ゆういちの一生 第31話「十字架の下に眠るのは…」
ゆういち31歳。
ゆういち31歳。
自分が作った「即興パフォーマンスまねきねこ☆」を中心に生きています。
昼間は派遣で働き、夜は劇団の稽古です。
また公演を追っていきたいと思います。
第8回公演 仮面舞踏会
このチラシは僕が作ったものです。
かなり気に入っています。
イラストレーターというソフトを使ったのですが、
ソフトが高すぎて買えなかったので、
30日の無料体験版で作りました。
ひでよはまねきねこ☆をやめましたが、
公演を観てまねきねこ☆で一緒にやってみたいと言ってくれる人が前々からいたので、
一緒に公演をすることにしました。
この頃、仮面をつけて即興で演じる「仮面即興」と、
即興のダンスの「コンタクトインプロ」を学んだので
それを使って公演をすることにします。
仮面とダンスですから「仮面舞踏会」というタイトルです。
公演は「仮面編」と「舞踏会編」の二本立て。
基本はパルテノン神殿の柱をイメージした同じセットですが、
仮面編の日はお札を貼り中華風に、
舞踏会編は、たまたま劇場に置いてあったバラのオブジェを使って洋風にして、
日によって世界が違うようにしました。
演技はインプロができる俳優が、
ダンスは東京女子体育大学のダンス専攻の女の子がメインで行います。
演技とダンス、だんだん僕の目指した「劇団ではなく即興パフォーマンス」
という形になってきました。
第9回公演 The KAGAWA
東京で香川県出身の2人と出会ったので、
香川県に帰って公演をしました。
この時だけ、ひでよにまた出てもらっています。
父親、母親、妹、弟の家族全員が見に来てくれました。
父親が「これだけできたらたいしたもんや。」と言ってくれた言葉が嬉しかったです。
弟は「お兄ちゃんが一番下手。間が悪い。」と言ってました。
第10回公演 HEAVEN
「劇団まねきねこ☆」ではなく「即興パフォーマンスまねきねこ☆」と名乗っているのは、
演劇だけに留まらないエンターテインメントショーをやりたいという思いでした。
このHEAVENという公演は、演劇、コント、パントマイム、ダンス、歌、バンド演奏、ジャグリング、マジックなどいろんなアートの集合体となりました。
インプロをやる僕達と、東京女子体育大学のダンスの女子に加えて、バンドマンやマジシャン、ジャグラーなど、いろんな分野の人と組んだ公演です。
十字架の理由は?
ステージには、また十字架のオブジェがあります。
10回目の公演なので十とかけているのともう一つ理由があります。
僕が初めて作ったこのまねきねこ☆は僕の作品のようなものであり、
そして僕の体の一部みたいな感覚でした。
そして、ひでよと一緒にまねきねこ☆をやっていくうちに、
ひでよもまねきねこ☆の半分くらいの存在になりました。
しかし、ひでよが抜けることによって、
まねきねこ☆が半分になり、
僕の体の一部のまねきねこ☆が半分になったことで、
僕の体に穴が開いた感覚になりました。
なんとか、この穴を埋めて、一人でやっていかなければならないと思っていました。
実は、ひでよ自身はやめるつもりはなく、むしろ、まねきねこ☆をより良くするには、ひでよ自身がもっと力を付ける必要があると考えて、他の劇団で勉強して大きくなって帰ってくるつもりだったそうです。
しかし僕は、
いつ帰ってくるか分からないひでよを待つことの辛さ、
これからいろいろやっていきたいと考えていたプランが実現できなくなったこと、
まねきねこ☆の半分が消えたこと、
他の劇団にひでよを盗られたと感じた悔しさ、
これから一人でやっていかなければならないプレッシャー、
これらが混ざり合っていました。
その結果、
「もう帰ってこなくていい。一人でやるから。」
みたいになっていきました。
十字架の下に眠るのは…
で、このHEAVENという公演を境に、
完全にひでよとお別れをして僕一人でやっていくことを決めました。
まねきねこ☆のひでよは死んだのだと考えようと思いました。
十字架のオブジェの下には、まねきねこ☆ひでよの死体が眠っている、
そしてひでよはHEAVEN(天国)に行った、
そんな意味がありました。
今思うと、意地を張らずに、ただひでよが帰ってくるのを待てばよかったのにと思います。
会場が見つからない。
萩本欽一さんの劇場「欽こん館」でよく公演を上演していました。
「欽こん館」は座席数も50人程度、お金的にもちょうどよかったのですが、
ボディペインティングの塗料をステージにこぼしてしまったことから、
その後、他の会場を使うことになります。
この頃、なかなかちょうどいい劇場が見つからず、
探しているうちにクラブみたいなところに行きつき電話をしました。
手続きをしに新宿の事務所に行ったら、
ヤ○ザみたいな事務所で、ヤク○みたいな人が出てきて手続きをしました。
怖かったー。
会場代も高く、満員で入って、さらに2ドリンクを別料金で注文してやっとトントンです。結局、結構な額の赤字が出ました。
僕が会計をしているというのが問題で、
僕はお金の勉強をし損なってきているようで、
お金について疎いようです。
公演の赤字は毎回僕が負担していますが、
その負担額がどんどん上がっていきます。
お金の計算をすることに目が向かず、
公演が終わってから赤字だったと気づいたりします。
出演者からも参加費などもほとんど取ってなかったと思います。
僕なんかのために出てくれただけでありがたいので、
さらにお金を取るなんてできない、と考えていました。