「どこにでも違う自分がいる」

ようやく、コロナも落ち着いてきた。飲食店の時短営業も解除されたということで久しぶりに22時のCoCo壱に行ってきた。22時の家系ラーメン、22時のお好み焼き屋、22時の焼肉屋。22時頃から食べる晩御飯が一番美味いことはみんなの共通認識だろう。

なんで、22時からの晩御飯がこんなに美味いのか。それはやっぱり、昔の思い出からだろう。小さい頃、母親が帰ってくるのが遅くて「もう、今日は外で食べよっか」と車で22時の王将に連れてってもらった。東京にあるような綺麗な王将じゃなくて、床ヌメヌメ、店員さんが全員眉毛全剃りでプーマのジャージ(プージャ)を履いてる餃子の王将今津店。そこのカウンターで母さんと食べるチャーハンが最高に嬉しかった。美味しかったんじゃないよ、嬉しかった。なんでかなと考えてみると、やっぱり大人になれた気がして嬉しかったんだろう。そんなことを22時のCoCo壱にいる親子を見ながら思い出していた。

僕が大人になれた気がした瞬間がもう一つある。それは大学生のときに日本中を旅をしたことだ。青春18きっぷというJR線の普通列車が乗り降り放題の切符でお金のかからない旅をしていた。というかお金がなかった。今もめちゃくちゃないけど。

青春18きっぷの一番の魅力。それは普段、その街で生活している人たちが乗っている列車に乗れるということだ。観光旅行するときにわざわざ、鈍行列車に乗って、観光地でもない普通に人が住んでいるところには降りないだろう。ただ、青春18きっぷは乗り換え時間が異常に長かったりすることがあるので全然知らない街に降り立つことができる。それが本当に面白いのだ。

高校生や主婦、サラリーマンなどその街で生きている人たちがいる空間にいると、全然知らない街なのに、その街の集団に属している気分がして、すごく心地が良くなる。駅前ローカルスーパーのフードコートでその街の高校生の集団と隣でらーめんとか食べたりした。なんか、そのときに自分がその街でまるで生きている感じがした。

普段の集団とはまったく違う集団で生きる自分がいることで、自分の現状のなにもかもをそのときは忘れられていた。今でも俯瞰で見えていた、自分がいる、その光景が忘れられない。だから、僕は今日もいろんな街の路線図を見て、いろんな街で生きている、違う自分を想像している。田舎の郵便局に就職をして、結婚して、子供が出来て、ローカルスーパーでお惣菜を選んで。そんな大人になった人生を想像している。普通に現実逃避と言われればそうだろう。

東京都杉並区。今、僕はここにいる。現実逃避する時点でもう大人になれてないかもしれない。そんなことからも現実逃避する。みなさん、旅に出てください。僕ももうすぐ旅に出よう。違う自分が大人になってくれるからね。

くるり/ばらの花



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