見出し画像

ゆういちの一生 第22話「はたらくゆういち。」

ゆういち22歳。

ゆういちは22歳になりました。
大学を卒業し、働きはじめます。

仕事は2つやっていました。

イベント会社。

1つ目は、大学生の頃からアルバイトをしていたイベント会社です。
平日にやっていました。

元々は、八景島シーパラダイスという遊園地みたいなところにスタッフとして入っていたのですが、運営の方に声をかけられ、内勤をすることになりました。

そのイベント会社は基本は、ナレーターやコンパニオンやキャンペーンガールなどを派遣します。

僕のお仕事はというと、
キャンペーンガールになりたい女の子が面接に来たら写真を撮ったり、
登録している女の子に電話をかけて、オーディションのスケジュールを押さえたりします。
オーディション用のプロフィールをイベントの主催者に届けたりもしました。

登録しているスタッフも、運営している側も、ほとんどが女性です。
僕は男性よりも女性と関わる方が楽だと感じていたので、いい環境でした。

ワゴンDJ

2つ目は、ワゴンDJというお仕事です。
これは土日にやっていました。
スーパーやデパートの店頭などで、マイクで話して人を集めて、
化粧品や日用品を販売します。

舞台と客席の距離。

なんでこれをやろうと思ったかというと...?

僕は大学生の時に演劇部で舞台をしていました。
しかし、舞台と客席の距離が遠いなと思ったのです。

いや、物理的な距離ではなく、
自分の表現が客席まで届いていない、
全然お客さんを楽しませられていないし、
全然感動させられていない。

舞台と客席の距離は、
そのまま、僕と他人との心の距離なのじゃないかな
と思ったのです。

そこで、舞台と客席の距離をすっごく小さくして、
小さなステージで訓練しようと思いました。
僕とお客さんの間には化粧品のワゴンがあります。
この小さなステージでお客さんを楽しませたいと思いました。

僕の企画やトークやパフォーマンスでお客さんが商品を買っていけば、
それは僕の表現がお客さんに届き、
お客さんの心が動いて、
買うという行動につながった、
ということを表すのではないか。

たくさん売れたら、
たくさんの人の心を動かすことができた、
そう思い、働いていました。

ワゴンDJの一日。

どんな感じでお仕事が進むかというと

スーパーやデパートに、土日だけ、
化粧品やシャンプーなどがどっさり置いてある特設コーナーが作られます。
そこでマイクを使って人を集めて、商品説明をして、買ってもらいます。
演劇部の時にやってた「外郎売」みたいな感じです。
で、一日に何回か、タイムサービスの時間を作って、
商品を買ってくれた人にプレゼントをあげるというイベントです。

店内放送で、呼びかけて、その後、売り場でマイクでお客さんを集めます。
ある程度集まってから一気に説明を始めないと、
後から来た人が分からないのでまた説明するみたいになるので、
集まるまでは、販売せずにフリートークでつなぎます。
集まらない時は、くじやチラシを配ったりします。
そして、お客さんが集まったら、マイクでトークをして買ってもらえるようにします。

ただしゃべっていればいいのかというと、そうではなくて、
いかに、瞬間的にお客さんの興味を引き、
警戒心を解いて、
買いたい気持ちにさせられるか、
というのが問われます。

この仕事で、瞬間的に人と仲良くなるという力が鍛えられました。
人と会話して、人の心を動かすというトレーニングをずっとしていた感じです。

そして、お客さんや周りの人がどう動くのかというのも学んだと思います。

デパートやスーパーでマイクで話すので、他の売り場にもマイクの声が聞こえます。
そうすると、他の売り場の邪魔になってしまいます。
なので、朝、会場に入ったら、他の売り場にあいさつ回りをします。
化粧品のサンプルを持って。
あいさつして仲良くなっておけば、クレームを入れられることもありませんし、
なんなら、休憩時間に買いに来てくれたりします。

売り場の価値を上げる。

先輩からいくつか技も教えてもらいました。
売り上げが上がればいいのですが、全然売れない日もあります。
その時は、評判を良くすることで、売り場の価値を上げる作戦になります。

「あの売り場があったから、土日は店に活気が出てよかったよ。」

と、売り上げ以外の価値が上がるようにします。

・元気に明るく接客をする。
・前向きに取り組んでいる姿勢を見せる。
・イベントを自分から提案して実行する。
・周りのお店の人と仲良くなり、トークで楽しんでもらう。
・周りのお店で商品を買って、売り場に飾っておく。
・会話の中で他のお店の話題を出して、ちょこっと宣伝する。

お店の担当の方や、他のお店からの評判を高くすることで、

「よくがんばってくれた。売り上げ悪かったけど、それはがんばってなかったんじゃなくて、条件が悪かったんじゃないかな。また来てくださいね。」

って、なるようにします。
売れなかったのは、天気のせいとか、イベントが重なったからとか言ってくれます。

美容部員の扱い...

しかし、上手くやれないことも、まあまあ、ありました。

化粧品は美容部員さんが接客してくれますが、
その売り場のリーダーは僕で、
その場の空気を良くしないと、
上手く動いてくれません。

気難しい美容部員さんも結構いて、
全然売ってくれないこともありました。

今ならもう少し上手くできると思いますが、
当時は、女性の扱いが全く分かっていません。
ご機嫌を取って気分良くして仕事してもらえばいいのに、

「あなたはプロなのに、人にご機嫌を取ってもらわないと仕事もできないんですか?」

って美容部員に言って、なおさら仕事してもらえなかったこともあります。

企画の楽しさ。

このお仕事の楽しかった要素としては、
自分がリーダーなので、自分で企画してイベントを回すことができるというところです。

どんなトークをするのか、
どうやって人を集めるのか、
どうやってスタッフを動かすのか。

自分の着る服を変えたり、
パフォーマンスしてみたり、
音楽を変えたり。

工夫が上手く当たると結果につながるのが嬉しかったですね。

人を集めるためにパフォーマンスをしたこともありました。
電撃ネットワークさんのネタをマネて、
ドライアイスを食べたりとか、口でクラッカーを鳴らしたりしましたが、
引かれましたね。
当たり前です。


続くよー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?