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縦の関係と横の関係

中根千枝という人が50年前に、人間社会における「縦の関係」と「横の関係」ということを言いました。(「タテ社会の人間関係」1967年刊、講談社現代新書)特に日本においては、圧倒的に「縦の関係」が強固だと。これは企業、官僚、学校の教師と生徒の関係などに見られる「上意下達」がその典型ですね。

この本に出てくる面白い事例は、例えば中年の男性が自己紹介で「私は読売テレビに勤めています」と言った場合、多くの人は反射的に<プロデューサーか、カメラマンか、あるいはアナウンサーかな?>と想像するだろうと。しかし実際には彼はテレビ局専属の運転手だったという話。

この場合、彼は「私はドライバーです」と自分の職種を言っても良いわけですが、日本ではほとんどの人が所属する組織名をまず言うと。これは50年経った今日でもある程度当たっているかな?と思います。「縦」を優先するわけですね。

本に出てくるもう1つの事例は、インドにおける家族と近隣の事例。例えばインドのある家で嫁と姑が喧嘩をしていた場合、突然隣に住んでいる別の家族の、嫁の立場の人が飛んできて、その家の嫁の味方をし始める、と。(笑)これはなかなか日本の家庭では考えにくいケースですが、当時インドの家庭では普通に見られた光景だそうです。

で、中根さんは前者を「縦の人間関係」、後者を「横の人間関係」と呼んでいて、日本では横の関係は育ちにくい、と指摘しています。インドは逆に縦関係が少なく、横の関係が広がっていると。

昨今の日本は、SNSなども発達し、企業も終身雇用ではない雇用形態も多く見られ、嫁姑の関係も多様化しているので、50年前とは随分様変わりしているとは思いますが、私自身、会社を退職すると、縦の関係がバッサリ失われて、学生時代につながった横の関係が細々と生き残っているという状況です。ここから新たに横の関係を築くのはなかなか大変だな、結構これ問題やな、と考えている今日この頃です。

…実はこの「縦の関係」「横の関係」というのはアドラー心理学でも出てくる重要な概念なのですが、それについての考察はまた今度に。


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