セールスフォースのシニアマネージャーの反LGBTQ講座など副業に関する公開質問状
筆者は4月25日個人リンクトインおよびnoteで、アメリカ系IT大手・セールスフォースの日本法人、株式会社セールスフォース・ジャパンの危機管理部門の個人情報担当シニアマネージャーM氏の「LGBTQ運動を調査」と称してのヘイトを公言するオンライン講座「『LGBTQ』の黒幕 -21世紀の新たな支配構造-」について伝えた。
【独自調査】LGBTQ平等うたう巨大企業で社員活動が監視されている?ヘイト公言マネージャーに会社は「当社の見解や賛意ではない」
セールスフォース広報はM氏のオンライン講座を紹介したビデオ動画について、「ビデオで述べられている立場や発言は当社の見解や賛意ではありません。」と回答していた。
筆者が記事を公開した後の5月2日、このビデオ動画が一般からのアクセスが遮断され、閲覧できなくなっていた。また、M氏の個人サイトも、4月26日に一般からのアクセスが一部遮断されて閲覧できなくなっていた。
筆者はM氏の活動について、さらなる調査を重ねた。5月1日、筆者は株式会社セールスフォース・ジャパンに、以下の質問状を送った。
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件名:Mシニアマネージャー(注・原文では実名)の営利を得る副業について
株式会社セールスフォース・ジャパン
広報担当者様
ジャーナリストの長谷川です。
私は先週、御社の危機管理部門の個人情報担当シニアマネージャーのM氏の「LGBTQ運動を調査」と称してのヘイトを公言するオンライン講座について質問しました。その時に御社広報担当者から「御社の見解や賛意ではない」という回答が来ました。
果たしてそうなのか、と疑問があり、質問を送ります。
M氏のオンライン講座はダイレクト出版が運営するダイレクトアカデミーのコンテンツとして販売されています。前回指摘した動画は、一部を無料で紹介したものですが、正式版は税込で2万9800円と高額です。M氏はダイレクトアカデミーでほかにも高額のオンライン講座を複数販売し、利益を得ています。私は、M氏の副業の実態について調査しました。
XやインスタグラムといったSNS、誰でもアクセス可能なオープンソースから、色々な事実が出てきました。また、M氏の個人サイト(私がリンクトインで記事を公開した翌日の4月26日に、一般からのアクセスが一部遮断されていました)や、M氏が代表取締役を務めるアルファ・リード株式会社の公式サイト(こちらも4月26日にアクセス遮断)からもいくつかの事実が出てきました。
その結果をメールに添付しました。画像2枚に分けたエクセルから、二つの流れに気づきました。
第一に、参政党関連です。M氏が講師を務めた「イシキカイカク大学」は、現在の参政党党首の神谷宗幣氏が深く関わっている事業です。また、ライブ配信に複数回出演していた松田学氏は、神谷氏の前の参政党の代表でした。そして、M氏が講演を行った大経連(やまと経営者連盟)で同席した赤尾由美氏は、過去に参政党の共同代表を務めていました。M氏はこういったつながりを通じて、参政党の資金集めパーティに呼ばれるのをはじめ、和歌山、石川、沖縄など全国で行われる参政党主催の講演会で登壇していました。
これを、ただ表面上のつながりと言うことはできません。M氏の考え方は参政党と非常に近いです。参政党はLGBT理解増進法に反対し、トランスジェンダーへの誤った認識などを広げています。
参政党がLGBT理解増進法に反対する理由(参政党公式サイトの国政改革委員・政対策委員ブログより)
ここで述べられている考え方、つまり「女性と自認する男性が女子更衣室や女子シャワー室、女子トイレに堂々と入ってくるのを、女性は受け入れなければならなくなって」という主張は、M氏の動画「LGBTQの黒幕」の主張と酷似しています。M氏が単に危機管理アドバイザーとして参政党に関わっていたのではなく、それ以上に参政党の広告塔的な役割を果たしていたのではないかという疑問が生じてきます。
第二に、M氏の個人事業です。M氏は危機管理コンサルタント会社として、アルファ・リード株式会社を2013年に設立しています。設立後、SNSでは10年以上、目立った動きは見られませんでした。しかし、参政党に関わるようになって以降、大きな変化が生じていました。2023年3月に子会社の「アテナ・ディフェンス」を設立。2023年10月11月には、個人の公式サイトと「戦時情報局」というサイトを立ち上げましたが、その運営会社はM氏が代表取締役を務めるアルファ・リード社。アルファ・リード社は現在、靖国神社にほど近い千代田区九段に事務所を構えています。都内の一等地です。M氏はセールスフォースではシニアマネージャーとして勤務しているので、他の社員とも比較して、おそらく年収1500万円以上と推定されます。しかし年収1500万円は、一等地に事務所を構えられるほどではないでしょう。
M氏は果たして、その収入をどこから得ていたのでしょうか。もし参政党の政治資金であれば、本業はむしろフリーの危機管理コンサルタントで、セールスフォースに勤務することの方がM氏にとってはもはや副業だったのではないか、という疑問が生じます。
M氏は、自身がセールスフォースの社員であることは、LinkedIn以外のプロフィールでは公にしていません。しかし、M氏の名前をグーグルで検索すれば、危機管理コンサルタントとして自身の写真を含めてヒットします。なお、M氏のセールスフォースでの名前は「○○○○(注・原文では実名と1字違う名前)」、フリーの危機管理コンサルタントとしての名前は「○○○○(注・原文では実名)」でした。
以上のことから、M氏は、危機管理コンサルタントとしての副業を会社に知られてはまずいとは考えていなかったように見えます。言い換えれば、会社や上司のI氏(注・原文では実名)、人事本部長、人事部ER部門も、M氏の行為を黙認していたのではないかという疑問が生じてきます。そうでなければ、ここまでオープンに活動することは不可能だったでしょう。
セールスフォースの社内外で公開された行動規範では、営利を得る副業に関して厳しい規定があります。にもかかわらず、M氏がなぜここまで公に“副業”を行うことができたのでしょうか。調査のうえ、ご回答よろしくお願いします。
長谷川祐子
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セールスフォースのグローバルのホームページに公開されている、Salesforce Code of Conduct(セールスフォース行動規範)には、こう規定されている。
以下、筆者訳
社外の仕事
・セールスフォースの従業員は、当社の業務に全力を注ぐことが求められています。副業や利益が生じる個人的なビジネス活動に携わる場合は、法務部に報告しなければなりません。非営利活動については、地域社会に感謝の気持ちを示すというセールスフォースのコミットメントと合致することから、携わることが奨励されています。
・営利活動に関わることについては、営利企業の取締役会やアドバイザリー・ボードへの参加を含め、社外活動で個人的に報酬を得ない場合であっても、直属の上司と社外活動委員会の承認を得る必要があります。許可される営利活動はきわめて限られています。
・非営利活動に関わることで当社の間で利益相反が生じる、もしくは生じる可能性がある場合は、直属の上司の承認を得る必要があります。非営利組織の役員への就任を依頼された場合も、直属の上司と社外活動委員会の承認を得る必要があります。
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