GRIS考察#02 「手」をきっかけにゲーム序盤で感じた違和感を考える
このゲームのオープニングは、短いアニメーションのムービーとなっていて、そこで歌おうとしたGRISは声を失い、女性の巨大な彫像の崩れた手のひらから回転しながら落下してしまいます。
このモーションが、何らかの喪失、虚しさ、悲しみなどを表していて、ここで一気に心を奪われます。前回もお話した通り、説明的なセリフや字幕はありません。そこで流れる美しいピアノの旋律。
ゲーム内のサウンドトラックはスペインのバンド「Berlinist」が手掛けていますが音楽も素晴らしい。Berlinistについては、独立して記事を設けたいと思います。Spotifyで全曲無料で視聴できます。
ゲーム上のキャラクターデザイン、ステージデザイン、世界観のコンセプトデザインはスペインのアーティスト・イラストレーターのConrad Rosetが担っています。彼についてもいずれ詳しく記事にしていきたいです。
話を戻して、ここから勝手な深堀の考察になります。
GRISの外見的なキャラクターデザインは、手足が棒のような、木の枝のように黒く線で簡略化されています。手足は架空の生き物っぽいですが、顔は人間の女性です。
しかし、何回かプレイを繰り返していくうち、オープニングであることに気が付きます。
たぶん気付きづらいので、意識せず流してしまうと思うのですが、一瞬GRISの手(腕)も人間のそれのリアルな描写になるシーンがあります。あまりに短いシーンなので制作上のミスなのではないか? と思った程です。
これだけ練り上げられて、メタファーやいろいろな引用を用いられながら創られた作品に、それはありえないと考えたいです。何か製作者側のメッセージや意図が込められているはず。
理由として考えられることを箇条書きにしてみます。
①単純に制作上の不統一。簡略化されたデザインで統一されずににそのままリリースされた。(製作者もそこまで意識せず、特に深い意味はない)
②ゲームの表現上、簡略化された手足の方が、モーションするときに扱いやすい。プレーヤーの操作が切り離されるアニメーション(ムービー)の時だけ細かいリアルな表現手法に変えたという技術的な理由。
③現実の人間の女性としてのGRIS→非現実世界・精神的な内面世界へ超越・移行したGRISの象徴
ここでいきなり、このゲームが訴えたかった本質的な事、メッセージなのではないかと思われる事を私なりの解釈として述べてしまうと
「GRISという女性が経験した喪失からの救済を追体験する」
ということに尽きるのだと思うのですが、そう考えると③のような理由で、リアル→非現実が切り替わっているのであって欲しいと思います。
そういえば、ゲーム内の重要な場面でも女性の彫像の手のひらで何かが起こりますね。(ステージクリアなどの区切り)「手」というのはこのゲームでは何か大切な象徴なのかもしれません。
※アイキャッチ画像はゲーム画面を参考に描き起こしたファンアートです。
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