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初心者ドライバーと白いヴィッツの話

僕がまだ中学生だった頃、父が車を乗り換えた。2代目の水色のヴィッツだったのが、3代目初期型の白のヴィッツ(RS)になった。最初は「ヴィッツのスポーツタイプって、変なクルマ買ったなぁ…」としか思っていなかったが、目が慣れてくる頃にはなかなかカッコいい車だなと思っていた。

メインカーではなく父の単なる趣味的な車だったので家族で出かけるような時は出番はなかったが、ちょっとした買い物や塾への送り迎えではよく乗せてもらっていた。

その後僕は高校を卒業すると同時に、春休みの時間を活用して教習所に通った。そして大学入学前には、小さい頃からの念願だった自動車の運転免許をようやく取得することができた。

免許の発行をしてもらった後の帰り、本免試験場には父がいつもの白いヴィッツで迎えに来てくれた。帰りの道中でコンビニに寄り、そこで運転を代わることになった。ついに初めて、公道で教習車以外の車に乗ったのだ。

初心者マークをヴィッツの前後に貼り、運転席へ乗り込む。今まで何年も見てきた車だが、運転席からの眺めは初めてで新鮮な感じがした。父親は初めてにしては上手だと褒めてくれたが、多分その時の自分の運転はぎこちなかったのではないかと思う。

ちょうど僕が教習所に通っている頃、父は新型のスイフトスポーツを買っていた。本当はヴィッツから乗り換えるはずだったらしいのだが、僕は無理を言ってなんとかそのまま置いておいてくれないかと頼んだ。どうしてもこの車に乗ってみたかったというのもあるし、馴染み深い車をもう手放してしまうのが少し寂しかった。

無理な頼みだったかもしれないが、父は「初心者には乗りやすくて丁度いい車だ」と言って快諾してくれた。それからは最終的に僕が自分の車を買うまでの1年半ほど、この白いヴィッツには改めてお世話になった。家族や友達を乗せ、色々な場所へ走った。

ヴィッツRS Cパッケージ。1.5L NA 100馬力。モデリスタのフルエアロと社外ホイールを装着している。パワーは程々だが、どんな道でもキビキビ動いてくれる、父の言う通り乗りやすい車だったと思う。

免許を取得し1年半が経った今年10月に、僕は前からずっと欲しかったZZTセリカを買った。(それはまた別の話ということで…)

これをキッカケに、我が家はついにこの白いヴィッツを手放すことにした。僕が下宿先にいる間にそれが決定したので、ヴィッツを見送ることは叶わなかった。

最後にあの車に乗ってからもうしばらく経つが、本当に良い車だったと今でも思う。まだ初心者ドライバーだった僕の最初のパートナーがあの車で良かった。

お別れは寂しいけど、それは今後出会っていくであろう車にも必ず訪れる出来事。人は一生のうち、どれだけの車と出会い、そして別れを繰り返すのだろうか。その一つ一つの出会いを大切にし、これからもパートナーとなるような車を見つけていけたらいいと思う。今後どんな車との出会いがあるか、とても楽しみである!

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