BRAIN 脳学デスゲーム最終回 「悪」

はいてー「あれが伝説の……フェニックス……!」

アンシーの体は燃え盛る炎で包まれている。

アンシー「さぁ、終わりにするぞ。こうなった俺はもう止められん。後悔するなよ……。旧友…!!」

 アンシーは飛び出した。

 アンシー「焔!炎の剛拳!」

 マンマめがけて、燃え盛る拳で殴る。

炎がジリジリと音を鳴らしている。

 マンマ「ぁあ!?そんなんきかねえんだよ!」

 殴られたマンマは体勢を戻した。

マンマ「絶望の淵!深淵の邪!奈落として門を開けし悪しき魂に慈悲を……デトランス!!!」

 マンマの左右の腕が鋭いランスになる。

 マンマ「八つ裂きにしてやんよ…!」

 マンマ「釘刺し!!!」

 超高速の腕の速さで、アンシーの体を突きまくる。

 だがしかし、アンシーの体を貫通するランスに手応えを感じないマンマ。

 マンマ「まぁ、そうだとは思ってた。体も炎ってわけか!」

 マンマがバックステップでアンシーから離れる。

 アンシー「こんな事しても無駄なんだ。お前は……そんなやつじゃない。
だからこそ。

 罪を。俺が罪を償わせてやる。全て!

全て焼き払う!!」

 アンシー「今からお前の体を、全て燃やしきる。
覚悟しろ…。」

 アンシーが叫ぶ。

 アンシー「焔!炎絶!!幾千の烈火!!」

 アンシーの体の炎がますます強く燃え盛る。

 アンシー「うぉおおおおおおおお!!」

とてつもない炎をまとったアンシーが瞬時に、マンマの眼の前に移動する。

アンシー「燃えろ!!」

 素早い炎拳が秒数何千発も、マンマに撃ち込まれていく。

マンマ「ァァァァァァァァァ!!!」

 アンシー「痛いだろ!でもな、お前がしてることはこういうことなんだ!!」

アンシーは涙を流す。

だが、拳は止まらなかった。

 ビュウ!!ザス!ドンドン!!

風を切る音、何かが折れる音、燃え盛る音、色々な音が響きわたる。

 シン「先生……。」

 映画館にいる一同は、言葉がでなかった。

 眼の前で繰り広げられる、この状況に様々な想いを抱いていた。

 アンシー「終わりだマンマ。いや、だび。」

 アンシーの炎で包まれた右腕が極限まで大きくなる。

 最後の拳を繰り出そうとした、その時。


キュイーーーーン

 アンシーの脳に、何かが映る。

 はいてー「どうしたんじゃ、拳が止まったぞ……?」

 アンシーは固まっていた。マンマは見るも無惨な姿で倒れ込んでいる。

あと一発。そこで止まっている。

 りほ「まずい。まずい。まずいぞ!」

 ヤムヤム「くっ。まずいなんてもんじゃねえ!」

 


 アンシー「こ、これは……。」

アンシーは何かをつぶやき始める。

 アンシー「なんだ、これ、お前、嘘だろ…どういうことなんだよ。なんだよこれ。

なんで、シンが。お前、何をしようとしているんだ。」

 はいてー「おい、今なんか言ってたぞ、シンって言ってなかったか!?」
 
一同シンの方を向く。

 シン「え、いや、僕は、え?」

アンシー「まずい。まずいぞ。このまんまだと、全てが。羅生門なんて、いや、違う。
 
世界はまだ何か秘密を隠している………?」

 その瞬間 


 マンマ「タ、スケ、テ…」

 とてつもない紫色の轟音が鳴り響く。

アンシー「ぐっ!!!くそ!!」

 マンマの体に紫色の煙のような物が流れ込んでいく。

 マンマ「ァァァァァァァァ!!!!!!」


 アンシーはとてつもない紫の衝撃に吹き飛ばされる。

 りほちゃん「きてしまったか。」

 ヤムヤム「これじゃあ俺らまで吹き飛ぶぜ。」

 はいてー「どういうことじゃ……!?」

 アンシー「ぐっ……!」

アンシーが体勢を立て直す。

 紫色の煙が紫色の炎になる。

 ???「ハァ〜やれやれ。我が子よ。俺がいなきゃ何もできないんか〜?しかも真理見られてるじゃん。」

 マンマが立ち上がり話している。

だが、それはマンマとは違う人格のように見えた。

 ???「まぁいいよ。全て潰すだけだ。
乙力と本体で分かれたって馬鹿みたいなことしてんじゃないよ〜。乙力も魔力も全てお前の物なのに。こんな雑魚にまけんなよ。」

 アンシー「おい……!誰だお前は!!」

 ???「お〜っと。これは失礼。マンマ、いや、だびの体を借りてます。


 乙神光太郎です!以後お見知り置きを。」

はいてー「なっ…!?」

 りほちゃん「じじい……邪魔しに来やがって。黄泉の国にいけなかったのか?アホかよ」

 アンシー「乙神……!?なぜ貴様が現世に…!」


光太郎「さっき、見なかった?君は見たよね?この世の真実をさ……?」

 アンシー「お前、ふざけやがって!!!!」

 アンシーの炎が再び燃え盛る。

 未だかつてない殺気を放ちながら、光太郎に殴りかかる。

 スカッ


 光太郎の体を、アンシーの拳はすり抜けていった。

 光太郎「あ〜効かない。影だし。」

 アンシー「てめぇ…!!!!」

 アンシーは地に手を付け、体を回転させる。

 アンシー「焔!炎蹴!!!」

 右足を軸に、左足をとてつもない速さで、炎を帯びながら回し蹴る。

スカッ

 アンシー「……!?まじでっ、影かよ……!?」

 光太郎「そうだよ?」

 光太郎がアンシーに手をかざす。

光太郎「勘違いしないでほしいのは、確かに君の見た真実は、僕の意思も強く関係してる。

だけどね。だびもまた、同じ思いを抱いている。悪なんだよ。君の知ってるだびじゃない。立派な悪だ。
まぁ、見たでしょ。あれがすべて。」

光太郎の掌から、影の手が生え出る。

 光太郎「もう、めんどくさいよ。終わりにしよう。BRAINが呼んでる。」

ことぴ「な…お…おわりだ…」

 映画館にいるシン以外の全ての人間が震え上がっている。

 りほちゃん「あ……ぁあ!!嫌だ!怖い!!!」

 シン「みんな、どうしたんだよ!!しっかりして!!!」

アンシー「糞が……糞が……だびを…だびを返せ!!!!」

 やめろ。

 光太郎「ぐっ……なにをいってんだおまえ……お前は不完全だ…俺が変わりに、」

だから、首突っ込んでくんじゃねえよ。ジジイ。 これは俺の物語だ。


 光太郎「おまえ、俺を吸収する気か…!?」

 全て俺の物だ。


 光太郎の体から、紫色の煙が溢れ出ていく。

 光太郎「後悔しても知らんぞ…!?」

 いいんだよ。これは俺とあいつのタイマンだぜ?邪魔しねえで大人しく眠ってろ。


安心しろ。全て壊す。

 光太郎「ぐっ、ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 光太郎。いや、マンマの体が輝き出す。


 とてつもない音とともに、会場は静まり返った。

 りほ「はぁはぁはぁ。」

 ことぴ「はぁ……はぁ…」

 映画館のみんなの震えが止まった。

 アンシー「……だびなのか……?」

 マンマ「安心しろ。邪魔が入った。そしてもう一つ、安心してほしい。


 しっかり全ては壊す。」

 光太郎の影は消えた。

マンマ「これで俺は完全体だ。本体も要らなくなった。」

 マンマ「再開だ。友よ。」

 マンマ「乙式術 没」

 マンマの体が紫色の炎で再び包まれる。

アンシー「どうしても、戦わないといけないのか。本当に、あれはお前自身の願いなのか。」

 マンマ「ぁあ。そうだよ。」

 アンシーは涙を、流し続けながら

 ニコリと笑う。

 アンシー「じゃあ、遠慮はいらねえな。だび。」

 アンシーの体の炎が再び息を吹き返す。

 アンシー「終わりだ!だび!」

 だび「ぁあ。ヒッピー。」

 赤い炎と紫の炎が、燃え上がる。

 だび「効果付与。紫炎×∞、全筋力×∞、いや、全て×∞。実態化、我は悪の象徴。BRAINへと導かれし者。」

アンシー「極限炎。魔力全開。覚醒の閃きα
 裏・不死鳥」

 二人の体は原型を留めていなかった。

最早、力の塊になっていた。溢れ出る力に体が悲鳴を上げている。完全なキャパシティオーバーだった。

 アンシー「ウォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」


マンマ「ァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


紫と赤がぶつかりあった。

 真っ白の部屋が揺れる。崩れる。

 そして、ぶつかり合う二人。全力だった。

 憎み、恨み、正義、悪、勇気、全てがぶつかり合う。

 とてつもない衝撃。

 アンシー「ァァァァァァァァァァァ!!!」

マンマ「ウァァァァァァァァァァア!!!」


 ドガァァァァァァァァァァァアン!!!!!

凄まじい爆音、爆風が巻き起こる。

 はいてー「どうなった…!?」

 ポポ「先生っ!!!!!」

 ヤムヤム「まだ。不完全だったか。」

 
 凄まじい煙が晴れていく。

 勝負は互角だった。

 アンシーもマンマもお互い、四肢が大破していた。

 アンシー「ガッ……ハァ…」

 マンマ「……ァア…マダ…フカンゼ……」

 ジャッジ「ご主人!!!!!!!」

 りほちゃん「ゲームどころじゃないね。撤退だ。ジャッジ。聞こえるか?マンマをアジトに転送しろ。私達もすぐ行く。」

 ヤムヤム「ま。今回は君達の勝ちってことにしといてあげよう。こちらも、彼も不完全だ。次。いや、次はないか。」

 ジャッジは、りほに言われたとおりに転送を開始する。

映画館の部屋がグニャグニャにぶれていく。

 気づけば、そこは脳学の教室だった。

 そして、ボロボロになったアンシーが教室に転送されてくる。

 ポポ「先生!!!!!」

 ポポが駆け寄る。

 アンシーの体は酷い状態だった。四肢が無く、顔の原型も無い。残った体も、火傷で壊死している。

ことぴ「おい、こんなんありかよ!!!!」ことぴが教室の壁を殴る。

りほちゃん「まだ死んではいないよ。まぁ天下の脳学だし、専門の医師でもつければなんとかなるんじゃん?」

ヤムヤム「回収は出来なかったが、いい情報も得れた。潮時だな。帰るか。」

 りほちゃん「あっ。そうそう。もういいんじゃない?マンマも覚醒したし。

 猫被ってないでさ?」

ヤムヤム「名演技だったな。さすがだ。」

 シン「何言ってるんだお前ら……!」

 はいてー「ふっ。中々面白かったぞ。」

 脳学一同「!?!?!?!?」

 りほちゃん「あら!やっぱ気付いてなかったか。こんなんじゃ先が思いやられるね!」

 ポポ「嘘でしょ……?てーちゃん??」

 はいてー「ァァその呼び方。うざったるいのう。
あ。 そうそう。貴様とのカラオケ。

 まーーーじでだるかったなぁ?」

 ポポ「………!?」

 ことぴ「てめぇ……ふざけんじゃねえよ……おかしいと思ったんだ……そいつらにあまりにも情報が伝わりすぎだ。まさかあんたが…!!」

 シン「あっ。あの時!アンシー先生とロン君が戦ったあとも……!」

 はいてー「まぁそうゆうことじゃ。我は立派な悪。奈落の一員じゃ。」
  
 ヤムヤム「さぁ。いこうじゃないか。同胞よ。マンマが目覚め次第、計画を続行だ。」

 はいてーを含めた奈落の一同が転送されていく。

はいてー「ふっ。せっかくだ。名乗っておこう。我が名は、奈落の黒蠍。はいてーじゃ。世界が闇に覆われるのを指くわえて見ておるんじゃな。」


 僕たちは、それ以上何も言えなかった。

 静かな教室。負傷者が倒れ込み、非戦闘者はとてつもない無力感を抱き。

 思わぬ形で、最悪の形で、僕らはデスゲームの勝者となった。

負傷者2名 重症者2名 死亡2名


 そして3日後。


 僕ら生徒は自宅待機となっていた。

 この事件はメディアにも一切公表されない極秘の形となった。

 皆、精神的に疲れこんでいた。友だと思ってたものの裏切り。不慣れな戦闘。
 そして、僕らにはまだ早すぎる沢山の痛みと死。

 幸い、生徒で一番の重症者、メルタは早急な治療により元気に目覚めることができた。

 ただ記憶が一部、薄れているらしい。

 


そしてその日の夜

外は大雨。

医師による懸命な措置が行われたが




病院でみんなに見守られながら。

外で降り止まない小さくなった火種を消されるかのように。



 不死鳥。アンシー先生は還らぬ人となった。



「エピローグ」

ここはどこだ?病院?

お前らなんでそんなに泣いてるんだ。



ぁあ。そうか。だびを救えなかったんだ。 お前らに。何も教えられなかったんだ。

俺は死んだんだ。不死鳥。か。

笑わせるなって話だよな。ごめんな。みんな。

俺のためにそんなに泣いてくれるのか。

ポポ、お前はこれから険しい道を歩んでいかなければならないかもしれない。優しいのは分かるが、すぐ泣いちゃうのなおさないとな。

メルタ。無事で良かった。お前はみんなを救える。自分を強く持て。辛い道だとは思うが、頼んだぞ。

ことぴ。 その強気な性格もいいけど、疲れるだろう?放課後ため息つきながら歩いてる所めちゃめちゃ見てたぞ。たまには息抜きも必要だ。
 お前は乙式も魔法も使える。強く、強く生きて、弟を守っていくんだぞ。

 せつな。 ロンの事は残念だった。
ただ、お前は強くなった。ロンはいつでもお前の心に生きている。それを忘れるなよ。あ。学校で寝るのはやめなさい。

 こっこ。 お姉ちゃんと元気にやれよ。
無口なお前だけど、しっかり全て考えてる事。俺にはバレバレだぞ。乙式の力の使い方上手くならないとな。

シン。 お前は………の………で…………

己の………だ。だからこそ…………式………を…。


ふう。まぁそりゃそうか。聞こえないか。

まさか俺が死ぬなんてな。

お前達はこれから、世界に巻き込まれて行くだろう。 
 だけど大丈夫。お前らは既に強い。

 躓くこともある。最後までみてやれなかったし、何も教えることは出来なかった。

本当にゴメンな。

そろそろいかないとみたいだ。

みんな本当に、ありがとう。

先生、行ってくる。


  


What is moral is what you feel good after and what is immoral is what you feel bad after.
正しさとは何か?後味の良いことだ。悪とは何か?後味の悪いことだ。
(Death in the Afternoon:午後の死)

Ernest Hemingway
ヘミングウェイ

 BRAIN脳学デスゲーム編 完

 






 

 
 



 

 

 

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