漬物を教わる。後編
みなさまこんばんは。前回、楢葉町で「お母さんたちが作る漬け物」に興味を抱くようになった経緯を書かせていただきました。
実際にお母さんたちに漬けものを教わりに行くのが、私にとっては精神的ハードルが高かったんです。今日はそんな話を聞いてください。
一回では終わらない漬け物の工程
これまで、町のお母さんたちに家庭料理を教わりに行くときは、毎回内心は緊張しながら挑んでたところもありました。お母さんたちの迷惑にならないか、スピードについていけるか、気が利かないと思われたら嫌だな、とか・・・。台所にズケズケ入って教わりに行っておいて勝手なのですが(汗)、お母さんたちの何気ない素振りに冷や汗をかきながらの3時間(料理+お茶)だったりもしました。
漬け物を教わろうとすると、他の料理のように3時間程度では完成しません。漬け物は干す、塩をふる、重石をして水を上げるなど、一つ一つの工程が長く、日を跨ぐ作業・・・。ここに天気や気温も関わってくるので、お母さんとの日程調整も予め決めるのが難しい。図々しい私も、さすがに漬け物を直接教わるのはハードルが高い気がして諦めていました。
「娘がいれば」
ある日、近所のお母さんたちと"ごんげんさま公園"にパンジーを植えながら、「漬け物が難しくてうまくできないんですよね・・・」と話してみたところ、
「わたしもうちのばあちゃんのようにはどうしても美味くできないんだ。でもばあちゃんが台所に立てなくなってから見よう見まねでやってきて、もし娘でもいれば教えてあげたいんだけどねえ・・・。」
何気ないその言葉が、私にとっては「教わっていいんだ!」という後押しのように聞こえてしまって、お母さんたちが元気なうちにできるだけ漬け物の手ほどきを受けてみたい!という気持ちが湧き溢れてきました。
ぬか床
春、これから迎える夏野菜のシーズンに間に合うよう、糠床の作り方を教わりたい・・・。
これまでも度々お料理を教わってきたときさんの門を叩きました。「そうかー!わかったー!」と快諾してくれ、とはいえこれまでの料理より段取りが必要で、予め買っておく道具、容器、材料などを指示していただいて日程を決めてお宅へ伺いました。
時間通りお家へ着くと、ときさんはすでに糠をフライパンで炒って、広げた新聞紙の上に移して冷ましている最中でした。「なんて私は気が利かないんだ!」心の中で、もっと早く来なかったことを後悔しながら、どうして糠を炒るのかとか、この米糠はときさんが自宅で精米したときに出た糠を今日のために溜めておいてくれたことなどを聞きました。
冷めた糠をホーローの漬け物樽に移し、塩を、ときさんが「いいぞ」と言うまで入れていく。ときさんの手が物凄い速さでそれらを混ぜる。「缶ビール持ってきたな」と言われて慌てて差し出した缶ビールを、ドボドボと混ぜ入れ、水を足してさらに混ぜていく。糠の柔らかさをみて水を足す。全てときさんの目分量。またしても、動画で撮影しておかなかった気の利かない自分を呪うことになりました。
耳たぶくらいの硬さにまとまってきた糠に、鷹の爪や昆布をハサミで切ったものを投入。ニンニクも3〜4粒投入。表面を平らにならして、樽の側面に付着した余分な糠があればきれいに拭き取り、蓋をして終了!
「これを持って帰ったら、なんでもいいから野菜のクズとかを入れて捨て漬けをするんだ!」
発酵は生活の隣に
捨て漬け?
初めての言葉だったので戸惑ったのですが、糠床が正式な糠床として発酵をスタートさせるためには、微生物たちの餌となる食物繊維を投入し、分解作用を繰り返して微生物を増やし発酵を促してやる必要があるようなのです。ビールを入れたのも、発酵を促す意味だったのだと、後日学びました。
捨て漬けの終わりがどの段階なのかどうも分からず、本漬けのつもりできゅうりを漬けてみたのですが、最初はものすごくしょっぱかったんです。塩入れすぎたのかなあと思っていたのですが、毎日新しい野菜を入れて試し続けてみたところ、1ヶ月ほど経った頃、だんだん塩気がまろやかになり、糠全体がタプンとまとまったような感じになってきました。糠床の完成です!
それからは、朝起きて糠床をかき混ぜる。度々忘れて慌てて夜にかき混ぜる。野菜から出た水分が溜まってきたらキッチンペーパーで吸う、など、糠床と共に生活するような毎日が始まりました。
生活の中に「漬け物・発酵」が隣り合わせで暮らしているような状態がうれしくてたまらず、これを皮切りに、さまざまな漬け物にトライしていくことになったのでした。
ちなみにいま、家の一部屋は、暖房をつけず寒いままにしてあり、2ヶ月前に漬けたたくあんの匂いでいっぱいです。
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