日ハムを追放された面白助っ人外国人がMLB最高勝率チームの救世主になった件 ~今更帰ってこいと言われてももう遅い
「マイケル・トンキン」
この名前にピンと来る野球ファンは多々いらっしゃると思います。
圧倒的な成績を引っ提げてMLBへ復帰したクリス・マーティンの後釜として2年契約で日本ハムへ入団するも、1年でクビになり、弄りやすい名前や印象的な面白大炎上も相まって今なお面白ネタ外国人として語り継がれるあの男です。
私も当時は指をさしてゲラゲラ笑ってたタチなので、昨年ブレーブス傘下AAAグウィネットで彼の名を見たときは思わず目を疑いました。
そんな私ですが、今ではTLのブレーブスファン共々トンキン様のご活躍に感謝を述べる日々。不思議ですよね。
今回はいちアトランタ・ブレーブスファンとしてマイケル・トンキン様の素晴らしさを啓蒙したく筆をとった次第です。
難しい話は一切しないので、「ああ、頑張ってるんだな」って感じで肩の力を抜いてお読みいただければと。
成績
正直言って成績や数字に現れづらい部分の貢献が大きいので野暮でしかない気がするのですが、一応掲載しておきます。
地区優勝の決まった終盤は毎日のように炎上してたので多少見栄えに傷がついてしまいましたが、そんなの些細なことです。
イメージがつきやすいようにまとめただけで、そんなに深掘りはしません。先ほども言った通り、成績で測れない価値が今年のトンキンにはあるからです。
2023年ブレーブスの投手事情
ようやっとったリリーフ陣
開幕に出遅れはしたものの、クローザーにはお馴染みライセル・イグレシアス。
セットアッパーを務めていたニック・アンダーソンが前半で離脱するも、実績十分のA.J.ミンター、ジョー・ヒメネス、カービィ・イェーツが勝ちパターンを担い、夏場にはトレードで阪神でも活躍したピアース・ジョンソンを加え、そこそこそれなりのブルペンを形成しています。
その中でトンキンの立ち位置は「モップアップ・ロングリリーフ」。
似たようなポジションを担うコリン・マクヒューやディラン・リー、ジェシー・チャベスといった名脇役リリーバーが続々と離脱するなか、トンキンは年間通して大きな離脱なく役割を全うしてくれました。
安定[※要出典]した勝ちパターンを組んでドカドカ勝ちまくってる球団のファンがなんで敗戦処理を過度に礼賛・神格化しているんだ...と思われるかもしれません。
その答えは、今年の先発事情にあります。
年間通して苦しかった先発事情
昨年21勝を挙げたカイル・ライトが怪我で開幕アウト。
4月半ばに戦列復帰するも、らしくない投球を続けてILにとんぼ返り。
開幕投手を務めたエースのマックス・フリードが、開幕戦で3.1回を投げたところで降板し即IL入り。
結局5月末までに5登板しかできず、本格的に復帰したのは8月頭でした。
最多勝投手&エースというローテの柱2本を欠く苦しいスタート。
代役として上げた若手は燃やされ、基本的にストライダー、モートン、エルダーの3人以外が投げる日は分の悪いガチャ。
先発はイニングを満足に稼げない上に、あまりにも人手が足りず週に複数日ブルペンデーなんてこともあり、中盤まではとにかく運用に苦しむシーズンでした。
お察しいただけましたでしょうか。そうです。ここで救世主トンキン様ですよ。
象徴的な活躍の例
ここで、トンキン様を過度に礼賛・神格化するに至った象徴的な試合をご紹介します。
日付は全て現地時間です。
・負け試合を立て直す! 4/11 vsシンシナティ・レッズ
1点リードで迎えた3回表、カイル・ライトが2つの押し出し含む4四死球3被安打4失点で手の施しようのない火だるまになって降板します。
しかし、回が浅いのが幸運でした。
3回時点で3点のビハインドであれば容易にひっくり返せる打線がバックにいます。
ここで重要なのが、「点差を広げられないこと・先発が投げるはずだったイニングを可能な限り軽い負担で埋め合わせること」です。
そのあとに失点を許せばただの一方的な負け試合ですし、投げるピッチャーが増えるとそれだけブルペン運用の負担や歪みの原因になりますからね。
後を継いで4回から登板したトンキンは、危なげなく3イニングを投げ抜き、被安打1無四球無失点。
素晴らしい投球の裏で、打線は目論見通り5点を奪って逆転しています。
そのあとが若干怪しかったものの勝ち投手にもなり、完全に試合の流れを変えて見せました。
・ブルペンを守る好投! 7/5 vsクリーブランド・ガーディアンズ
暴力じみた打線はこの日も絶好調。
初回から5安打4得点と快調に飛ばし、早くも楽勝ムードが漂います。
しかし先発のマイケル・ソロカは、失点こそしなかったものの毎回ランナーを複数人出す不安定な投球。
結局4.2回までで99球を要し、ランナーを二人残した状態でトンキンにスイッチすることになります。
5回ウラ時点で5点差をつけていましたが、前日に勝ちパターンを総動員しながらサヨナラ負けを喫していたので、実際のところ点差ほどの余裕はありません。
勝ちパを守るためにも、点差を詰められず、なおかつ長いイニングを消化することが理想です。
結果は3.1回 40球 被安打1 無四球 無失点
打線もこの間に3点を加え、余裕を持って逃げ切ることに成功。
8回までスムーズに投げ切り、とにかく「勝ちパを引っ張り出させないこと」が要求される登板で、見事期待に応えてみせました。
・延長もお任せあれ! 5/7 vsボルティモア・オリオールズ
好プレーに助けられながらも延長11回12回を危なげなく乗り越え、サヨナラ勝ちを呼び込んでいます。
もうワケがわからん。その辺の勝ちパ以上に貢献してもうてます。シンプルに神とさせてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
先発不足&ローテの穴埋めが全員燃える苦境にあったチームがそれを感じさせない勢いで勝ちまくっていた裏には、間違いなく彼の存在がありました。
投手の勝敗数の価値が軽くなっていく潮流に逆らってあえて触れさせていただくのですが、基本的に不利な状況で登板する役割のピッチャーが7勝も挙げているのって結構凄いことだと思うんです。
そりゃあれだけ打線が強ければそういうこともあるかもしれませんが、それだけ「トンキンが立て直した/壊さなかったから勝てた試合」があったってことですしね。
出遅れ含めてそこそこの離脱が発生した今年のブレーブス投手陣ですが、正直言ってトンキンがいないとブルペンはもっと苦しいことになっていたはずだと思います。
救世主トンキン様に感謝です。
そうだ、最後に1つ。
・番外編:まだやり残したことがあるだろ? 10/1 vsワシントン・ナショナルズ
早々に地区優勝を決めたブレーブスは、個人のマイルストーンに焦点が当たる消化試合を過ごしていました。
偉大なるMVPによる40-70の他にも、オルソンによってHR&打点、ストライダーによって奪三振、アクーニャによって盗塁&得点と、数々のフランチャイズレコードが更新される歴史的なシーズンとなりました。
しかし、最後の最後にもう1つだけ達成を間近に控える記録が残っています。
それが「チームのホームラン数記録」
シーズン最終戦試合前時点で305HRを放っており、2019年にミネソタ・ツインズが記録した307本まで残り2。
そんな中で迎えたラストゲーム、1本しかHRが出ないまま8-7と1点リードで9回表を迎えてしまいます。
普段であればクローザーのイグレシアスが〆る場面ですが、消化試合ということもありここで登場するは漢トンキン。
ここまでのチーム本塁打数は306本。歴代2位の記録のまま試合が終わってしまう。誰もがそう思っていたことでしょう。
しかしトンキンは、これまで紹介した好投が嘘のようにあれよあれよと3点を奪われ、スコアは10-8となります。
本当なら存在しなかった9回裏を作り出し、「あと1本。いや、塗り替える分も含めて2本打って来い」とメッセージを伝えてくれました。
そうなると打線はこのアツいメッセージに応えない訳にはいきません。
マーセル・オズーナがこの日2本目、チームとして307本目となる40号ソロを放ち、歴代トップ記録に並ぶことができました。
惜しくも更新とはなりませんでしたが、トンキンがやらかさなければ並ぶことすら叶わなかった記録です。
自らが負け投手になりながらも、最後のチャンスを繋いでくれたのです。
サンキュートンキン フォーエバートンキン