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わたくしとBUCK-TICK

BUCK-TICKのボーカリスト、櫻井敦司氏が亡くなったのを知ったのは友人とカフェにいる時だった。トイレに立った友人の背中を見送りながらふとチェックしたSNSで目に入った、黒い背景の中に白い文字で書かれた「大切なお知らせ」の文字。同バンドのギタリストにして高校時代から僕が天才と崇めている今井寿氏の投稿。普段の彼なら投稿しないような画像に、一瞬誰かのそれと間違えたのかと思ったが、2枚目の画像の文章を読んですぐ、割と大きめの「え」が声になって出た。しばらく呼吸を忘れた、というより出来なかった。

BUCK-TICKとの出会いは中学2年生の時。当時、GLAYを筆頭にLUNA SEAメンバーのソロ活動やPENICILLIN、MALICE MIZER、La'cry ma Christi、SHAZNAなどといったビジュアル系と呼ばれるバンドが台頭し人気を博していた。不良とか怖いものに対して敬遠するところのあった自分も、そういったバンドの楽曲から醸し出される世界観や、ともすればホラー的な怖い要素になんとなく惹かれていった。どのバンドもそのルックスとは裏腹に曲がキャッチーでカッコよかった。

あれは忘れもしない、CDTV内での特集でビジュアル系バンドのシングルCD売り上げトップ10というのをやっていた。各バンド1枚という縛りでこんなランキングだったはず。

1位 BELOVED / GLAY
2位 Tears / X JAPAN
3位 DESIRE / LUNA SEA
4位 悪の華 / BUCK-TICK
5位 BEAMS / 黒夢
6位 99番目の夜 / PENICILLIN
7位 白い闇 / ROUAGE
8位 君が捨て去ろうとも / Eins Vier
9位 Forest / La'cry ma Christi
10位 硝子の肖像 / Laputa

なんで黒夢が入ってんだとか、それならなんでラルクは入ってないんだとか、SOPHIAは? とか色々ツッコミどころはあるが、まだビジュアル系の定義もしっかりなされていなかったし、ラルクのブチギレ事件が起きるにはあと2年ほど待たなければならない。
それはさておき、このランキングの中に1曲だけ、映像が古く、暗く、なんならメンバーの顔すらはっきり見えないものがあった。それが4位のBUCK-TICKだった。当時でメジャーデビュー10年。若手バンドが次々と現れる中ではベテランだと中学生の自分は認識していた。そしてその映像の古さ、怖さに惹かれた。どんなバンドなんだろう、他にどんな曲があるんだろう。現代だったらネットで調べてYouTubeですぐに映像は出てくるが、時は1997年。しかも中学生。CDショップの店頭で販売されている実物を見るしかなかった。そこで見たアルバム『悪の華』のジャケットには強い衝撃を受けた。「怖…ホラー映画のポスターじゃん…」

『悪の華』BUCK-TICK(1990)

ホラー映画もカラーのものより白黒の方が怖かったりしません? あの感じ。

そして発売されたシングル『ヒロイン』。その時抱いたホラーなイメージとは全然違った。やっぱり7年も経つとやる音楽も変わるのかな? でもギターのリフはやっぱり「悪!」って感じでカッコよかった。そしてミュートマJAPANで観た『MY FUCKIN' VALENTINE』のライブ映像。「なんだこの変な声でよく分からないことを歌いつつ、変な楽器(テルミン)を鳴らしている、頬に文字を書いている人は…」再びの衝撃だった。

そこからはもうリアルタイムで追いつつひたすら遡って音源を聴き漁った。正直、うーんって時期もあった。でも彼らはアルバム毎に音楽性もアートワークも変え、独自の活動を続けていった。2000年代後半からはオリコンチャートの上位にも再びランクインするようになり、メジャーでありながら流されたり媚びたりせず、自分たちの信念に従って活動する姿はフィールドや規模こそ違えど、人前に立つ人間として指針の一つとなった。

↓以前、自分の中のBUCK-TICKのアルバムベスト10を挙げた時のインスタ投稿。

人生で一番ライブに足を運んだのもBUCK-TICKだ。最初が2004年の悪魔とフロイト、2005年と2006年のDIQ、夢見る宇宙のファイナル、2015年のDIQ@パシフィコ横浜、2016年のClimax Together、2018年のGunrnican Moon、そして異空のツアーファイナルは自分の誕生日当日だった。これが最後になると分かっていたらと思うと悔やまれることがたくさんある。

信じられない、信じたくないあの報せから1週間が経った。その数日前に公演中に体調を崩して病院に搬送されたのを知った時は、やはりコロナにもかかってたし本調子じゃなかったのかな、くらいに思っていた。まさかこんなことになるなんて。

YouTubeで、家にあるビデオやDVDで元気だった頃の姿を観る度に悲しくなって涙が出る。なぜこの人がもういないんだ。四半世紀以上大好きなバンドのフロントマン、顔。落ち着いていて控えめで、物腰柔らか、紳士的。たまーーにテレビで観る彼の姿はステージ上での“魔王”的なオーラとは一線を画すものがあった。

今年に入って発売されたシングル2枚が本当に素晴らしくて、アルバム発売前だったけど、これだけでチケット取りました。今となっては「あんたがイカロスになってどうすんだよ…」とか「あのPVが意味深な感じになってしまった…」とか思ってしまったりもするけど、やっぱりとても良い曲です。

まだまだ書き足りない。まだまだ出てきそう。次の機会に回します。

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