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「直感」文学 *最後の日*

 暗がりの中に灯る豆電球の辺りに、埃はゆらゆらと舞っていた。

 「終わりが近いのかもしれないな」

 トオルはそう言って、僕の顔を見た。

 「まさか、最後の日にお前と会ってるとは思わなかったよ」

 そう言葉を続けてから、大きなため息を一つ吐いた。

 僕だって、お前と一緒にいるなんて夢にも思わなかったし、なぜこうなってしまったのかと少し苛立ちだって覚えるくらいだ。

 〝隕石墜落まで、あと一時間〟

 テレビにはそう映し出され、どのチャンネルを回しても隕石の映像がいろんな角度から楽しめるだけで、面白みがなかった。

 「それにしても、あまりにも急だよな。普通さ、あと五日とかにして欲しいってもんだよ。いくら地球の終わりが近いって生まれた時から知らされていたとしてもさ、実際に終わる時の知らせが突然なんて、そんなのナシだと思うんだ。それに分かってたらお前となんていなかった訳だし」

 トオルは文句を垂れるばかりで、あとはテレビに見入っているだけだ。

 僕だって同じことを言ってやろうと思ったけど、口まで出掛かってそれを呑み込んだ。

 何を言おうと、地球が終わることに変わりはないのだ。

 今僕が何を言おうと、僕たちはなくなってしまうのだ。何が何であれ、意味のないことだ。

 「なあ、トオル」

 僕はテレビに見入ってるトオルに声を掛け、彼は僕の方に顔を向けた。

 「なんつかーさ、お前と子供ん時から付き合えて楽しかったよ。まあ僕が言えるのなんてそれくらいなもんだけどな」

 トオルは眉間に皺を寄せ、テレビに視線を戻してから「やめろよ。バカみてーだろ」と言った。

 地球はもう終わる。

 僕たちに出来るのは、ただその姿を見届けてやることだけなのだ。

#小説

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