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歩いて帰ろう

FF7リメイクが発売されることになった。

私の中でも神様のような作品だけど、きっと世の中には同じように思っている人がたくさんいるのだと思う。発売が決まってからの数年は、メンタルが小6くらいになっていた。まさに指折り数えて待ち望んでいたことだった。

SFC全盛期からPSに移行するくらいの時期に小学生だったので、とても質の良い作品をたくさんプレイする事ができたと思う。

ついでに競馬ブームが過熱していた時期と重なった事もあり、私はゲームで競馬を覚えたと言っても過言でないくらいだ。

いつの時代もママ達はゲームが原因で怒ったり、気を揉んだりしているけれど、それが将来の仕事になるのだから、ゲームだって捨てたもんじゃない。

「FF7がリメイクされたら仕事を辞める」

なんて事を15年間言い続けてきた。
周りの人はみんな冗談だと思っていたみたいだし、本当にバカみたいだけど、この数年間で着々と準備を進めてきた。

結論から言うと、仕事は辞めない。
ただ、仕事や収入を減らしてでも、FF7という作品と向き合う時間を作ろうと思う。


やっぱり特別だから。



14年前、家族と絶縁状態で貧困と言っていいほどの毎日を送っていた。夢を叶える為に勘当されたのだから、絶対に叶えなくてはいけないと思っていたし、男性社会の中で軽く男性不振になったりもした。若かったから耐えられたけど、今だったら無理かもしれない。兎にも角にも、あまり幸せではない時期だった。

そんな時期に、たまたまゲーム業界やホビー業界で仕事をする事があった。その際、大変お世話になったスクウェア・エニックスの社員さんと、これまたご縁があってその後何年も交流が続くことになった。その間も同じように仕事を続けていたので「いつかまた一緒に仕事をしたいね」などと、呑気に話していたのを覚えている。

向こうの希望もあり、当時の私にとって、唯一、敬語を使わずに話せる大人だった。

彼とは仕事に対しての価値観が、とても良く合った。

東京に来てから初めてオープンカーに乗せてくれて、対人恐怖になりかけていた私に良い英会話の先生を紹介してくれたり、当時、初台にあったスクエニショップに連れて行ってくれたりもした。

2人で食事をする事もあったが、親子ほど年齢差があった事もあり、そこに恋愛感情が生まれる事も、男女関係になることもなかった。
密室で2人きりになることも一度もなく、カラオケに行きたい時は、必ず会社の人や取引先の人を呼んでくれた。


「この子、歌がめちゃめちゃ上手いんだよ。」

と私のことを紹介してくれた。
それから少しずつ仕事が増えて、ラジオやテレビに出たり、雑誌に載せてもらったりもした。


ある日、唐突に彼は会社を辞めた。
22年もゲーム業界にいたのに、もったいない!って、少しだけ淋しくなった。
同じ英会話教室に通いながら「今度は外資系の企業に勤めたいから…」なんて言ってたけど、それからあっという間にアメリカのゲーム制作会社の日本支部を立ち上げてしまった。
「まぁ、あんなにゲームが大好きな人が違う仕事に就くわけないよね。」と呆れながらも、私はとても嬉しかった。

社長に就任して、わずか3年後。
彼は若くして死んでしまった。
末期癌で闘病の末に、あっけなく逝った。

告別式で、彼に娘さんがいる事を知った。
ずっと独り身だと言っていたし、過去の結婚歴の事は聞いた事がなかった。
私は彼と一緒にいて、一度も恐怖を感じた事がない。
いつだって親切で、すごく気を使ってくれていたのだと思う。
娘さんにできなかった事を私にしてくれていたのだと思ったら、涙が止まらなくなった。

遺品から、私の出演した番組を録画したDVDや掲載された雑誌が出てきた。
もっと嬉しい報告をたくさんしたかった。
また一緒に仕事がしたかった。

私は彼にたくさんのものを貰ったけれど、私は一体何を返せていたのだろうか。
答えは今もわからないままだ。


「FF7がリメイクされたら、仕事を辞めるね」

そんな話をした時、彼は「出したら世界中で売れるからね!スクエニの最終兵器だよ!!」なんて笑った。「だから当分、仕事は辞められないね」って話したのを覚えている。

あれから何年もの月日が流れ、もうあと僅かで最終兵器のお目見えとなる。

生きていたらきっと、ああでもないこうでもないと言いながらプレイしていたはずだ。なんなら文句のひとつもつけていたかもしれない(発売日の延期に関しては絶対に怒ったと思うw)

奇しくもFF7リメイクの発売と同時に、非常事態宣言が発令され、私は心置きなくゲームに没頭できることになった。そして彼の死ともゆっくり向き合える時間ができた。
素晴らしい作品を大切に堪能したいと思う。





年の離れた友人へ


あなたがいつも言っていた「ゲームは世界中の人を幸せにする」という言葉の意味を、ずっと考えていました。

何となくですが、もうすぐわかるような気がしています。

私は英語どころか今はフランス語まで喋れるようになりましたよ。

日本のゲームはもはや世界に誇れる文化の1つですし、世界中の人にFF7リメイクの感想を聞いて送るので、そっちでも参考にしてください。

みんな元気にしています。

またいつかみんなでゲームをしようね。


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