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ゆういち0歳 ゆういちの旅がはじまる。

暗闇

白く輝く一つの魂。

「そろそろ、次の人生が始まりますよ。」

「ん…」

「楽しみですね。」

「うん。どんな人生になるんだろう。」


窓の外は、無数の星が輝いている。

その中に青く光る星。

ここは、その星にある日本という国の

京都という街。


ある一人の男がいた。


板前だったこともある。

サバの押し寿司をよく作っていた。


大工だったこともある。


今は、タクシーの運転手だ。

その頃、香川県にて。


ある女が旅行に出かけた。

「旅行行ってくるわ。」

「気ぃつけてな~」


フェリーで瀬戸内海を渡る。


女は京都に着いた。

女が手を挙げる。


一台のタクシーが止まる。

そのタクシーを運転するのは先程の男であった。


男「どちらまでいかれますか?」

女「生八つ橋食べたいんやけど、おいしい店知らんのよね~。」

男「では、京都をご案内しましょうか。」

女「ありがとな~。」

二人のお付き合いがはじまる。

そして

「おなか大きくなったなぁ。」


「買ってきたで。」


「カラカラ…」

「ははは…」

数日後

「ん?」

「動かんな」

「遊びすぎたな」

1972年2月21日

AM2:00
外では雪がはらはらと降っている。

陣痛がくる。

AM3:00
女は男を起こし、男は車で病院へ向かう。


京都の嵐山の病院。
近くに桂川が流れている。
景色が綺麗な場所。

暗闇

「1972年2月21日4時55分。出発の時間ですね。」

「いってきます。」

「どうぞよい旅を。」

病院にて

1972年2月21日4時55分

「オギャー!」

「まあ、真っ白。」


はかりに乗せられる。

「3020グラムの男の子ですよ。」

「あれ?お父さんは?」

「帰られましたよ。」

「….。」

自宅にて

男。寝ている。

退院。

「なんで帰ったん?なんで見舞いにも来ないん?」

「産婦人科は恥ずかしい。病院が大通りに面しとるから入れん」

ベッドにはゆういち。

天井から、カラカラ回るはずのおもちゃが

回らず静かにぶら下がっていた。

5年後

妹が生まれた時は父は見舞いに行きました。

なぜなのか聞くと

「病院の場所が入り組んどったから来れた。」


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