「スター不在でも勝つために考えた」 〜出版までの道のり〜 中山祐次郎
(前回までのあらすじ)
森で木の実を拾って好きに暮らしていたぼく。ある日来た出版のお誘いに乗ったぼくは、気づくと出版までの工程をすべてスケルトナイズすることに決めていた。編集者さんとか出版社とかをdisっても大丈夫なんだろうか?
***
さっそくぼくは、幸薄そうな編集者さんにメールを送った。これだ。ちっちゃいので下に文字起こしした。
「坂口様
昨日はありがとうございました。
執筆を決めたらアイデアが溢れ出ております。
一つご相談なのですが、本を作るにあたり「出版までの道のりブログ」を書くことはご許可いただけますでしょうか?プロモーションの一環としてです。
本作りの工程をオープンにし、それをコンテンツにすることでファンが増えるでしょう。
本作りっていつもブラックボックスですからねえ。場合によっては、意見やアイデアをもらうことで本作りに参加してもらうこともあります。
これで1000部は売り上げが伸びると勝手に目算しております。」
なんという勝手な目算。しかし、それくらいはあるんじゃないかと本当に思っている。この返事がこれだ。
「会社の陰口になるとまずいですが」
ニヤリ。ぼくが書く会社はソフトバンククリエイティブという会社だけど、ソフトバンクは野球とか携帯とかで儲かってるからいいだろ(勝手)。
しかも助かることに、ぼくにはソフトバンクの友達もいない。書きやすい。
そうしてぼくは、出版の依頼から執筆までをすべてこの連載に公開してしまうことにした。
なぜこんなことをぼくが思いついたか?ここに二人の人間が登場する。箕輪さんと、ホリエモンだ。
1、幻冬舎スーパー編集者の箕輪さんが、Newspicksアカデミアでコミュニティを作ってからビジネス書を出す方法で勝ちまくっていること
2、昔ホリエモンの「ゼロ」という本を作るとき、ミリオンセラープロジェクトという名前で連載していたこと
1、について、箕輪さんはもともとホリエモンとサイバーエージェントの藤田社長が作った755というアプリで知り合い、幻冬舎社長の見城さんもご一緒に何度か飲んだことがある。飲むと毎回ほとんど何を言ってるかわからなくなるので、落ち着くのだ。
箕輪さんはtwitterでもいろいろ出版界についてツイートしていて、ぼくは影響を受けていた。箕輪さんは「このままじゃ本が売れないのは当たり前でしょ」と言っていた。
知らない人のために、いま出版業界はシャレにならないくらい不況で、年々本が売れなくなっていっている。30年後には本が一冊も売れなくなるんじゃないかってくらいだ。
本の売り方ってこんな感じ。
ある日突然出版→本屋のいいところに置いてもらうように営業する(大手出版社のみ可)→新聞に何百万円も払って広告を打つ(中小は何十万円)
いやいや。それじゃ売れないでしょ。新聞読む中高年世代だけが広告を見るから、必然的にその世代が買いそうな健康本ばかり。ぼくの本はまだ健康本的だけど、それでもちょろ花火で終わる。
だから、ホリエモンの真似をしようと思った。
2、昔ホリエモンの「ゼロ」という本を作るとき、ミリオンセラープロジェクトという名前で連載していたこと
このプロジェクトは本当にすごくて、出版界の若いスーパースターたちが集まっていた。例えばこのnoteとcakesを作った加藤さん、「さおだけ屋はなぜつぶれないのか」の柿内さん、ライターは『20歳の自分に受けさせたい文章講義』の古賀史健さん、コルクの佐渡島さん。
もう、清原と王貞治と長島とクロマティが四人で麻雀してるようなもんだよ(ちなみにぼくは野球見ないし麻雀もできない)。
なにそれ。ズルいよ、それなら売れるに決まってる。
でもソフトバンクはきっとぼくにそんなお金は使わない。ぼくは無名の著者だからだ。
いいよ。じゃあひとりでやってやる。それなら資金はぼくの時間だけだ。ひとり麻雀だ。そんなわけで、まずはこのミリオンセラープロジェクトの記事を新婚旅行中のハワイですべて読み込んだのだ(ちなみにこれ執筆時にはもう帰ってきました)。
この連載の中で、ぼくはさおだけ屋の柿内さんのある発言が引っかかった。
と。
(なぜ堀江貴文は誤解されるのか?——第2回公開会議まとめより引用)
だよね。
だよね。目的だよ。
さすがさおだけ屋さん。さすが柿内さん。地味に高校の先輩。
ぼくの心は、ゴゴゴゴゴと地響きのように鳴り始めた。
ぼくの本の目的は、なんだろう?納税?生活費?それとも・・・
(第5回へつづく)
※この連載は、2018年8月に出版した「医者の本音」(SBクリエイティブ) の、執筆依頼を頂いたときから出版までのいきさつをリアルタイムに記録したものです。アマゾンリンクは↓こちら。kindle版もあります。
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