イギリス庭園めぐりの記録
5月の後半に1週間ほどイギリスの庭園巡りに行ってきました。
今回はそのとき訪れた庭園について、シェアします。
庭園に興味がある方、イギリス旅行を検討している方の参考になれと嬉しいです。
Chatsworth house(チャッツワースハウス)ダービーシャー州
イギリス中部のダービーシャー州にあるChatsworth house(チャッツワースハウス)を訪れました。
16世紀に建築された貴族の邸宅で、東京ドーム約9個分(105エーカー=約42ヘクタール)の庭園があります。
迫力のある貴族の館を背景に広がる雄大な芝生などは、イギリス風景式庭園の典型的な形です。穏やかな風景を見て、のんびりした気持ちになりました。
この庭園の設計者ランスロット・ケイパビリティ・ブラウンはイギリスの造園家として最も有名な一人です。いつも造園を依頼した地主たちに、その土地がもっと良くなる「ケイパビリティ(可能性)がある」と言ったことから、その名が知られています。
庭園の形式を「整形式庭園」と「自然風景式庭園」に大別すると、日本とイギリスの庭園形式には自然風景式という共通点があります。
西洋の庭園は、ほとんどが幾何学的な秩序による人工的な美しさを追求していましたが、18世紀頃からランスロット・ケイパビリティ・ブラウンらの活躍によってイギリスで登場した「イギリス風景式庭園」は、自然の風景を活かし模して、自然の美しさを表現しています。
特に、ランスロット・ケイパビリティ・ブラウンの庭園はまさに「自然風景のような庭園」です。
日本の庭園も基本的には「自然風景式庭園」ですが、この緩やかな起伏のある大地は日本の庭園とは少し違うと感じました。
電車に乗ってイギリスの自然の風景を見ていると、日本とは違ってとても地形が穏やかです。山があってもその頂上までなだらかな草原で覆われていいることが多かったです。
山が多く、急峻な崖や流れの激しい川の多い日本とは風土が違うと感じました。
だから、憧れる自然も異なっていたのだと想像しました。
Chatsworth houseには、イギリス風景式庭園だけでなく、迫力のあるロックガーデンやキッチンガーデンもあってしっかり見て周ったら1日楽しめそうな場所でした。
豪華な館にも別料金で入ることができるのですが、今回は庭園をメインで見にきたのでスキップしました。
アクセスが少し難しく、今回はシェフィールド駅からバスで約1時間かけていきました。
車を使えば、ロンドンから北へ約3時間で到着するそうです。
Chiswick House & Gardens(チジックハウス・ガーデンズ)ロンドン
チジックハウスは、最初期のイギリス風景式庭園といえます。
1720年代から1730年代にかけて第3代バーモン(Lord Burlington)がウィリアム・ケント(William Kent)と協力して設計しました。
ウィリアム・ケントは、それまで流行していた幾何学的な構成の整形式庭園を崩し、イギリス風景式庭園が生まれるきっかけをつくりました。
この庭園には、整形的な部分とゆるやかな川や穏やかな芝生などイギリス風景式庭園の特徴が混在しているため、その転換を感じることができます。
その変化が後にニューヨークのセントラルパークや現代の公園にまで影響を及ぼしているので、革新的な変化だったといえます。
また、イギリスの伝統的な庭園を巡ろうとすると、大体難しい場所にあるのですが、この庭園はロンドンからバスに乗って30分程で到着できたことが良かったです。
Rousham Park House & Garden(ロウシャムハウス&ガーデンズ)オックスフォード
チジックハウス・ガーデンズの庭を設計したウィリアム・ケントは1738年にRousham(ロウシャム)を訪れ、庭園の大規模な改修を行いました。
ロウシャムハウス&ガーデンズは、ウィリアム・ケントの庭のなかで最も当時の姿のまま保存されている庭園といわれています。
風景画家だった彼は、ギリシャやイタリアの神々の住む古代の田園の風景が描かれた絵画を念頭において庭園をつくりあげました。
この庭園内には、建造物や像が点在していて、美術館を巡っているようです。庭園の周囲は田園風景で、規制によって保護されているそうです。
そして、庭園内の建造物や像と、周囲の田園風景が調和しています。
ウィリアム・ケント以降のイギリス式庭園の歴史は、後に登場するランスロット・ケイパビリティ・ブラウンが装飾のない素朴なイギリスの田園風景の美しさを追求した一方、歴史や文化を連想させる建造物を含む絵画のような庭園を志向した「ピクチャレスク」の庭がつくられるようになっていきました。
自然風景のような庭園を追求したランスロット・ケイパビリティ・ブラウンを受け継ぐブラウン派に対して、ピクチャレスク派はサルヴァトール・ローザの風景画などから想起される崩れかけた廃墟など、自然の不規則性や荒々しさを志向し、次第に中国風やトルコ風など多彩な点景物を置くようになったそうです。
そうした歴史を踏まえると、ここは、その両方の原点となった場所です。
オックスフォード駅からバスで約40〜50分。
のんびりした雰囲気が漂う田舎にあります。個人邸の庭園ということもあり売店などはありません。
庭園内ではピクニックをする人、芝生でお昼寝をする人などがいて、ゆっくり過ごすのにぴったりな庭園でした。
Kew Gardens(キューガーデン・キュー植物園)ロンドン
世界最大の植物園、ロンドンのキュー・ガーデンズ(キュー植物園)に行ってきました。ここでは4万種以上の植物を栽培し、世界中から集めた700万以上の植物標本を収蔵しているそうです。
写真は、1910年にロンドンで行われた日英展示会を記念して造られた西本願寺の唐門のレプリカと日本庭園です。ツツジが満開でとても綺麗でした。
日本庭園の他にも、世界中の植物を集めた温室、インセクトホテル(昆虫が冬眠できる場所)、森林の中でウッドデッキの上を歩く「Woodland Walk」など、エリアごとに違った風景が楽しめました。蜂の巣の中にいるような体験ができるアート「The Hive」は特に心に残りました。
1日では周りきれなかったので、またいつか来たいと思った訪問でした。
チェルシーフラワーショー2024
毎年5月にロンドンで開催される世界最大規模のガーデンショー。100年以上に渡って開催されている伝統的な祭典です。
今年は、2024年5月21日火曜日 – 2024年5月26日日曜日に開催されていました。
雨を水資源として再利用する庭、脳卒中の回復をサポートする庭など、様々なスタイルの庭園を見ることができ、とても刺激的で楽しかったです。
一部を写真と共に紹介します。
日本人の庭園デザイナーの石原和幸さんの”MOROTO no IE”
日本人の庭園デザイナーの石原和幸さんは2023年までに合計12個のゴールドメダルを獲得しているそうです。
持続可能な水管理に焦点を当てた”WaterAid Garden”
中心にある構造物は雨水収集のためのもので、雨を収集してろ過して貯め、飲料水や灌漑に使用できるのだそうです。
自閉症者の日常的な世界体験をとらえることを目指した”The National Autistic Society Garden”
拷問からの解放庭園”The Freedom from Torture Garden: A Sanctuary for Survivors”
”Burma Skincare Initiative Spirit of Partnership Garden”
”Terrence Higgins Trust Bridge to 2030 Garden”
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