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Death Valleyのどん底で見た投資の風景

鎌倉投信の裏庭にある桜の木は、例年よりも少し遅れて美しいピンクの花をつけはじめた。早いもので新年度に入り、2008年11月に鎌倉投信を設立して17期目を迎える。鎌倉投信の会社としての業績は、お客様からお預かりする運用残高に比例する。そのため、運用残高がある程度の規模になるまで厳しい赤字経営の期間が続く。スタートアップでいうDeath Valley(死の谷)だ。今でこそ世界有数の独立系の資産運用会社も会社を設立した当時はずっと赤字経営が続いていた。鎌倉投信も例外ではない。経営者として心が折れそうなDeath Valleyの時期を支えてくれたのは、当時の「結い 2101」のお客様(受益者)だった。

東日本大震災に見た投資の風景

大手の外資系運用会社を離れ、鎌倉投信を設立してからは、いろいろな想いをもった個人の投資家と関わる機会が随分と増えました。とにかく効率的に高いリターンを求める年金基金などの機関投資家と違い、個人の運用に対する考え方は幅広く柔軟です。そこから今まで考えたこともなかった投資の可能性に気づく瞬間がありました。そうした観点で僕自身に強い影響を与えた二つの出来事を紹介させてください。

一つは、東日本大震災の時に見た投資の風景でした。

2011年3月11日(金)14時46分に東北地方を震源とした大地震が起きた時のことです。当日の日本の株式市場は、取引終了間際だったこともあり大きな反応はありませんでしたが、福島原発を含めて事態の深刻さが明らかになった週明けの二日間で、日本の株式市場は20%近く暴落しました。金額にすると100兆円もの株式の時価が一瞬にして減ってしまったのです。正に、売りが売りを呼ぶパニック状態でした。こうした状況ですので、鎌倉投信のお客様も不安になって「結い 2101」を一旦売却する人も多いに違いないと身構えたものです。

しかし、蓋を開けてみると、結果は全く異なるものでした。こうした時だからこそ「いい会社」を応援したいという声をいただくと同時に、追加で投資したお客様が圧倒的に多かったのです。当時、営業を開始して1年目でしたが、その1年間の中で最大の入金件数が震災直後にあったのです。

鎌倉投信は、直販といって、銀行や証券会社を経由せずに、直接お客様と対話をし、信頼関係を築きながら「結い 2101」を購入してもらっていることも影響していたのでしょう。お客様は、「結い 2101」の投資の考え方や投資先の会社の活動を日頃からよく知っていて、このような時だからこそ「いい会社」を応援したいと思ってくださったのだと思います。

信こそがお金の本質

当時、追加で投資いただいたお客様からのメッセージの一部がこちらです。

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「復興に向けて自分がやれることは、目の前の仕事に集中することぐらいですが、「結い2101」を通じてお金が働いてくれることで、間接的に復興につながっていくと信じます ・・・ (30代)

被災地域や国内で困難に負けず助け合っている姿は、まさに「結い2101」の投資先の姿と重なる。今は「結い2101」の投資先も売られると思います。ですが、本物は必ずはばたくはず。ぜひ、鎌倉投信の投資理念を貫き、“結い2101の輪”を広げていってください ・・・(40代)
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胸が熱くなり、涙が込み上げてきました。僕は、こうしたお客様のメッセージを当時の投資先の社長の全てに手紙で送りました。すると、投資先からは、「大変な状況だが、役職員一丸となって頑張って乗り越える。そのことを鎌倉投資のお客様にも伝えて欲しい」と返信が届きました。
そうしたやり取りの中で学んだことがあります。それは、お金は、無色透明でいろんなものにつながるが、人の想いを伝える力は必ずある、ということです。信用や信頼、「信こそがお金」の本質なのだと確信しました。


投資は、いい社会、いい未来をつくる力になる

この時に預かったお客様からのお金は、正に祈りのこもったお金でした。僕は、お金は命と同じだと考えています。なぜなら、限りある人生の時間を使って手にしたものだからです。時間は人生であり、人生は命なのです。

そして、投資の本当の目的は、お預かりした大切なお金を単に増やすだけではない。いい社会、いい未来をつくることが本来の目的であることを改めて感じたものです。それ以来、僕は、少し大げさかもしれませんが、「金融を通じて平和への祈りを捧げる」ことを根本精神に据えて投資の事業に向き合っています。今まで勤めた大手の運用会社では感じることがなかった感覚でした。

この時に投資をしてくれたお客様は、投資先の会社の価値を株価や財務諸表上の価値で測るのではなく、社会における存在価値を見て、社会に必要な会社であることを実感していたことでしょう。おそらく株式市場が大きく値を下げるなかでも「結い2101」に投資をすることに何の不安もなかったに違いありません。むしろ、未来をよくする投資につながるという確信があったのではないでしょうか。

それができた人たちは、普段から自分なりの価値観や判断軸を持つ人たちです。結果としてこのタイミングで投資した人たちは、この10数年の間で最も高い利益を享受した人たちです。

「志を持つこと」と「肚決め」とでは次元が異なる

僕にとっては、たとえ一人ひとりが投資する金額は小さくても、会社にも社会にも力を与えることができるという「投資の本質」をお客様から教わった貴重な経験でした。さらには、そのことが僕に厳しい経営環境に立ち向かう勇気を与えてくれ、今は大赤字だけど鎌倉投信の事業を最後までやり切ると肚を据えた瞬間でもありました。「志を持つこと」と「肚決め」とでは、次元が異なるのです。

その時に投資してくださった皆様がいたからこそ、今の鎌倉投信はあります。こうしたお客様と出逢えたことに心から感謝しています。

今回もnoteを読んでいただきありがとうございました。次回は、投資の可能性を感じさせてくれたもう一つの出来事を書きたいと思います。


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