上位大学の偏差値が上がった≒大学のレベルは上がったのか?

上位大学の偏差値が上がりました。

東洋経済のWeb版で上位大学に割り込むMARCHの学部別の記事が上がっています。
主張は学部別にみていかないと大学生の質は分からないと言いたい。
人事の立場で見ると大学に入る段階での学力で新卒学生のランクを分けたい→選考基準作りが楽というのもすごく理解できます。

これ自体は十分人事界隈では議論されていると思いますし、後日新卒採用に現役の皆さんに東京人事密談にご来場いただいて方向性をまとめようと思いますが本日はその大前提のデータの見方について、遥か昔にワークス研究所で携わった領域でもありますので人事の皆さんが資料を作るときの資料として多少なりとも貢献できるように村山の視点を追加しておきます。

大学進学率データは見ましたか?

東洋経済では私学の偏差値の最高峰が偏差値80で出ています。
→偏差値80の出現率って正規分布の場合は大体740人に1人です。
自分が早稲田の政治経済学部出身の立場から言うと、高すぎない?と普通に思います。

僕は鈍才が頑張って勉強した秀才タイプではありましたが、決して天才ではなく中学高校と天才に囲まれていたため彼らのレベルは分かっているつもりです。自分の画力を普通に考えると偏差値70近辺だろうと。
→偏差値70の出現率は正規分布の場合大体44人に1人。
公立中学のクラスなら1位取れたり取れなかったり。まぁ許容です。

本題です。

東洋経済のデータでは大学の偏差値が上昇したことだけをピックアップしていますが、大事なのは母集団です。
データが比較されている当時に比べると現在は大学は全入時代。
学校基本調査を見てみましょう。
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/12/25/1407449_1.pdf

細かいことは省きますが大学の進学率が上昇しているのはお分かりだと思います。つまり、以前であれば大学に行かなかった層が大学受験をして入学しています。地方大学の凋落ぶりをみればわかる通り、希望者であれば全員が入学できる全入時代です。

念のため日本の出生数の推移を見てみましょう

内閣府のデータhttps://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/shusshou.html

・母集団の量的変化
→大学生のなる同世代の人数が減ったことにより上位大学の質は下がる。
ex)母集団200万人の時の東大の学力と、母集団100万人の時の東大の学力は母集団200万人のときのほうが恐らく高い。※時代考証を除く
1973年は200万の出生数があり、18年後の1991年の大学進学率は約20%、これが最近の大学進学率がある2018年にあてはめ、概算で2000年の出生数をみると115万人。大学進学率は49.7%となっています。

・母集団の量的変化2
→女子学生の割合が増えた
さらに考察を加えましょう。先ほどの学校基本調査を見ると余計にわかりますが、女性の進学率が上がっています。1991年には30%程度だったものが現在は45.1%。15ポイント程度上昇しています。学部別でいうのであれば女性に人気の国際系学部が偏差値が上がったのはこの理由も十分に想像できます。

・結果としての母集団の質的変化
→大学受験者の母集団に以前は大学を志望しなかった低偏差値の学生層が多く参加し、正規分布に近づいていった結果偏差値の上下の分散が膨らんだ。

大学はかつては学歴エリートだけが行く場であったが、いまでは義務教育の延長と化したため分散が高校受験並みに広がったということですね。さらにいうと高校受験よりも大学受験は「大学受験用の勉強をしたかどうか」で偏差値の分散が広がります。高校時代全く勉強していなくても大学に進学している学生いますよね。

この3点を流れでチェックしないと単純に偏差値が10上がったぜ、イェイ!みたいな話ではないと思います。

念のため高校の偏差値の推移のデータも拾ってみました。

順位の入れ替えがあるにしても偏差値73が上限です。早稲田の政治経済と開成高校だったら開成高校のほうが時系列を無視すれば難しいよね、とは思いますよね。

というマクロデータの気になるところはチェックしたので
さらに工夫する個別事情は東京人事密談で識者に確認しようと思います。

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