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「スケールしないこと」にフォーカスしたキャディのリアルな歩みとこれから

初めまして。キャディ株式会社にて、カスタマーサクセス部門の責任者をしています、中原です。

この度キャディでは、シリーズBラウンドで80.3億円の資金調達を実施しました。(概要は以下のnoteをぜひご覧ください)

製造業かつグローバルにおいて、受発注に留まらないプラットフォームを目指す、産業全体のDXを推進し、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションを目指しており、そこからするとまだまだ入口に差し掛かっただけ、というところではあります。

同時に、グロースを目指すスタートアップとして1つのマイルストーンでもあるので、せっかくの機会に乗っかりまして、この4年間の歩みをグロース・カスタマーサクセス視点で振り返り、グロースやカスタマーサクセスに関わる方々に少しでも参考になれればと思います。

ちなみに、このnoteと連動したテーマでミートアップも開催予定です。
こういうのはリアルであればあるほど参考になると思うので、
ここでは書ききれない、書けないもっとリアルなところについてぜひ聞きに来てください!

Before シリーズBにおけるチャレンジとは

キャディが行っている事業はいわゆる「マーケットプレイス」と呼ばれるビジネスモデルで、いわゆる「鶏卵問題」が事業成長においては付いて回ります。

「鶏卵問題」の乗り越え方についてはいろいろな戦略が語られていますので、ここでは省略させていただきますが、キャディとしては「カスタマーのグロースドリブン」で「鶏卵問題」を解決していくという選択を取ってきました。カスタマー(キャディにとってのカスタマーは産業装置・プラントメーカーです)の需要を拡大していくことを起点にし、プラットフォーム全体の成長・強化・価値向上を目指すという考え方です。

つまり、ビジネスの確立、そこからのミッションの達成には、需要サイド=カスタマーサイドが継続的にグロースしていくことが求められます。
それは言い換えると、カスタマーにとって、従来の取引・商流から切り替えるスイッチングコストを超えて、キャディとともに調達活動を行っていくことの価値やカスタマーサクセスを確立することです。

カスタマーは従来、近隣の町工場を中心に自ら調達先を開拓し、自社のクセの理解や作りこみなどによって”町工場を育て”、部品の調達体制を構築してきました。ほとんどの会社がそうして10年、20年という付き合いをしています。

そうした長い付き合いをしているからこそ、暗黙知がどんどん積み重なり、「なじみのA社さん」にしかわからない、というようなこともあります。
この何十年もの積み重ねが大きなスイッチングコストになります。

このスイッチングコストを超えるほどの提供価値や、実際に価値を提供しきるカスタマーサクセスをどう生み出していくのかが私たちの課題でした。

SaaSを中心とする様々なサービス分野ではカスタマ―サクセスや「The Model」などの概念が拡がり成功事例も生まれていますが、モノが存在しバリューチェーンが複雑な製造業においてはカスタマーサクセス・グロースモデルの事例はありません。

そうした中で、0から提供価値や、カスタマーサクセスを定義し、そこに必要なプロセスを確立しきることが私たちにとっての「Before シリーズBのチャレンジ」でした。

「スケールしないこと」にフォーカスする

「カスタマーサクセス確立課題」に私たちはどう挑んできたか。
一言で言うと、「スケールしないことに徹底フォーカス」することでした。

「スケールしないこと」については以下のスライドがとてもシンプルにまとまっていますが、私たちにおいては
・価値の仮説検証・カスタマー獲得
・サービス提供
の2つについて、「スケールしない」形でとにかく徹底して挑んできました。

まず行ったことは、ほとんどのメンバーを「顧客価値・カスタマーサクセスのためになんでもやる部門」にアサインしたことです。

バリューチェーンが長く、モノを扱うビジネスを行っているので、機能は多岐にわたり、それぞれに専門性も求められるため、機能別に組織を構築し、役割分担を進めていくことが効率性・スケーラビリティ上はセオリーです。

しかし、そこはあえて「スケールしない」ことを取り、少数のユニットに区切るだけで、それぞれでとにかく「価値の発見」と「カスタマーサクセスへのコミット」だけにフォーカスしました。代表の加藤をはじめ、これまで役員や事業責任者などを務めてきたメンバーもその中にどっぷり入りこみ、最前線の営業から、納品対応、時にはカスタマーと一緒になって荷受けの手伝いなども行いました。

サービス提供についても、カスタマーサクセスにつながる可能性のあることであればなんでも、自らの手で対応してきました。
仕組み化・プロダクト化を待っていては目の前のカスタマーに価値提供しきれないことはもちろん、その仮説が崩れると設計・開発が無駄になってしまいます。

キャディは板金という加工領域から事業がスタートしましたが、「装置に関わる加工品一式で引き受けることが価値なのでは」という仮説が生まれ際には、まだやったことのない加工領域について、システムもパートナーもない状態で商社的なアプローチで提供を行い、価値検証を行うといったことも行ってきました。(結果、その価値は証明され、今では多くのカテゴリを扱うようになり、パートナー網や見積もりシステムの構築につながっています。)

せっかくなので、「スケールしないこと」の解像度を上げるために自分がやったことの一部例を記載しておきます。

|データ整理のエクセル代行:
多くの調達の方は、複数の町工場に相見積もりを取り、エクセルで集計しながら意思決定をしていきます。キャディも取引開始当初、ある意味見極め段階では相見積もり先の1社になるわけです。
その際の入力、集計、多様な軸での分析などについてまるっとデータをいただき、代わりに精査を行うことなどをしました。

既存先であればこれまでのデータがあるため集計作業が少なかったりする中で、集計業務を代わりに行うことでキャディの価値を感じてもらえる機会を作ることにコミットする意図と、その業務の解像度自体を上げる目的もありました。

|図面の目視読み取り:
図面の読み取りを自ら目視で行い、どんなカスタマーのクセを理解できると価値につながるのかを検証。日に1000図面以上を見ることもざらにありました。(ここで発見した秘密は今でも、そして今後の進化にもとてつもなく意義があるものになっています。)

こうした「スケールしないこと」に徹底的にフォーカスしていくことで、
・XXな業界の△△の規模の会社だとどういう調達をしていて、どんな課題を持っているか
・サプライヤ選定・切り替えにおける意思決定はどう行われるか
・調達部門以外にキャディとの取引に関する意思決定に影響する部門はどこか。そしてそれらの部門にとってのサクセスは何か
・コストや品質が良くてもキャディ活用に踏み切れない理由やそれを超えられる理由は何か
といったテーマについての解像度がどんどん高まり、再現性を持って、カスタマーサクセスを届ける方法を確立することができました。

ちなみに、リアルなところでは、最初から「スケールしない」ことにフォーカスで来ていたわけではありませんでした。
当初はスケーラビリティを意識した組織体制やプロダクト開発なども行っていました。(当時は効率性がOKRに入っていたりもしました)

日々忙しく、いろいろ取り組んではいるのだけど、数字は伸び悩むし、何か雲をつかむような感覚が続き、停滞感が続いていた時期もありました。

その中で「カスタマーの価値定義に徹底的にフォーカスしよう」と決め、期中に体制もがらっと変え、全社でフォーカスしたことは大きな転換期だったなと思います。(フォーカスのかいもあって前年比6倍の拡大を実現できましたが、逆にそれまでは停滞もありました)

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このあたりの意思決定の変遷や「スケールしないこと」のよりリアルなところはぜひミートアップでお話しできればと思います!

ミッション共感とテクノロジーの可能性が支える

「スケールしないこと」にフォーカスすることで、「カスタマーサクセスの確立」が大きく前進しましたが、同時にフォーカスしているからこそ捨てていることがあります。それは、「効率的なサービス提供」です。

何がサクセスに貢献するかわからないからこそ、まずは何でも引き受ける。仕組み化の前に自らやっていく。

そういうアプローチをしているからこそ、多くの仕組みは”ハリボテ”です。であれば、様々な局面で”負担”を受けることになります。それは時にはパートナーの町工場の方々にも影響することもありました。(一緒になってモノづくりを行っているため、私たちのプロダクトがパートナーにも影響を与えます)

この”負担”は、製造業だからこそより一層大きな負担になってしまうことも、正直ありました。また同時に、上述の通り、明確な成果につながり始めたのはこの1年だったりします。

それでもこの約4年間、「スケールしないこと」にフォーカスし続けられ、今に至ることができた理由は
・モノづくり産業のポテンシャル解放というミッションへの共感
・テクノロジーの可能性
の2つだと思っています。

様々な”負担”が生じる中でも、それがポテンシャル解放に繋がっていくのであればと、前向きに取り組み続けられる、建設的な議論をし続けられる、ミッション共感・カルチャーの強さがあってこそ、フォーカスをし続けられたと思います。何より、それが社外の存在であるパートナー工場の皆さんとの共有もできていることが、何よりも強みであり資産だなと改めて感じます。
感謝の気持ちを持つと同時に、一層ポテンシャル解放のために励んでいかねばと思います。

そしてもう1つが、キャディが持っているテクノロジーの可能性です。

「これが続くのはしんどいな~」と思うことは正直何度もあったのですが、そういう大変なことをテクノロジーのチームとふんわり話すと、いつのまにかMVPが出来上がったり、半分冗談で「こんな感じで読み取れて~・・・」という魔法みたいなことが実現したりと、本当の意味で想像を超えるテクノロジーを生み出してくれます。

「スケールしないこと」が、キャディなら本当にスケールすることに変わるに違いない、と自信を持たせてくれるテクノロジーチームがあるからこそ、「スケールしないこと」に挑み続けられたなと感じています。

「モノづくり産業のポテンシャル解放」に向け、「スケールすること」と「スケールしないこと」をしていこう

キャディのこれまでのグロースの歩みのポイントをまとめると
・フォーカスポイントを見定め、徹底的にフォーカス
 (キャディの場合、カスタマーのカスタマーサクセス確立にフォーカス)
・事業課題を解くために、まずは「スケールしないこと」にフォーカス
・「スケールしないこと」にフォーカスするためにもミッションやカルチャー共感にきちんと投資する
というところかなと思います。

全社そして、パートナーとともに一丸で「スケールしないこと」にフォーカスしてきたことが、「カスタマーサクセスの確立」に大きな前進につながったのかなと。

とは言え、改めてキャディが目指すところからするとまだまだ入り口なわけです。最後に簡単に、これからの展望について書きたいと思います。

現状は、「こういうカスタマーに、こういう価値提供するとスイッチングに値する価値を感じてくれて、キャディと取引を進めてくれるよね」がわかってきたのが今の段階です。ここからはこのカスタマーサクセスのモデルを起点に
・より強固にしていく(リテンションし続ける)
・よりスケールさせていく
・より幅広いカスタマー層に拡張していく(業界、グローバル)
・より深く価値提供していく(アプリケーションなど違う価値提供
ことを目指していきます。

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言い方を変えると
・培ってきたカスタマーサクセスのモデルをスケールさせていく
(そのための仕組みや組織作り)

を行うと同時に
・産業全体へのインパクトを拡大・深化するための拡張
(より広く、深い領域でのカスタマーサクセスの構築)
を目指していくということです。

早速、SaaS事業の展開も開始しています!

こうなると、「スケールしないこと」にフォーカスするフェーズも変わってくる面もありますが、一方でまだまだ事業・価値を作っていくフェーズだと思っているので、「スケールすること」と「スケールしないこと」のバランス、構造、役割をうまく考えながら進めていく必要があるのかなと思います。

全然違う事業ステージになり、新たな難題来る・・・感もありつつ、同時にそれ自体にもわくわくする感覚でもあります。
シリーズBという1つのマイルストーンを迎えはしましたが、気を引き締めて一丸でチャレンジしていこう気持ちを新たにモノづくり産業のポテンシャル解放にコミットしていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

最後に、このめちゃくちゃ難しいんだけど、わくわくするような課題に少しでも興味をお持ちいただけた方がいらっしゃいましたらぜひお話ししできればと思います!

カジュアル面談はこちらから

また、よりリアルなところはオンラインミートアップでお話しできればと思いますのでぜひご参加ください!


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