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【結の人】その② 前田 泉美さん(渋谷区社会福祉協議会 CSW/SC)

地域づくりに関わる人々は、日々どのような仕事をしているのでしょうか?
「結・しぶや」の運営には、複数の組織から、それぞれに異なる役割を持った、個性的な人々が関わっています。【結の人】では、渋谷の地域をつむぐ人々をリレーインタビューで紹介します。

【結の人】その②は、「結・しぶや」開設初期の常住メンバーで、東部地区担当の前田泉美(まえだいずみ)さんです。

――前田さんの、現在のお仕事での担当を教えてください。
渋谷区社会福祉協議会の地域福祉課 地域総合相談支援係で「地域福祉コーディネーター」と「生活支援コーディネーター」を兼任しています。今年4月から開設された「福祉なんでも相談窓口」の分室の相談員業務、及び、11月開設の地域共生サポートセンター「結・しぶや」にて団体の登録管理や、団体からの各種相談への対応をコミュニティマネジャーが担当する他団体とも連携しながら取り組んでいます。

――地域福祉コーディネーター、生活支援コーディネーターの具体的なお仕事とは?
渋谷区には、包括支援センターが11あり東西南北4つのエリアに分かれています。その中で現在は、東部の千駄ヶ谷地区をメインに担当し、月に一回、地域の多様な方が集まる「協議体」に参加をして情報交換をさせていただいています。協議体には、町会の方、見守りサポート協力員、シニアクラブ、こどもテーブルを運営されている方など本当に多くの方と顔を合わせることができます。千駄ヶ谷地区の協議体の特徴として、話しあいの場の開催情報について、ご自身たちでチラシを作成して周知。先ほど挙げた特定の役割をお持ちではない地域住民の方も多く協議体の話し合いに参加されているということがあります。

協議体では地域の情報交換がメインで、立ち上がりの頃に「地域のオススメを教えてください」とお願いしたら、“おいしいもの情報“をたくさんもらえました。毎月の協議体の開催を楽しみにしています。地域で行われている色々なイベント情報を一気に知ることができて、イベントに行けば、地域を支えるキーパーソンとの新たな出会いがあります。毎月定期的に顔を合わせていると、段々と情報交換の内容も深い話になっていきますが、それを気軽に話せる関係性にもなってきている変化を感じています。

また、「原外カフェ」という中学校の中に居場所をつくる活動を民生委員さんと一緒に取り組んでいます。学校では、月に1度、先生の勉強会のために早く授業が終わる日があります。校区内の場合には一度、おうちに帰って部活の時間にまた学校に戻ってくることができますが、今の中学生は電車に乗って通っているお子さんもいらっしゃるので、一度、自宅に戻ることが難しい子ども達もいるため、学校の中での居場所を提供しています。担当として現場にいくことで、中学生と仲良くなって話に耳を傾けたり、地域を守る民生委員の方々との顔がつながる大事な接点となっています。

――これまでの取り組みから新たな動きは生まれていますか?
協議体からの発展として、神宮前の協議体では、神宮前小学校と協議体がコラボをして、街歩きを一緒にしようという話題が出ています。協議体は普段の生活では出会わなかった人同士が出会って新しい動きが生まれている面白い空間だと思っています。

もう1つ、新しい動きとしてはシブヤロコミュがあります。渋谷区社会福祉協議会の地域福祉コーディネーター13名が中心となって、区内で活動している異なる分野の団体がつながり、地域の支援体制の構築を目指すための交流会です。ローカル(地域)+コミュニティ(地域社会、共同体)を合わせて「ロコミュ」と名付けられています。2022年8月と10月に、2つの地区で開催をして、それぞれに参加された方々とSWOT分析を行いました。
私は東部エリアの話し合いのファシリテーションを担当しましたが、共通課題として、私立受験をした後に不登校や引きこもりの状況変化があった子ども達には、地域での支援情報が届きにくい状況があるのではないかというこ話題がのぼりました。こどもテーブルや、学生に向けた夜の居場所づくり、引きこもりの子どもたちの支援をされている方や、民生委員さんが集まったというご縁が重なり、関心の重なりがあるメンバー同士でまた集まりたいと、9月以降も毎月1回の打ち合わせを重ねています。初回の話し合いでは、不登校の定義について触れたり、不登校という状況になっている子どもたちだけではなく予備軍まで広げて、どう支援ができるか、などの議論を経て、今は、自らイベントを開催して乗り合おうという新しい流れが生まれてきています。

今は、結・しぶやという場所ができたことで、本当に分野を問わず、色々な団体の皆さんがお越しになります。それぞれにどういう思いで活動をされているのか聞き取るのはもちろん、立ち寄った団体さん同士もゆっくり情報交換をして繋がることができるようになったなと感じています。社協の中でも、こどもテーブルの係や、担当エリアという枠があるので情報共有もその中に限られる傾向がありますが、エリアや活動分野関係なく、結・しぶやでは新たな団体の取り組みに触れることができるのがとても楽しいです。
ここにいると新しいことが生まれそうなワクワク感があり、この団体さんのニーズとこの団体さんを繋げたら良いのではないか、とか、いかに自由な発想で取り組むことができるかを考えています。結・しぶやにお越しになる団体さんから口々に「こんな場所が欲しかった」「こういう場所を作れるのは渋谷区ならではだよね」とおっしゃっていただいていることを力にしていきたいと思っています。

――ところで、前田さんはなぜこの仕事を?
私は生まれも育ちも渋谷で、地域活動は小さい頃からとても身近にありました。色々なところに連れて行ってもらった記憶があります。大学で保育士の資格を取得していたことがきっかけで、たまたま、渋谷区の子育て支援センターでアルバイトをすることになりました。最初は週3の予定が、気付けば1週間、支援センターにてフルタイムで働くことになり、センターの新規開設から閉鎖までの一通りを経験することになりました。その後は、ボランティアセンターに異動となり6年の間、区内のさまざまな団体さんとの出会いをいただいたり、社協の組織としての全体像などを学ぶことができました。ボランティアセンターは昔、「何でも屋さんでしょ」と言われたことがあります。ボランティア相談と並行して、毎月イベントを開催したり、学校の福祉教育(白杖や車椅子体験)や、長期休暇中の学生ボランティアのコーディネート、せせらぎまつりという4-5000人規模のイベントを地域の人と5ヶ月くらいかけながらやっていました。時間をかけてイベントをすると、地域や団体の人とが仲良くなるので、ボランティアセンター時代に繋がった方がいまだに覚えていただいているのはありがたいなと思っています。

去年は、ファミリーサポートセンターで人と人とのつながりを考えながら、マッチングとサポート側の養成講座を担当していました。平日9-17時までの受付を、利用者の実態に合わせて時間変更をしたり、ウェブからの申し込みができるようにするなどの改善活動にも取り組んでいました。

――「結・しぶや」ではどんなことに期待しますか?
結・しぶやは、重層的支援体制整備事業の一環なので、今までにない仕組みを作るというミッションを担っています。新しい情報に出会いに行ったり、人のお話を聞くことは本当に好きで、伺っているとワクワクしてきて、ここの団体とここがつながるといいのではとイメージすると楽しいです。色々なことを柔軟にやりたいなぁと思いますし、来館される団体さんからもあれをやりたい、これがやりたいが集まる場所に楽しさを感じています。

今は重層的支援体制整備事業の取り組みに協力いただける団体さんの利用登録を進めているところですが、今後、色々な団体が結・しぶやでつながって、毎週のようにイベントで溢れ、色々な人が来て色々なことが生まれて、そこに関わって行けたらと考えています。知らない人と知らない人がつながる瞬間が面白いと思っています。

先日、子育て支援センターに勤務していた頃の利用者のお母さんがいらして、出会った当時は0歳だったお子さんで、今高校生になった子から、こどもテーブルの活動をやってみたい、どうやっているのかを知りたいという相談を受けました。ずっと、区内の公的施設で仕事を経験させてもらっているので、昔のご縁が今の仕事にもつながってきていて面白いなと思いました。また、別の日に、学生ボランティア団体さんが来館されましたが、やりたいが溢れていて、こどもテーブルをやってみたいけれどやり方がわからない、と同様のニーズがありました。渋谷区の場合は子どもの居場所も含めて、こどもテーブルと呼んでおり、区内には100近いたくさんの活動があります。新しく活動を始めてみようと思っている人、すでに何らかの活動を経験している人が結でつながり、より充実した活動につながれば良いと思っています。0から1が生まれる結・しぶやで、より多くのつながりを作っていきます。

聞き手:コミュニティマネージャー(認定NPO法人サービスグラント)岡本