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斎藤哲也[編]『哲学史入門Ⅰ〜Ⅲ』NHK出版新書

古代ギリシアから現代思想に至るまでの西洋哲学史。入門とは言え、内容は「本格」である。伝わる表現でありながら、質を落とすことがないのは「聞き書き(インタヴュー)」という手法が成功しているから。

またこの手法は対話としても機能している。たとえば第一章にソクラテスの哲学的態度について『「無知の知」という言い方は誤りで、正しくは「不知の自覚」である』という納富信留の主張(これ自体は説得力のあるものである)があるが、その少し後には『「不知の自覚」は「不知の知」の寸前くらいまで行っている(斎藤哲也)』とある。このように論旨が揺らいで見える(それは、「不知の自覚」とプラトンのイデア論をどう接続させるかという難しい問題があるからなのだが)のも対話の妙である。

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