モダンスイマーズ『嗚呼いま、だから愛。』(@ 東京芸術劇場 シアターイースト)

 読書メータやfilmarksのような媒体がないので観劇の記録でもしようかと思いつつ放置してしまってました。
 短くても良いので、観たらすぐ書いていきたいと思います…。

 この劇は「セックスレスをテーマ」にしていると紹介されていることが多かった気がします。個人的には、レスというよりは「コミュニケーション不全」や「自己肯定」の話だと感じでました。
 
あらすじ
 2年間セックスレスの夫婦。多喜子(漫画家)は、夫がAVを観ていること(DVDをクローゼットの下に堂々と置き隠さなくなったこと)に不信感を覚える。それを伝え、セックスをしようという流れになりつつも、思いの外夫が自分を求めていないことに激怒。夫が大事にしている鉄道模型を壊してしまう…。これが冒頭のシーン。それ以降は、過去の出来事や、そのNゲージ破壊事件後と、時間を行ったりきたりしながら、女優の姉とそのマネージャー、友達夫婦、漫画の編集者、漫画のアシスタント・チエコなどとの話を織り交ぜながら、話は進んでいく。

【以下、ネタバレあり感想。箇条書きみたいになっているかしょもあります】

多喜子については、「なんでそんな言い方を!」と思ってしまうことが多かった。それから、「性的に求められること・承認されること」を愛だと感じているんだな、と思った。これ自体は悪いないとは言えないことだと思う。他人からの承認で自分の問題を解決しようと思ってしまうことは、自分にもある。ただ、「他人」は不確実なので、1つに依存してしまうことは苦しいと思った。多喜子の自己肯定感低さにつられてしまうというか、観ていてとても辛い。その話し方じゃ全然伝わらないよ、と思うことも何度もあり、苛立ちに似たような感情を覚えてしまっていた。

他の人の感想を読んでいると「夫が何考えているか分からない」というものがあった。確かにそうだと思った。観劇しているとき、多喜子を中心として観すぎてしまっていた気がする…。改めて考えると、多喜子だけが悪いわけではないな。夫は感情がこもっていないしゃべり方をしていて、それが多喜子の不安を煽っている一面がある。
相互に、コミュニケーションする上でズレが発生してしまっていた。

コミュニケーションの不全の問題は、マネージャーと姉についても同じ。マネージャーは先方にきちんとスケジュールを伝えてられない人…? と前半で描かれていた。それから、もう一方の面は後半に明らかになる、姉が突然キャンセルしたがっていたこと。
相反する説明が出てくるので、何が「正しい」のか分からなくなっていく。

この信頼できない語り手(?)は、多喜子から見た「夫と姉の関係」についても言える。買い物から帰ったとき夫と姉が良い雰囲気となっている瞬間に立ち会うが、でもそれが現実のことなのか、多喜子の妄想なのか判然としない部分が残っていた。

観客という一番、神の視点に近い場所から眺めているにもかかわらず「完全には分からない部分」がある。日常の普通の会話の中で、分かりきれないことや誤解は多分にあって、それを向けられているような、鑑賞している場合でもそこから逃れられないのか……。

ところで、この多喜子が夫と姉の仲睦まじい姿を観たシーンで、夫は姉に「“女”を出されるとつらい。情で結婚した。それを伝えてしまったら、あいつは死んでしまうだろう。ふれようとしない努力を分かって欲しい」と言っていた。

ところで、多喜子も夫に対して興味持ってないように感じた。Nゲージ(?)に対して「興味ない!」と一蹴するところとか(友達とか姉は「おもしろい?」とか訊いてる)。人から愛されたいなら、自分から相手に興味を持とうよと思ってしまう(自分も果たして、他の人に興味を持てているのであろうかとも思う)。

話が分からないまま「うん?」とか相槌を打ったり、きちんと会話が成立しないまま(答えないまま)話が進んでいってしまうのは、演劇ではなく普通の会話に近い? 気がした。

宗教の一節を読み上げること、電車好きの夫と繋がって、何かよりどころを持っている人という風に感じた。

「パリ同時多発テロ事件」が話に出てくるので、2015年に、その時代の空気感の中で観たかったな…。再演しないという話を聞いたけれど、時代性が強く出ている気がした。3年前の作品だけれど、観るのが少し遅い気がした…。

妊娠したこと、自分にだけ伝えられなかったらつらいか……と思った。それを止めていたのはいちくん(夫だと)知らされ、飛び火。なんで止めていたんだろう…。

男性同士で猥談めいた会話、女性同士で実はセックスレスであることや、子育てのためにフランスへ行くことが語られる。その後、「ほぼ聞こえているんだけど! さっきから」という姉の言葉によって、その均衡は崩れ去る。
なんだろう…、1つには劇っぽい演出だなと思う。もう少し言いたいことがある気がするけれど、何だろう。

友達のその夫への言葉。「ケイジって本当に聖書信じてる? 時々分からなくなるんだよね。」

なんとなく、心に止まった台詞。

「多喜子、全然興味ないでしょ? ファミレスとかでママ友集まっている」「終末を迎えたら、滅びるんだからいいじゃない」「こんな見た目だから大変」「日本人になりたかった」多喜子「でも、私にはなりたくないでしょ?」 姉「やだね」

エスニティとか、他の問題ともつながってきた?

姉「あんたが不細工だからよ」多喜子「知ってます知ってます」

このシーンや、美化されたと感じる絵に対して引き裂きたい(自分が切り裂かれたような気持ち)。姉の発言は、少し度が過ぎているような気もしていたけれど、他の人の感想で多喜子と姉は本音で話し合っているというものがあった。そういう見方もできるな、と思った。

姉「だから、あなたもう持っているでしょ。あなたは今愛情を持っている」

夫「たきちゃんは悪くない」多喜子「編集者と寝ました」夫「たきちゃんは悪くない。だから、俺が悪いって」多喜子「寝たと聞いて、傷つかんが、馬鹿にしてる?」

嫉妬して欲しい気持ち、とてもよく分かる。

多喜子さんは金切り声の演技が続くので、連日の講演大変そう……と思った。

最後の方は荒井由実の音楽。全体的に、音楽も主張している演劇だと感じた。

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