腸内細菌小噺_005 〜そりゃ人それぞれだぜょ…の論文〜
これまで日本の腸内細菌研究を取り上げてきましたが、
ちょっと離れて、スウェーデンです。
Trevligt att träffas ! (よろしく…らしいです。)
腸内細菌研究の歴史の勉強って感じね!
これまで私もさんざん、腸内細菌は人それぞれだよ!
だから「◯◯すると良いよ」を鵜呑みにしてはダメ!効果は得られるかわからないからね!と何度も言ってきました。
その「人それぞれだよ」を明確に示した研究がこの論文になります。
2015年、第二次腸内環境研究の幕開けだと勝手に思っています。
第一次は、2006年 J. ゴードンですかね(余談)
ということで、ハイライトをざっくり日本語にします。
✅ プレボテラ/バクテロイデスは大麦摂取による有益な効果に関係する
✅ 大麦を食べて高い効果が得られる人は腸内にプレボテラが多い
✅ プレボテラはバクテロイデスが引き起こしている耐糖能障害から守る
✅ マウスの実験でプレボテラが肝臓のグリコーゲン貯蔵を促進したよ
はくばくさんのサイトにも取り上げられていますが、もうちょっとわかりやすくしたいですね…。(Summaryの和訳っぽい)
セカンドミール効果って聞いたことある?
大麦を食べると、次の食事の血糖値上昇を抑えることができるとまことしやかに囁かれていました。
あ、ご飯を食べると消化吸収によって血液中のグルコース濃度が上昇します。通常は一時的な上昇ですが、2型糖尿病になるとずーっと下がらない状態になってしまいます。血が甘くなっています。甘い状態が長く続くと、全身の至るところが甘くなってしまい、飴人間になっちゃう…というと適当過ぎますが、ここではそれくらいで勘弁してくださいね。
基本的には、血糖値は高すぎないことが望ましいです。インスリンの効果が薄れてしまうので、なるべく上がりにくい食べ方が推奨されます。サラダから先に食べよう!とかは、まさに血糖値の急上昇を避ける効果があり、推奨されていますね。
そんな噂があったものだから、各大麦輸入商社なんかはさ、大麦食べると健康だよ!とやんややんやと盛り上げました。大麦生活公式サイトにあるInger M E Björckらの2008年の論文を引用しています。
このデータをまだ載せているのもどうかと思いますが、そこは目をつぶりましょうか😅
Inger M E Björckらは2008年にセカンドミール効果ってあるんよー!と、反響も大きかった。でも、実は全員には起こらないこと、多分知ってたと思うんですよ。7年かけて、その原因を突き止めちゃったんですよ。しれーっとしててもいいのに、ちゃんとそこに向き合う彼らは偉い!!(何様😅)
効果の個人差には腸内細菌が関係していた!!
さぁ、ハイライトに戻りましょう。
大麦を食べてセカンドミール効果を得られる人の特徴として、プレボテラという菌が多く関係していることがわかります。
プレボテラ(Prevotella):
まず、名前がかわいくない?プリボテラって呼ぶ人もいます。
プリッとボテッとしてそう。
ベジタリアンなどに多い菌で、食物繊維を好みます。日本人のデータでは、およそ3割くらいの人で腸内にプレボテラがいます。比較的、田舎だったり高齢の方に多い印象。腸内細菌の殆どがプレボテラの人もいます。その人にヒアリングすると、やっぱりお米が好きだったり、きのこが好きだという印象がありますね。だた、幼少期に大きな決定因子があるようで、まだまだわからないところが多いですね。
プレボテラとこの論文を知っていたら腸内細菌マニア中級あげちゃいます。
更にこの論文では、プレボテラの更に細かい分類(種レベルの解析)や、プレボテラの代謝物質「コハク酸」と肝臓グリコーゲン生成調整といったメカニズムまで深堀りしています。興味がある方は全文へ(私が言いたいのはそこじゃないので)
まとめ:大事なことを2つ
✅ プレボテラ=善玉菌ではない
✅ 下手すると臨床試験で意図的に高い効果が出せる
1つ目、プレボテラが居ると言いわけではない。
居ればいいってもんでもない。
なので、居ないからと言って嘆くことはない。
2つ目は、悪い使い方(考え方)です。
意図的に効果が高い人をリクルートして研究をすることができます。
(効果が高い人を多く集めたから)多くの人で効果が見られました!
現在のヒト臨床試験は完全にランダマイズ(無作為に抽出して)、効果がみんなに出ることが求められている。
…まてまて、そもそもそれが間違っているのです!
「みんなに効果があることを求めている」それ自体から脱却するべきです!
すでに2015年に、人それぞれ効果が違うし、それは腸内細菌の影響だったって報告されているにも関わらず…。いつになったらわかる!?人それぞれ違うってわかってて行う臨床試験って何だ…?
人によっては、奇跡の食品だってある。
みんなには効果がなくても、俺には効果がある!そういうものだってある。
みんな?誰だよ!?
売れないバンドのような気分になってきた…。
売れてなくても俺にとっては心の支えだ!辞めないでほしい!
まずは、トクホや機能性表示食品の制度・ルール・考え方から見直さなければならないかもしれませんねぇ…。
効果が高い人の特徴を知って、自分はその特徴に当てはまるから、大麦を食べてセカンドミール効果を効果的に得よう!
さぁ、そういう世界はいつやってくるのやら…。
今回は、腸内細菌研究の歴史的、そして現在の臨床研究、日本国内の制度の遅れについて言及してしまいました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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