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第7話~映画を浴びる~

「プッー」後ろの車のクラクションで目が覚めた。早朝の神聖な空気を優しく振動させる朝露のようにはかない控えめな音だった。どうやら赤信号の間に寝落ちしてしまったようだ。それはそれは滑稽なモーニングコールである。

若気の至り―深夜まで勉強し、朝5時には魚市場に立っている。家業の4代目として意気込み体に負荷をかけすぎた。そんな時にふと参加した経営者セミナーで出会った印象的な言葉がある。―美術館にいくと決算書が読めるようになる―比喩的な表現だが、要は好奇心旺盛な経営者は机に向かわずとも吸収力が高いので、呑み込みが早いということだ。

会社脳で弱体化した好奇心を取り戻すべく映画を観る習慣を取り入れた。最近痛感するが、経営者の主な仕事は人の気持ちを想像することだと思う。映画には喜怒哀楽が生々しく詰まっているので効率よく多くの感情に触れられる。

最近見た映画は宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」。―沸かぬなら、沸くまで待とう、従業員。おのざきの従業員全員で一丸となって経営理念の方向へ行進する日が楽しみだ。それまで居眠り運転は厳禁か。(いわき民報掲載)

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