BRAIN 番外編 「乙式と魔法」 歌舞伎町〜胎動編〜 ②

???「この街か。影。」

男は高いビルの上から歓楽街歌舞伎町を見渡す。
???「刀が泣いている。哀しきかな……。」

男は涙を流した。

???「全てはこの日のために。恨むな。これも世直しのためだ。」


新宿 PM17:00

ニュースキャスター「日本で、数少ない魔法使用者が、激増してる事に」

光太郎「あ〜またマホウの話か〜。つまんね〜。」

新宿の大きいモニターに文句を言う光太郎は、日が暮れこれから動き始める歌舞伎町の人混みを歩いていた。

光太郎は魔法が大嫌いだった。

あいも変わらず、ネオンが眩しい。

光太郎「あ〜今日は何を食べようか。昨日のおっさん変なもの食っただろ。腹痛ぇ……」

光太郎は今晩の食料を探していた。

光太郎の日常が始まろうとしている。

その時……!

???「見つけたぞ。」

光太郎「んぁっ!?」

凄まじく黒く長い物が光太郎の背後を切り裂く。

スパァン!!!!!

危なかった。あと一瞬、気付くのが遅ければ光太郎は真っ二つになっていた。

いや、彼が真っ二つになるのかはさて置き。

???「ふん。流石。」

光太郎「あ〜面倒くさい。これだから歌舞伎町。誰ですかお前。」

???「名乗るほどの物ではない。」

光太郎「いやいや〜。そんな物騒なもの人に振り回しといてそれは流石にノットノットありえんないんんんん!」

光太郎に切りかかってきた者は、黒く長い刀を左手に構えていた。

いかつい風貌だ。

???「ふん。やはり気味が悪い。」

男は刀を構える。

光太郎「あのさ〜なんなのさ〜まじおっれっのっこと。どうしたいんだ?いきなりは。ちょっとずるいでしょ……?」

???「何を言う?」

光太郎「あれ……?もしかして、見た目に反して頭固い…?いや、脳味噌ツルツルなだけか。いや〜こまっちゃうナ〜!」

???「怠いぞ。」

男は刀を前に突き出す。

光太郎「だからさぁ……」

光太郎「名乗れよくうぞ?」

光太郎からとてつもない殺気が放たれる。

???「ふん。やっと刺し合う気になったか。」

男は刀を構え直す。

???「お手合わせ願おう。快楽殺人者。」

光太郎「いきなり現れてお前だるい」

光太郎「乙式術 黒狼刀」

光太郎の右手に真っ黒の刀が生成される。

光太郎「刀には刀だろ。栄養無くなるからこれで、勘弁な???」

 ???「…?ふざけるのも大概にしろ。」

刀の男は駆け出す。

???「染色 黒 憎悪。」

男の目から黒い涙が、構えていた鞘の窪みに垂れる。

その瞬間、刀の色が更に黒くなった。

???「お前が憎い!!ニクイニクイ!!憎いぞ!!!」

光太郎「おいおい…!二重人格かよ!!こっわ!!!!」

男が光太郎に斬りかかる。さっきまでの、冷静さが無い。

光太郎「うひゃ〜刀って憧れるけど、つかいかたわからん………なぁっ!!!」

 キィィイン!!

男の刀と光太郎の刀がぶつかり合う。

???「死ね!憎い!ぁあ!!!!!」

光太郎「おいおい、キレすぎだろ……!えげつねえ力してんじゃねえかよ……!」

光太郎は押し返されそうになっていた。

???「 んぁっ!倍色。憎悪ぁぁあ!!」

光太郎「んなっ!!!」

 ぶつかり合う刀。光太郎は押され気味だった。そして、刀の男がそう唱えた瞬間。

男の刀が大きな出刃包丁のようになった。


光太郎「僕がいうのもなんだが、気味悪いね………!ぐっ!」

???「ぁぁあ力強えええ!憎い憎い!!」

???「 ぐっあっ!!うざい!うざい!
ぁぁあ!!秘術!! 六波羅黒斬ぁあ!!」

 男の出刃包丁のような刃が、漆黒のヴェールを纏い勢いよく、光太郎を押し返した。

ドンッ!ダンッ!ズダダダダダダダ!!!


2百メートル程だろうか。歌舞伎町の道路を勢いよく光太郎は吹き飛んでいく。

光太郎「ぐぁぁあっ……ナンテ野郎だ!いってえなぁ……!」

光太郎は砂埃の舞う中、立ち上がり刀を構え直す。


???「こんな……こんな雑魚に………六波羅黒斬を……憎い……ぁぁあ!!!」

男は叫んでいる。

通りすがりの通行人「おいおい!黒ずくめの兄ちゃん大丈夫かよ!!喧嘩か!」

通行人が、大きな音を聞き光太郎に近寄る。

 光太郎「ちっ。ウルサ」

光太郎の背中から一つの黒い手が飛び出る。

通りすがりの通行人「うわ!なんだ!これ!やめろ!!!」

 黒い手は、通行人を掴みながら光太郎のお腹に勢いよく収まる。

バキッバキッゴリッゴックン!

 光太郎「ゲップ」

光太郎「2日連続おじさんは、腹の子にわりいだろ」

???「ぁぁ罪無き物をぁぁあ!!!染色!!!青!!!」

また男は涙を流した。青の涙。鞘のくぼみに収まる。

???「くっ………うっ……うっうっうっ……貴方をここで還らぬ人に……うっ……御慈悲を……!!!」

啜り泣く男。

刀の色が漆黒から綺麗な青に染まっていた。


光太郎「っくそ…気味悪すぎ……多重人格脳天サイコ野郎が……!」

光太郎は再び、攻撃態勢を取ろうとしたが。

刀の男が速すぎた。

速いなんてもんじゃない。

 目の前にはもう、その男が斬りかかろうとしてる。

スローモーションに感じた。

 ???「ここで、ご臨終です……グスッ……すみませぬね……世直しの為………ここで……そうですね……名乗らないのも……失礼な話か………」

男は刀を静かに横に構え

???「哀の侍 てつしと申します……それでは……」

光太郎「やっべ……」

てつし「 千道流 開色  勿忘草」

ヒュウウウウウウウウン!!!

凄まじい音と共に、光太郎は斬られた。

 そう。斬られたはずだった。

てつし「………!?何と………まだ……」

 てつしの斬り掛かった綺麗な青の刀を光太郎が両手で挟んでいた。

光太郎「侍さん……一ついいこと教えておいてあげるよ……」

光太郎の手が震えている。
てつしの刀さばきはとてつもない力なのであろう。

光太郎「影は斬れねえ…!!」


てつし「っ……!!!なんと………我の即殺剣を……白刃取りだと…!」

光太郎は両手で挟んだ刀を、てつしもろとも上に振り上げた。

てつし「哀しきかな……ここまで、哀れだとは……」

てつしが空中で態勢を変え、地面に軽やかに足を着く。

光太郎「刀とか分かんねえよ使い方……」

光太郎は気怠そうに首を鳴らした。

てつし「あのまま静かに逝けば良かったものを………」

てつし「ならば……」

てつし 「混色 喜怒哀楽」

てつしの瞳から4色の色の涙が鞘のくぼみに落ちる。黒。青。朱。黄。

 刀が黒くなった。


 光太郎「なんも変わってねえじゃん。最初のと。」

てつし「ふん。黒は黒でもこれは真実の黒だ。一つの色でも様々な色を含む。知ってるか。影よ。」

てつし「一番鮮やかなのは、全て混ざりあった黒だと言うことを。」

てつしが刀を構える。

光太郎「なるほどね…一番知ってるよ。それは。俺が一番。」

てつし「言うではないか。貴様と戦えること。少しばかり感謝をせねば。」

ドックン……


光太郎の中で何かが動き出す。

光太郎「タイミング〜悪っ。」

光太郎「悪い。侍。始まったわ。」

てつし「?」

 光太郎「さっさと終わらせようじゃん。」

光太郎が構える。

 てつし「悪いが、正気か?貴様、この私が本気を出しているというのに、丸腰とは…?また妙な術を使おうなど無駄だぞ。」

光太郎「ぁあ、まぁそうだね。でもね。

拳2つで充分さ。」

てつし「後悔しても知らんぞ。影よ。悪いが本気でいかせてもらう。」

光太郎「いいぜこいよ。いくらでもこいよ。でもな、乙式舐めんなよ〜?そっちがその気ならな……」

光太郎「抵抗するぜ……拳でな!!!!!!」


続く。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?