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モノローグ台本『異世界への招待』第1稿

『異世界への招待』

作:藤野友祐

やあ、ようやく目が覚めたようだね。
ボクはメビウス。

あっ!無理に動かない方がいいよ。
時空を超えて来たんだ、精神への負担は大きいはずだからね。

そうそう、ボクはこのアルカディアの案内人なんだけどさー。

なんと君にはこの世界を救ってもらいまーす!
どう、その気になった?
いやだなぁ、そんなに警戒しないでよ。案内人だって言ってるじゃない。
つまり、ボクは君のミ・カ・タだよ。

あぁ、それについてはちゃんと順を追って説明するからさ。
もう気づいてるかもしれないけど、ここは君がいたところとは別の世界。
いわゆる異世界ってやつだね。そう、アルカディアという世界だ。

そして君は勇者として選ばれたんだ。光栄に思うんだね。
なんのためにって、そりゃあここで魔王を倒すことが君の使命だからさ、分かるよね。
もちろんそのために呼ばれたんだよ。それ以上でもそれ以下でもないから。

え、そんなこと望んでないって?
いやいやいや、それは君の都合でしょ。こちらにもいろいろと事情があるからね。
誰かが魔王を倒してくれないと世界が滅びるんだよ、リアルな話。

元の世界に帰る方法?ボクが知るわけないでしょ、そんなこと。
もう一度言うよ、君は魔王を倒す使命が…。

おいおい、冗談だろ。ボクが魔王だって言うのかい?
(少し態度と口調、可能なら表情も変えて)
はっはっは、よくぞ見抜いた。そう、我こそは魔王!
そして我の計画を邪魔する勇者には今この場で死んでもらう、覚悟するがよい!!
(攻撃する動作をするが途中で止めて、元の状態に戻る)
ってなるじゃん。仮にもし僕が魔王だったらさ。少し考えれば分かるでしょ。

なに、その微妙な反応は。せっかく乗ってあげたのに。お気に召さなかったかい?

そうだね、もちろん勇者候補はこれまでにもたくさんいたよ。
でも勇者を倒すどころか、戦うところまで行ったのは1人しかいないんだよね、実のところ。
え?これまでの勇者がどうなったのかって?そりゃあいろいろだよ。
魔王と戦った勇者は、ボコボコにやられてそれがトラウマになって戦うことすらできなくなっちゃったし、あとは違う仕事を始めちゃったりとかね。探偵とか、武器屋とか。あ、食堂の経営を始めたのもいたっけ。ほら、ダンジョンで行けば素材とか食糧とかいろいろ調達できるみたいで。意外ともうかるらしいよ。あと何人かは行方不明で…。あ、これ言っちゃいけないんだった!
でもね、魔王を倒すのをあきらめた勇者のほとんどは、この世界で結婚して家庭を持ってるんだよね。勇者ってさあ、わりとモテるんだよ。あ、今ちょっと「勇者っていいかも」とか思ったでしょ。うん、顔に書いてあるよ。君、意外と切り替え早いね。

まずはあそこのお城に行って王様にご挨拶するといい。そうすれば…。
(遠くに向かって叫ぶ)
って、おーい!まだ話は終わってないんだけどーー!!
(あきれたように)
あーあ、勇者がモテるとかまた余計なこと言っちゃったかな。
ま、しかたないか。きっと元の世界ではさぞモテなかったんだろうし。
でもあんなうわついた気持ちじゃあ、どうせ今回も役に立たなさそうだな。

やれやれ、言ってるそばからまた次の勇者様のお出ましか。
もうこれで今日は8人目なんだけど、召喚しすぎだろ。
いい加減少しは休ませろよ。
はー、オレもそろそろ転職したい…。

(再び新しく来た相手に向き直って)
やあ、ようやく目が覚めたようだね。
ボクはメビウス。

(了)

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