手権」
Grand Prix「グランプリ」
Continental Championships「大陸選手権」
Open Tournament「オープントーナメント」
Small Country Challenge「スモールカントリーチャレンジ」

世界選手権は4年に一度、グランプリは年に数回開催されています。
大陸選手権は基本的には4年に一度の開催で、ヨーロッパ選手権、パンアメリカ選手権、アジア選手権、アジア・オセアニア選手権が過去に開催されています。
オープントーナメント、スモールカントリーチャレンジは低頻度・不定期に各地で開催されます。

IBSA
World Games「ワールドゲームズ」

4年に一度の開催で、柔道だけでなくサッカーやゴールボールなどのパラリンピック種目、ショーダウンやボウリングなどのパラリンピックには採用されていない種目も行われる、視覚障害者スポーツの総合競技大会です。

IPC(国際パラリンピック委員会)
Paralympic Games「パラリンピック」

4年に一度オリンピックと同じ場所でオリンピック終了後に開催される、パラスポーツの最大の総合競技大会です。

この他にも各大陸のパラリンピック委員会やスポーツ機構などが開催する大会(アジアパラゲームズ、ヨーロッパユースパラリンピック、パラパンアメリカン)や、各国が独自に開催する非公認大会などがあります。

これらの大会種別のうち、太字で示したIBSA JUDOが開催する大会、IBSA World Games、Paralympic Gamesが、現在、ランキングポイントを獲得できる大会として承認されています。

ランキングポイント

ランキングポイントは大会の規模によってポイントの大きさが変化します。

ポイント表

表に示したように、例えばオープントーナメントでは優勝が70点、2位が50点、3位は40点、4位は30点、5位は20点、7位は10点、それ以外の参加者に1点が与えられます。
これを基準に、大陸選手権は2倍、グランプリは3倍、世界選手権とワールドゲームズは4倍、パラリンピックは5倍のポイントが与えられます。


以上がワールドランキングリストについての解説です。

パラリンピックもポイント化されることなどから、このシステムはパリ以降も維持するものと思われます。


パラリンピックランキングリスト

先に示したワールドランキングリストとは別に、パリ2024パラリンピックへの出場枠付与のためのランキングとして「Paralympic Ranking List」が作成されます。

パラリンピックランキングリストはパリ2024パラリンピックの予選期間となる2022年9月1日〜2024年6月24日のランキングポイントが集計されます。

ワールドランキングリストとは別にランキングを作成する意図としては、全ての選手が公平にパラリンピックへの出場権を争えるようにすることや、直近の試合をより重要視することでパラリンピック時点での実力をより反映しやすくすること、パラリンピックに向けてランキングレースを加熱させ各大会を盛り上げていくことなどが考えられます。

ここからはパラリンピックランキングリストのルールについて解説していきます。

ダブルポイント

ワールドランキングリストとの最も大きな違いは、定められた期間のポイントが2倍になることです。

2023年6月24日〜2024年6月24日のポイントは全て倍になります。
つまり、この期間に開催されるグランプリは優勝すれば従来の210点の倍、420点がランキングポイントとして加算されます。
また、2023年8月にはワールドゲームズが予定されているため、ここで優勝すれば560点を得ることができます。

グランプリとアフリカ不利の是正

グランプリで得たポイントについて各選手は、良い方から5大会のポイントのみを加算できます。
ただし、アフリカ大陸の選手は6大会まで加算できます。
また、アフリカ大陸の選手は2023年3月にエジプトで開催予定のグランプリのポイントを2倍にして加算されます。

これは、ヨーロッパ選手権、アジア選手権、パンアメリカン選手権と他地域では大陸選手権が開催されるのに対し、アフリカ選手権が開催されないことから、アフリカ大陸の選手の不利を是正するねらいがあります。

パラリンピック出場枠

パラリンピックランキングリストの上位者に対してパラリンピックへの出場枠が割り振られますが、これを得られるのは各国で最もパラリンピックランキングリストで上位にいる選手のみです。


以上がパラリンピックランキングリストについての解説です。


今回解説した資料はこちらです。
Road to Parisの資料は昨年11月に公開された後、今年1月に一部内容が更新されています。こちらは更新後のバージョンです。

続きは次回

今回は視覚障害者柔道の世界ランキングのルールについて解説しました。パリ2024出場のためにはランキングを上げることが非常に重要です。ランキングシステムについて詳しく知ることはその第一歩とも言えます。
また、応援してくださる方々にもランキングについてぜひ知っていただき、視覚障害者柔道をより楽しんでいただければと思います。

次回「"Road to Paris 2024" part2」では今回紹介しきれなかったパリまでの大会予定を中心にお伝えしています。

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