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第9話~明るい未来~

これで3度目だ。成人式のスーツに、結婚指輪、そして先日オーダーした実印。人生には少し力を入れてモノを買うタイミングが何度か訪れるみたいだ。

老舗のハンコ屋に足を運んだ。手彫りのハンコを作るこのお店は非常に希少な存在である。店主が寂しそうな顔で後継者がまだ決まっていないことを明かしてくれた。

後継者不在の中小企業はおよそ6割に迫る。深刻な問題だが、もっとたちが悪い問題がある。自己保存の本能の下に既得権益を守り、できるだけ現状維持したい古株社員と、時代に合わせた柔軟な経営をしたい若手経営者との軋轢だ。

不確実性が高く、環境の変化が激しい時代に生き残れるのは、スピード感と機動力に長けた会社のみ。コロナで痛感したはずだ。逆にいえば、コロナで変化を嫌う会社が炙り出されたはずだ。

僕はいわき市が好きだ。ただ、若者にとって生きにくい街だとも感じる。色々な意味で。輝かしい過去の成功体験に囚われないで、若者のフレッシュな意見に傾聴できる社会であろうぜ。

次に力を入れて何を買おうか。若手社員の明るい未来に向けた手厚い研修の費用がいい。                   (いわき民報掲載)

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