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人の心を揺さぶるプレゼン

まず私は話すことが苦手です。

本当に苦手です。

話すことが苦手というと「いや絶対嘘でしょ」そう言われます。

そう言われると嬉しい反面、悲しくもなります。

なぜなら話すトレーニングをし続けてやっと最近人並みに話せるようになったからです。
自分が話すのが苦手だと感じてトレーニングをし始めたのは小学一年生のとき。


話すことをトレーニングした。

私は小さい頃から前に出ることが多かったのです。

けど話すことはできず、黙ってしまったり詰まってしまったり、よくわからないこと(的外れだったり話の順序がおかしくて何を伝えたいのかわからない)を言ってしまって前に立つことが苦手になりました。

前に立って沈黙するその時間がきっと実際は10秒程度なのかもしれないけれど私には何分にも感じてその時間がものすごく嫌だったんです。


忘れもしないあの日。

私の小学校では日直の人が毎朝一分間スピーチをするという習慣がありました。そのスピーチは大体の人がアドリブで話すのですがそれができない私は毎回いつ日直になるか数えて、数日前から準備してたくさん練習してから当日に臨んでいました

けどある日、日直の日を数え間違えてしまい、アドリブで話すことに。
その時私は一分間黙っていました
正確には「あ、」とか「えっと」だけを連呼した結果口が開かなくなってしまったのです。

もう本当に逃げ出したかったです。
言葉が出なくて、そんな自分が情けなくて、周りになんて思われているか怖くて今すぐにでもその場から消え去りたいと思ったのを今でも鮮明に覚えています。

もう一生人の前で話したくないとも思いました。

けど、話すことは夢を叶えるのに必要だったし、話せない自分を変えたいと思ってトレーニングを始めました。

トレーニング開始

小学校1年生のときに話せるようになりたいと思ってから場数を踏むために
人前に立つことは片っ端からやりました
話し方がうまい友達を研究しました。
話し方をたくさん調べました
皆が少ししか練習しなくても話せるようなプレゼンを人一倍練習しました

小さい頃に家で発表している私

その結果、少しづつ話せるようになったのです。

でも人並みに話せると思えるようになったのはトレーニングを始めてから9年経った中学3年生の時でした。

色々な管理職を経験して、場数を踏んで、何度も練習して、やっと人並み。

でも嬉しかったです。普通に話せることが。

けどやっぱりもっとうまくなりたいプレゼンがうまいと言われる人になりたい

そんなことを思いながら神山まるごと高専に入学しました。


入学して2回目のプレゼンの様子

プレゼンの授業

そして入学から4ヶ月ほど経った今、国語でプレゼンの授業があり、最後にプレゼンをすることに。

本番前にある先生にフィードバックを頂きました。

その先生はプレゼンがすごく上手で、勉強熱心で、とても努力家な人です。
私はその先生にどうしても見ていただきたくて真っ先に連絡をしました。

まず一番最初にプレゼンをみていただいたとき、その先生にたくさんのことを聞かれました。

結衣さんが一番伝えたいことは何?
それは本当?
自信を持って言える?

先生に言われたことに少しづつ答えながら自分の中でも整理することができました。

そこで「それを踏まえて結衣さんが本当に伝えたいことをスライドとかを全くみないで伝えてみて」そう言われたんです。

急にアドリブで話すことになって言葉がつっかえてしまいました。
拙い語彙でも伝えようと必死になって伝えました

そうしたら、話の順序はおかしいし、きっと最善な言葉はもっとたくさんあったけど相手には何を伝えたかったかが伝わったようです。

先生は大きな拍手をしてくれました。
伝えなきゃという気持ちが強かったからこそ、何度も伝えようとしていることを繰り返して、伝わったのです。

「伝えるにはそこをとにかく繰り返すこと。」
そう先生に教えていただきました。それを踏まえた上でもう一度プレゼンをアドリブでやってみました。
初回よりは少しだけ自信がありました。前回、うまくいったからです。

けど何故か今回は全然言葉が出てきませんでした。
それはきっと、新しい方法を学んでそれをうまくやろうとしたらいっぱいいっぱいになってしまったのだと思います。

言葉が出てこず、一分間沈黙。

あのトラウマの時間でした。
目に涙が込み上げてきて、こらえるのに必死でした。

声が震えるのをできるだけ抑えてなぜ言葉が出てこなかったかフィードバックをしました。

「繰り返すというのを意識的にしようとすると、どうやって繰り返せば良いのか分からなくて。」

そういうと、「うまく話せなくていいから、時間も気にしなくていいから、とりあえず話してみよう」と言われ、話を始めました。

話始めから涙をこらえていた私は震える声を抑えながら話していた私は、開始5秒で涙がこらえきれなくなり、話ができなくなりました。

そこで先生は止めてくれて、「どうしたの」と話を聞いてくださいました。

「今まで話しの練習をずっとしてきて、苦しいときもあったけど夢のために頑張ってきて、やっと最近少し自身を持って話せるようになってきたのにまた逆戻りしてしまったように話せなくなってしまった気がする。それがすごく怖い

私は、そう打ち明けました。

そうしたら先生は昔関わった人の話をしてくださいました。

その人は話すことが好きだったが、とあることで苦手になってしまったそうです。
でも、その人はプレゼン大会に出て必死に訴えた。
話すのが苦手ならでなきゃいいじゃないかと言う人もいるかも知れない。
でもその人は苦手なりにも自分のように話すのが苦手な人がいることを訴えた。

そしてそのプレゼンは賞を取った。

「何を伝えたいかというと」

話をしてくれた先生はそう言うとこう続けた。

「その人は決して一番上手なプレゼンではなかった。しかし聞き手に一番伝えたいことが伝わっていて、伝えたいことを必死に伝えた。
だから、プレゼンは流暢に話せることだけが全てじゃない。

その時私は少し救われた気がした。

そして同時に、
上手さではなくて、人の心を揺さぶるプレゼンをしたい
そう思った。

一番のプレゼン

少し自分を落ち着かせてから、もう一度プレゼンをした。

その時はやっぱり話の順序はきれいじゃなかった。
涙で顔はぐちゃぐちゃで、声もかすれていた。

けど自分が今までしてきたプレゼンで一番、良いプレゼンだった

一番上手なプレゼンじゃなく。

泣きながらも私が本当に伝えたかったこと。

相手の意見を自分の色で塗りつぶすのではなく、色を共存させたコミュニケーションを取ってください

自分の自我を押し通すのではなくて、相手の意見を一度素敵な意見だと受け止めてほしい。

自分も相手も活かせるような着地点を探してみてほしい。

一人ひとりの色が濃くてカラフルなこの学校ではそれが特に必要なコミュニケーションだと切実に思ったから。

カラフルな学校の仲間たち

本当に伝えたかった。

聞いてくれていた人は目を湿らせて聞いてくれた。

「頑張ってこらえたけど、危うくつられて泣くところだった。本当に伝えたいという想いが伝わった。」

そして先生は称賛してくれた。
素晴らしかったと。
大きな拍手をくれた。

そして「もし結衣さんが感情もコントロールしてだせるようになれば、それは結衣さんの大きな強みになる。それができたら最強だ。」
とおっしゃってくださいました。

それにまた、涙が止まらなかった。

決してうまくないあのプレゼンは今思い出しても涙が出てくるほど自分の心を揺さぶり、相手の心を揺さぶった

自分で鳥肌が立った、一番想いがこもったあのプレゼン。

それを本番でもしたかった。

先生は「騙されたと思って100回練習してみな。」と言いました。
それから、場数を踏むこと。それが必要だとも言いました。

「場数ってどういうことかわかる?」

そう言われたとき私は
「何度本番を経験したか」と言いました。

でも先生は「何度バカになれたか」だと言いました。
場数はバカの複数形。ダジャレだけど本当だよ。何回も失敗してうまくなる。だからもし今回失敗してもよし。場数を踏めた。うまくなった。そう思ったら良い。

そう言われて心が軽くなりました。

その後、寮に帰って夜な夜な練習しました。

部屋だとルームメイトが寝ているのでランドリールームで深夜まで練習。

先生に言われた通り、100回練習してみました。

実際のカウンター


そして迎えた当日

当日、もともと緊張しないタイプなので緊張はしていませんでした。

でも普段前に出る前に感じる恐怖感は不思議とありませんでした

それは先生に言われた通り素直に100回練習して、うまく話せるという自信があったからだと思います。

そしていよいよ自分の番。

少しつっかえつつも必死に練習の成果を出せるように頑張りました。

制限時間は2分。
私はその1分59秒を使って目一杯伝えたいことを伝えました。

正直納得の行くプレゼンではなかった

あのときの自分の心をも揺さぶったプレゼンはできなかった。
けど、私は清々しい気持ちでいっぱいだった。

今回のプレゼン練習を通して
自分の一生忘れないであろうプレゼンをすることができたから。
そして自分が恐怖感が消える練習回数を知れたから。

これからはもっと良いプレゼンができるのではないかとワクワクした。

私が尊敬している国語の先生はいつもこう言う。

プレゼンはプレゼントだ。」と。

相手にプレゼントをするように伝えたいことを伝えられるプレゼンをしたい。

そして自分の見せ方を知って、伝え方を知って。強みを見つけて。

最強のプレゼンターになりたい

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