裁ちばさみを買う。
長い長い梅雨が開けた?ので、休日に江古田にお出かけ。
玄関に目隠しとしてだらしなくぶら下げていた布を、ちゃんとのれんにしてあげよう、せっかくなら綺麗に作りたいと思い、ふと「裁ちばさみを買おうかな」と思い立った。
もうすぐ、誕生日ということもあり、何かいいものを買っておきたいなと思っていた矢先のこと。裁ちばさみなんて、今では100円ショップでも買えるご時世だけれども、長く使える良いものを求めても良いんじゃないかと思い、江古田の手芸店「ちぐさ」さんへ。
お店に入ると、毛糸やボタンがぎっしり取り揃えられていてギュギュッと陳列されている。良いもの、便利なものがいつでも買えるようにという心意気が伝わって来る。ミシン糸もそれぞれの機械に合わせて買えるようになっていて、まさに小さなユザワヤ。
「何かお探しですか?」
と気品のある、けれどすこしハスキーで頼もしい、芯の通った声の店主が声をかけてくださった。裁ちばさみを探していると伝えると、彼女はすこし眉を下げ、
「うちにはあまり安いもの置いてないの」
と、申し訳なさそうにクローバーの裁ちばさみを出してくれた。
これが一番安いとのことで、3000円代。
そして、もう一つ「庄三郎」という東京の鋏東の庄三郎ばさみを棚から取り出して、並べて見せてくれた。
「どちらも使いやすいと思うけど、やっぱりちゃんとした良いものは使ってみると違いがわかるの。ここなら切っていいわよ。」
と、薄手のナイロン生地を出してくださった。
布端を慎重に切ると、鋏の先までほつれずに綺麗に切れる。
切れ味が握っている手からもわかるほどに綺麗にスラスラと切れてゆく。
「全然違いますね、小学生の頃の裁縫道具を使っていたのですが、もう卒業です」と冗談をいうと、にっこり笑って。
「そうなの、切ってみると違いがわかるでしょ。私はもうこれをずっと使っててわからなくなってしまったけどね。初めての人はびっくりするわよ。」
と言い、洋裁してる方ならと値切りまで交渉してくださることに。
ここで、庄三郎はさみを買いたい!とこの瞬間心に決め、おかみさんにお願いした。
「これがあると気持ちよく切れるから。でもね、落とすとネジが狂うから、絶対落としちゃダメ。」
鋏を金色リボンの包装紙に包みながら、手入れの仕方など教えてくださり、「またいつでもきてくださいね」とお見送りの言葉と一緒に手渡してくれた。
まだ7月は終わっていないけれど、良い誕生日プレゼントを買えた気がする。良いものを小売店さんで店主の方におすすめしていただいて、知恵や経験といっしょに品物が買えるっていいな。
江古田ってそういうところがあるから離れられない。
まさに、良いお買い物ができるまちだと改めて思った、大暑のはじまり。
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