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「誰かのSMOTが誰かのZMOTになる。」マーケティングとフロー理論を合わせるとどうなるかを考える。

アウトドアアクティビティでは、特にサイコグラフィックでセグメントした観光層やリフレッシュ層をターゲットとした場合、対象のアクティビティを人生で初めて体験する/体験した、ということも多いため、消費財と異なり、個々人の過去の経験(使用感など)が、ツアーを決める(選ぶ)判断材料にはなかなかなりにくい。そのため、まず個々人の人生における好き嫌いや興味関心経験などのベースとなる感情群があったうえで、認知フェーズが重なり、予約の土壌が形成された上で、実際の予約トリガーとなる何かが発生する(ZMOT)と予約に至るものと思っている。この実際の予約トリガーをどれくらい増やせるかが重要なポイントになると思う。

フロー状態はKSF(Key Success Factor)である

顧客をフロー状態にいれることは、マーケティング用語でいれば、KSF(Key Success Factor)の一つであり、SMOT(Second Moment-Of-Truth)に直接的に影響を与える、非常に重要な要素だと思う。

顧客をフロー状態にいれることができれば、フローの強度によって程度の差こそあれ、そのフロー状態から脱した直後から数時間、場合によっては数日によって、「楽しかった」「満足感に包まれる」「幸福感に包まれる」「心地よい充実感に包まれる」という状況が発生し、その状態が、顧客によるUGC(User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ))の発生につながる。UGCは、ウェブ上の口コミ、直接の口コミ、SNS投稿、ブログ投稿など広告によらず、信憑性が高く、信頼性が高い情報として、各種拡散されることになる。このUGCが、別の誰かのZMOT(Zero Moment-Of-Truth)になる。これは、別にtoCマーケティングに限ったことではなく、インバウンド富裕層向けのtoBtoCマーケティングであっても、Reputationが伝播するという構造は変わらないので、引き続きフロー理論は重要であり続ける。

例えば、カヤックに参加した男性の場合。
【ベースのポジティブ感情群】幼少期から釣りや川遊びに連れて行ってもらっていたため、川遊びに抵抗がなく、川の爽やかな雰囲気にポジティブな深層心理を持っている。全身が川の水で濡れることも特に抵抗がないし、ヌルヌルした川や虫などの不快要因についてもそれほど抵抗がない。

【初期の認知フェーズ/意識への介入】
そのうえで、テレビやSNSや雑誌など様々な情報が伝わるいわゆるメディアで、同じくらいの所得層・同じくらいの年齢層の同性あるいは別性が、カヤックを楽しんでいることを知る(初期の認知フェーズ)
その段階では、特に意識していなかったが、春や夏や秋などに、何気ない外出時にたまたま橋を通りかかったとき、カヤックを楽しんでいる人をみて、「カヤック」という道具が意識の中にウェイトを占めるようになる。(ジラールの模倣の欲望)

【ZMOT段階】
直接カヤックに行こうと思ったのは、SNSの投稿で友人がカヤックのツアーに参加して、すごく楽しかったという熱量ある投稿をしていたことを目にした時。初めて能動的に、場所や会社を調べる、という行動に移った。

【FMOT段階】
季節や一緒にいく仲間とのスケジュール調整などのタイミングが揃い次第、ZMOT段階での情報、例えば友人が社名まで出していれば、その社名で検索することもあるだろうし、特定のエリアでは、競合がいない場合もある。UGCの鮮度、内容によって、最終的に予約が確定する。

これが、「SMOTからZMOT」と僕が(勝手に)提唱している顧客行動のモデルで、特にフロー状態を体験させ、「楽しかった」という感情を顧客のUGCに転化したうえで、誰か第三者のZMOTに影響を与えるという考え方である。

いずれにしてもフロー状態にいれることがマスト フロー状態がモデルの起点「トリガー」となる。

このモデルの場合、顧客をフロー状態にいれることはマストで、フロー状態に入れないとUGCは発生しない。そうすると、ZMOTにも繋がらないということになる。

フロー状態を研究することが重要なのは、このような機構のトリガーになる事象がフローであるからに他ならない。

UGCを発生させることとフロー状態を発生させることはセットで重要

この顧客行動モデルは、どちらか一方を欠いていてもうまく機能しない。フロー理論を勉強して、顧客をフローにいれる努力を怠っては、UGCは発生しない。またフロー状態に入れたとしても、口コミやUGCを発生させるための促進を行い、ストレスなく書けるように、写真の提供速度や、口コミのURL即時提供など、環境整備を怠ってもまたUGCの発生は運に頼るしかなくなる。

この両輪をうまく回すのが、まず、アウトドア事業者で死活的に重要なことだろうと思う。どっちも大事。

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