「直感」文学 *春の唄*
マドカはこの時季になると、決まって同じ唄を口ずさんだ。
「また?って顔してるね」
僕が見つめていたことに気付くと、そう言って一度笑ってから、またその続きを唄った。
「どうしてその唄なんだ?……っていうか、そんな唄聞いたことないよ」
僕がそう問いかけても、マドカはその唄を口ずさみながら、僕の顔をチラッと見やるだけだった。
気候は次第に緩やかになり、もうほんの少しだけ春が顔を出しているみたいだ。
彼女のその口ずさむ唄が、僕に春の訪れを感じさせる。
それがもう、20年も続いているのだ。
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