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200213 小屋入り

実際に、演劇公演で使う劇場で準備を始めることを「小屋入り」という。
今回の演劇公演は3日間だけだが、その仕込みと、できあがった現場での稽古をすることで、あっという間に時間が過ぎてしまうもの。じっさい、今回の公演のための仕込みは少ないにせよ、客席を組み、照明を組み、音響(今回は最小限)を調整する。そして現場での稽古が始まる。

今回の「小屋」は、パピオビールーム大練習室。予約票に「財団」とあるのは、このフェスが福岡市文化芸術振興財団の主催だから。
福岡には劇場らしい劇場はほとんどなく、村川さんの公演が参加している「キビるフェス」は市内にあるホールと「練習場」と呼ばれる場所での公演が行われるのが特徴である。
劇場ではないので、勝手が違う。照明のバトンがこんなところに、とか、なぜこんな壁の色が、とか、この作り付けの客席の用途って?とか、いろいろなことを思いながら仕込みの計画を立てることになる。

そして本作。いよいよ舞台っぽい準備が始まっている。私が仕事を終え夕方に現場に着いた時には、もう客席が組み上がっていた。きょうは舞台監督さんも京都から日帰りで来て、照明仕込みをたんたんと。

現場感がある。いよいよ現場が始まっているのだなあと想う。

むかし大学院生の時に読んだ本で、「現場」って言葉は翻訳が難しいっていった人がいたのをふと思い出す。場所そのもののことを指す言葉なのではなく、なにか人々が、ひとつのことに向けて動き出す場のことを指している言葉。そこには流れのようなものがある気がするし、ひとりの想いだけではうごかない集団としての知を、ためし、たしかめあい、せめぎあい、うたがう場。そのことで、なにかが現れる場なのだろうと思う。

介護の場のことも、介護現場、といったりもするなあと思う。

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■公演情報
村川拓也「Pamilya(パミリヤ)」
2020年2月22日(土)〜24日(月祝)
パピオビールーム大練習室(福岡)
演出:村川拓也
ドラマトゥルク:長津結一郎
出演:ジェッサ・ジョイ・アルセナス

介護の現場を舞台に
そこに現れる、もうひとつの「家族」

ある「現実」を手がかりに舞台作品を立ち上げる、京都を拠点に活動する演出家、村川拓也。今回の作品制作にあたり村川は、福岡で介護福祉に関わる30名へのリサーチを行った。そこで出会ったのが、ある特別養護老人ホームで介護士として働く、フィリピンから来た外国からの介護福祉士候補生だった。
介護福祉施設の日常には、言語を通じた親密なやりとりと、身体同士の接触が入り混じる。その空間に目を凝らすことで、普段は気に留めることのない、しかしいまこの瞬間もどこかで毎日続いているかもしれないコミュニケーションに気づく。
今回の作品では、その介護士である女性が実際に出演し、彼女が働く福祉施設の日常が淡々と舞台上で再現される。その時間感覚に直面することで観客は、自分に近しい身内の人々や、もしかしたらあり得るかもしれない自らの姿に思いをめぐらせるだろう。
「Pamilya(パミリヤ)」はタガログ語で「家族」を意味する。フィリピンでは介護は家族が担うものという価値観があるが、そのスタンスは日本の状況とどのような差異を生み出すのか。異なる年代、経験、国、言語――家族とも友人とも異なる「ケアをする/される」関係。フィリピンからやって来た介護士と、介護を受ける日本人の間で、もうひとつの「家族」の物語が始まる。

演  出:村川拓也
ドラマトゥルク:長津結一郎
出  演:ジェッサ・ジョイ・アルセナス

公演日時:2020年2月22日(土)19:00
     2020年2月23日(日) 19:00
     2020年2月24日(月祝) 14:00
会  場:パピオビールーム大練習室

チケット発売中。詳細はこちらへ。

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