君の部屋の合鍵を手にするはなし
「はい、これ」
仕事に向かう彼の手から、銀色に光るひんやりとしたそれを手渡される。
「家出る時にこれ使って。そのまま持って帰っていいよ」
寝惚けまなこの私の頭は彼の言葉を上手くのみ込めず、ただ静かに頷き玄関の扉が閉まるのを見送った。
手のひらにちょこんとのった見慣れぬ鍵の感触をたしかに認識するようになって初めて、合鍵を渡されたのだと気付いた。
私が、彼の部屋の合鍵を、持つ
心の中で一言ずつゆっくりと呟く。
別に同棲しようと言われたわけでも、ましてやプロポーズをされ