見出し画像

200222 『Pamilya(パミリヤ)』1日目

10時入り。パピオ全体が10時オープンなので、その少し前から待つべく向かう。地下1階の練習室前のロビーに着くと、村川さんがすでにきている。おはようございます、と言うと、なんとなくそことは離れた椅子に座る。舞台監督の浜村さんも来て、それぞれ別の場所に座る。照明の森脇さんも。制作の豊山さんが来て、村川さんの近くに来て何か打ち合わせをしている様子。ここは練習室なので、ほかにもさまざまな音楽や演劇・ダンス系と思われる人たちが待っている。
9時55分になって、パピオのスタッフの方が自動ドアを開けると、いっせいに順番に入っていく。いつもは気にならないアルコール消毒液を手にふりかけ、地下2階にある大練習室に向かう。今日はまず、昨日おわりきらなかった場当たり(段取りを順番に確認していく)で、村川さんは照明のきっかけや明るさなどを微調整している。カーテンコールの練習もする。私は村川さんの代役をする。終わり方が決まってようやく全体像が見えてきた感じがする。
スタッフの仕込み調整を経て、「ジェッサさんに渡す時間」になる。この言葉はこれまでもよく村川さんから発せられている。場当たりや稽古で矢継ぎ早に言われる村川さんからの演出を、ジェッサさんがひとりで覚えて、舞台上で何度も練習をしている(と思われる)時間のことだ。基本的にこの時間はジェッサさん以外は立ち入り禁止になる。稽古の時間ではよく村川さんは、区切りのいいところで「ジェッサさん、ここまで書いて」と言う。ジェッサさんはこれまでの稽古からずっとメモを取り、段取りを忘れないようにし、次の時にはだいたい完璧に覚えてやっている。このメモが舞台上の出来事を支えている。
私は休憩中、豊山さんの手伝いでチケットを作ったりする。

14時半からゲネプロ。本番同様に一度すべて通してみる。客入れ終了後の制作のアナウンスから、最後のカーテンコールまで全て通す。私は客席で見せてもらいつつ、少しだけ代役もやる。実は全体の通しはこのゲネプロが初めて。16時05分終了。
ゲネプロ前に、以前部分的に通しをした時に、もうすこし上演時間を調整したい、と、決まっていたところをなくしたりしていた。結果、目標としているタイムに近づいたので、村川さんは嬉しそうにしている。

その後細かな段取り修正や照明の調整。17時半ごろから掃除、客席づくり、当日パンフレットの席置き、舞台面と客席の掃除、などが同時並行にすすむ。にわかにばたばたしてくる。このころ、当日の受付や立ち会いで福岡市文化芸術振興財団の方々や、フェスの企画制作をしているNPO法人アートマネージメントセンター福岡の方々もいらっしゃる。

18時から受付打ち合わせ。その前に豊山さんにちょっとした仕事を頼まれ近所のセブンイレブンへ。戻ってくると、今回のリサーチからお世話になった田中さんとその弟さんがきている(弟さんとも小郡で一緒に飲んだ)。ジェッサさんにはじまる前にあいさつと激励をしにきたという。おみやげをいただく(ありがとうございます)。

18時半から受付開始のため、次々とお客さんがやってきて、狭いロビーは人だかりになる。明日はもう少し待機用の椅子を出したほうがいいですよねえ、と話をしながら、なんとなく入り口のドアらへんに立っている。中ではテクニカルのみなさんかせすっかり仲良くなって談笑しているので安心する。ジェッサさんはひとり控室で待っているようだ。

18時半受付開始、18時45分開場。開場の時間には30人くらいの方たちが待ってくださっていて、次々と客席に入っていただく。座ってまっているあいだ、ぱらぱらとパンフレットを見てくださっている人が多く、やはりそれはうれしい。途中で増席し、結局のところけっこう満員な感じになり、それもよかった。

19時、5分押しで開演。制作の豊山さんの前説のあと(携帯電話の電源を切っていただくお願いの時の「間」がいいなと思う)、本編開始。私は幸い客席の最後方で見る。

20時25分、終演。さまざまなところからお客さんがきてくださったので、ごあいさつをロビーで。リサーチの過程でお世話になった施設の方やそこで働く外国人の方、東京や宮崎、秋田など遠方からきてくださった方も。

20時45分ごろ、お客様がみなさんおかえりになり、スタッフで明日の段取りを確認。ジェッサさんと村川さんは明日も朝から稽古をすることになった。ひとあし先に、ご飯を田中さんたちと食べにいきたいジェッサさんが帰る。「バイバーイ」と言い、「バイバーイ」と返す。

その後、キビるフェスの企画で、感想を語り合いながらごはんを食べる会にすこし顔を出し、そのあと初日打ち上げへ。村川さん、浜村さん、森脇さん、長澤さん、前田さん、菅原さん、豊山さんと。かなりおいしい中国の火鍋に、中国滞在をときどきしている村川さんが「これ本場のにかなり近い」と喜んでいる。絶妙に終電を逃す。

あと2回か。

=====

■公演情報
村川拓也「Pamilya(パミリヤ)」
2020年2月22日(土)〜24日(月祝)
パピオビールーム大練習室(福岡)

介護の現場を舞台に
そこに現れる、もうひとつの「家族」

ある「現実」を手がかりに舞台作品を立ち上げる、京都を拠点に活動する演出家、村川拓也。今回の作品制作にあたり村川は、福岡で介護福祉に関わる30名へのリサーチを行った。そこで出会ったのが、ある特別養護老人ホームで介護士として働く、フィリピンから来た外国からの介護福祉士候補生だった。
介護福祉施設の日常には、言語を通じた親密なやりとりと、身体同士の接触が入り混じる。その空間に目を凝らすことで、普段は気に留めることのない、しかしいまこの瞬間もどこかで毎日続いているかもしれないコミュニケーションに気づく。
今回の作品では、その介護士である女性が実際に出演し、彼女が働く福祉施設の日常が淡々と舞台上で再現される。その時間感覚に直面することで観客は、自分に近しい身内の人々や、もしかしたらあり得るかもしれない自らの姿に思いをめぐらせるだろう。
「Pamilya(パミリヤ)」はタガログ語で「家族」を意味する。フィリピンでは介護は家族が担うものという価値観があるが、そのスタンスは日本の状況とどのような差異を生み出すのか。異なる年代、経験、国、言語――家族とも友人とも異なる「ケアをする/される」関係。フィリピンからやって来た介護士と、介護を受ける日本人の間で、もうひとつの「家族」の物語が始まる。

演  出:村川拓也
ドラマトゥルク:長津結一郎
出  演:ジェッサ・ジョイ・アルセナス

公演日時:2020年2月22日(土)19:00
     2020年2月23日(日) 19:00
     2020年2月24日(月祝) 14:00
会  場:パピオビールーム大練習室

詳細はこちらへ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?