一歩一歩

先日、渋谷のとある居酒屋の前をカズマと通り過ぎた。
少し古い居抜きの内外装、メニューも一昔前で低価格帯、働くスタッフも個店スタイルの30歳前後の雰囲気。まるで10年前に明大前で働いていた自分たちがそのまま年月だけ経過したかのようなそのお店を見て「なんだか懐かしいね」と2人で色んな感情が湧いてきた。


楽しさだけでいくと当時ほど楽しかった日々はない。家も借りず店に住んで、好きなメンツ、好きなお客様、アホみたいに働いて、営業前は腕立てや腕相撲大会、喧嘩もしたけどお店が終わったら皆んなで鍋をつついたり、死ぬほどお酒を飲んだり、たまに贅沢する時は安安で焼肉をたらふく食べる。こんな日々が続けば良いなと思いつつも、自分達の未熟さや将来への不安と緊張も同じくらいのしかかっていたのを思い出す。

23歳で独立して約10年。人並みの外食経営者の悔しさは経験してきた。年齢や経験で馬鹿にされ、業態力で同業から下に見られ、銀行では何度も融資を断られ、スタッフからはこんな会社に未来はないと文句を言われて辞められた。
2店舗目で何をやってもお客様が来ず、資金が底を尽きる恐怖と毎日の現場で体力も限界という日々。遊園、蒲田、初めてのスケルトンのふじ屋浜松町、どれも失敗したら倒産という中での勝負の出店。新しい業態に挑戦しては失敗し累計○億円の損害を出した。

いつも心は折れそうだったけど、どれもこれも経営者および飲食人としてのただの実力不足が原因ということ、そんな自分達が生き残る事ができたのは色んな人に助けられてたまたま運が良かったことも今は重々承知している。



そんな中でマウンテンブルとして大切にしていることがある。それはどんな事があろうともどんなに少しずつだろうとも前に進み改善し続けること、どんなに時間がかかろうともくさらず諦めず最後までやりきること。ありきたりだけど、凡人の自分達が唯一どこにも負けない自信と誇りを持っている。


一般的に会社として優先事項にすべきは中長期でしっかりと存続し社会に還元し続けることが第一だと言われている。

ただしマウンテンブルとしては、マウンテンブルが日本の食文化の誇りだと思っている尊敬の念から生まれる繋がりの価値、これを後世に残すための還元の仕組みつくり。そして品質はもちろん、お客様への高付加価値を提供し続けるための仕組みつくりが自分達がやるべきことであり使命だと思っている。
そしてその一つの数字的区切りとして時価総額1000億円を目指していく。


仕事の帰り道「できるかどうか成功するかどうかわからないけれど、ほんの少ししか可能性は無いかもしれないけれど、目の前にあるこのチャンスを後悔しないように今はやりきろうね」と少し疲れた表情で僕が言うと、
「うすっ」といつも一言だけ返事する気力と体力オバケのカズマが眩しく頼もしい。そしていつか一発気合いと喝を拳で入れられそうで少し怖い。

「世界を舞台に、日本の食文化の未来をつくる。」
一歩一歩頑張ります。

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