ゆういちの一生 第11話「ひいき。」

ゆういち、小学6年生。

ゆういち11歳。
小学6年生になりました。

運動はできないけれど、文化的なことは良くできていました。
あいかわらず絵は上手いので、美術の授業で描いた絵は、賞を取ったりしていました。
でも「最優秀」とかでなく、ほどほどの賞です。
勉強も良くできていました。

ひいきや!

その頃は、プリケンくんという男の子に目を付けられていました。
プリケンくんの家はお金持ちだったかで、
当時まだ珍しかったビデオデッキを買って
「笑っていいとも!」を録画して見ていると
嬉しそうに言っていたのを覚えています。

「ひいきや!」

どんな「ひいき」があったのかを覚えていないのですが、
僕は当時の担任の先生に何か特別扱いをされていたようです。

それが起こるたんびに「ひいきや!」とプリケンくんが大騒ぎします。
そして、プリケンくんを中心とした何人かから無視をされ続けます。
一時期はクラスの大半から無視をされていたような記憶があります。

選挙のポスター。

その時の担任の先生が、
僕を勉強と絵の面で気に入ってくれていたのだとは思いますが、
お年を召していたので、少し考え方に偏りがあったようです。

ある日、選挙のポスターのコンクールに出すと先生に言われ、
放課後に残って絵を描くように言われました。

僕は楽しく絵を描くのは好きでしたが、
選挙には全く興味がありません。
机に向かっても全く描けません。

本当なら断ればよかったのですが、
それもできず悩んでいると、
先生は昔の入選作を持ってきて、
参考にして描くようにと言いました。

ん?小学3年生の時の発明クラブと同じ感じですね。
しかたなく、マネして描きました。
その絵は全く賞は取れなかったと思います。

作文をコンクールに出す。

また他の日、「いじめ」がテーマの作文をまたコンクールに出すと言われ、
作文を書きました。

後日、提出した作文が返ってきました。
そこには、先生によって赤ペンがたくさん入れられ、
新たな文章が書き足され、倍以上のボリュームになっていました。

あれは結局コンクールに出されたのでしょうか?
もし出されたのだったら、もうそれは僕の作文ではなく、
先生の作文ですね。

体育委員にさせられる。

体育委員になったこともありました。
これは、プリケンくんが
「仲野くんは運動が苦手だから、体育委員がいいと思います。」
って僕を推薦したからです。

この頃から少しずつ人を遠ざけるようになったり、
仲良いところを見せないよう頑張りはじめます。

「誰かに好かれると、それをひがむ奴が嫌がらせをしてくる。
だから仲良くならないようにしよう。」

そんな考えがこの頃生まれたようです。

坊主に。

その頃、家の方向が同じで一緒に帰っていたヨリカズくんと
「〇〇ができなかったら、坊主な。」
って話してて、冗談だったんだけど、
なんか周りの目にもう疲れて、坊主にしました。
どうせ中学になったら坊主だし。

無視するのやめてやるわ。

卒業が近くなった頃、プリケンくんに
「もう無視するのやめてやるわ。」
と言われました。

当時は、かなり暗く生きていました。
まあ、
時代だったり、
とても田舎だったり、
子どもだったのもあり、
そういうものだよなって今は思います。


あとがき。

これをきっかけに「スベること」や「ひいき」「無視」について
いろいろ考えました。

「ひいき」というのは、同じ条件なのに片方だけを特別扱いすることなのかと思います。
ただ、その同じ条件というのが人によって違うことがあるのがややこしい所ですね。

「クラス全員同じなのに、仲野だけ選ばれるからひいきやー」

「同じくらい絵が上手い人がいるのに、仲野だけ選ばれるからひいきやー」

「僕と仲野は同じ生徒なのに、仲野だけ選ばれるからひいきやー」

プリケンくんはどこを基準にして「ひいき」と判断したのでしょうね。
どれなのかは今となっては分かりません。

ずいぶん違いますね。

僕の運営するNPO法人まねきねこの講座に参加した人に

「同じNPOなのに、まねきねこさんと〇〇さんとではずいぶん違いますね。」

と言われたことがあります。

これ、同じにする対象広いですね!
日本にNPO法人は5万件以上ありますが、
全部同じなわけじゃなく、違っていて当たり前なものです。

分かりやすく人間に例えて、
同じである対象を大きく広げていくとこうなります。

「同じ人間なのに、あなたと石原さとみさんとではずいぶん違いますね。」

…なんかイヤですね。
違って当たり前なのに、わざわざ同じ〇〇でくくることで、イヤな感じがします。

まさか、あの人にひいきをされていた!

小学校の学芸会で桃太郎を上演する時に、
桃太郎が何人もいて鬼がいない、みたいになるのも同じ考え方からでしょうか。
同じ生徒なのに、なぜこの子は桃太郎で、この子は鬼なんですか?
みたいな。

「同じ生徒」でくくられて本当に何に対しても特別扱いされてたら、
さすがにひいきですね。

例えば、運動苦手な僕が、運動の選手に選ばれるとか。

ん?…と考えると

「仲野くんは運動苦手なので体育委員がいいと思います。」

と僕を推薦したプリケンくんは僕をひいきしたってことか!

みんな失敗してた。

まあ、いろいろ書きましたが、
小学生がやったことなので、仕方ないことではありますね。
もしかしたら、家庭で他の兄弟と比べられて、
その不満をクラスメートにぶつけて解消したとかかもしれません。

なので「お前が悪い」とかではなく
「みんな失敗してた」ってことですね。

今となっては分からないことばかりですが、
相手の事情を想像するといういい機会となりました。


続き。


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