ゲイン・ロス効果、負の側面

ツンデレ

最初は、ツンツン冷たい態度だった人が、やがて心開いて優しい言葉をかけてくれる。
そうすると、なんだかドキッとしてしまいますよね♪

人は、ギャップに弱い一面があります。

心理学では、これを「ゲイン・ロス効果」と言います。
ゲイン・ロス効果は厳密に言うと、ゲイン効果とロス効果に分かれています。

ゲイン効果というのは、マイナスだった心理状態がプラスに変換されたときに、よろこびの度合いが、ゼロからプラスに転じた場合よりも大きく感じられるというものです。
つまり、ツンデレのように冷たかった人がちょっとでも優しく接してくれたら、普段から優しい人の優しさよりも何倍もうれしく感じてしまうということですね。

逆に、ロス効果というのは、プラスの心理状態がマイナスに転じた場合、
ネガティブな感情が、ゼロからマイナスに転じた時よりも大きく感じられるということ。
恋人が浮気していたと知ったときに感じるショックは、恋人への愛情が大きかった分だけす大きく感じてしまうようなものです。

つまり、感情の振り幅が大きい分だけ、心に与える影響が大きくなるという心理現象をゲイン・ロス現象と言うんですね。

犯罪と自殺

このゲイン・ロス効果。
マイナスからプラスに転じれば良い結果になるのですが、問題はプラスからマイナスに転じてしまった場合、事件に発展しかねない事態に陥ります。


例えば自殺。
自殺者がなぜ自殺に至ったのかを書いたストーリーを見てみると、自殺前に良いことがあった場合が見受けられます。

2012年に起こった桜宮高校バスケ部員の自殺事件もそうでした。
大阪の桜宮高校のバスケ部のキャプテンが、顧問による体罰が原因で自殺してしまったという事件です。
事件前から体罰は日常的に行われていました。
ただ、そんなある日、ジョン・パトリックという有名なコーチによるレッスンに参加できました。
それをバネにもう一度バスケを頑張ろうと思ったのですが、再び顧問による暴力を受けて、残念ながら自ら命を絶ってしまいました。

これは個人的な憶測で科学的な根拠はないのですが、やはり自殺に至った経緯を見ると、有名なコーチにレッスンを受け、プラスに転じた心が、再びマイナスに転じた途端に命を絶っています。
ゲイン・ロス効果による心理的な影響があったのだと、僕は思います。

ここでは、ゲイン効果とロス効果の2つが働いていたため、余計に心理的な影響を及ぼしたのだと考えられます。
まず、日常的な暴力によってこの部員の心理状態はマイナスでした。
しかし、ここでレッスンが始まったため、プラスに転じます。
マイナスからプラスに転じるゲイン効果のため、このレッスンは普通の人よりも大きなよろこびに感じたのでしょう。
しかし、今度は暴力によってプラスからマイナスに転じてしまいました。
普通の状態よりもプラスに転じていたため、そこからのマイナスは、
恐らく普通の人が感じるより強く絶望を感じた可能性があります。

この振り幅が大きいほど心理的な影響が強いのがゲイン・ロス効果。
なので、いつもよりも絶望的な心情に至ってしまったと考えられます。
あくまでも、予想ですがこの心のアップダウンが引き金になったのかもしれません。

※誤解のないように補足しますが、ジョン・パトリックのレッスンはこの事件のきっかけではありません。
最終的なきっかけは顧問の暴力です。この暴力さえなければ、レッスンによって希望を取り戻せていたでしょう。

このように、ゲイン・ロスのロス効果というのは、時に悲惨な結果を招いてしまいます。

ストーカー事件も、ロス効果によるものだと考えられます。
好きだった人に対する期待が裏切られたとき、好きだった気持ちの分だけ恨みが増幅していきます。
被害者にしてみれば些細なことでも、相手はものすごい裏切りだと感じてしまいます。
これもロス効果ですね。
プラスへの振り幅が大きかった分だけ、ちょっとマイナスに傾いただけでもものすごいマイナスに感じてしまいます。
さらに厄介なのは、ストーカーが被害者に対してお金や時間、手間をかけていた場合です。
人は、お金や時間、手間をかけた分だけ、取り戻さなければ気が済みません。
ギャンブルに賭けたとき、せめて元を取り戻そうとしてどんどんハマってしまう心理と同じですね。
ただ元が取れない場合、代償を払わせようとする心理が働きます。
この心理に歯止めが利かなくなった時に、殺人事件や傷害事件に発展してしまうんですね。

これの恐ろしいところが、勝手に期待を抱いて勝手に裏切られたと感じて犯行に及ぶところです。
加害者は自分の中で勝手に妄想して期待をバンバン膨らましていきます。
そして、ちょっとでも期待外れなところを見てしまったとき、勝手に被害妄想を膨らませていきます。
非常に迷惑な話ですが、人には誰でも、多かれ少なかれこういう心理があるんですね。

期待しない人生

例えば、あなたの元に、「応募した懸賞に当選しました! 100万円が贈呈されます!」とかかってきたら大喜びですよね。
しかし後日、「申し訳ありません。当選者は別の人で、手違いであなたへ連絡してしまいました」と、電話がありました。
こんなことがあったら「ふざけるな!」と思いませんか?
100万円はまだもらっていないので、自分のものではありません。
でも、まるで100万円を奪われたように感じるのも、やはりロス効果によるものですね。
ここで書いたのはあくまでも、たとえ話なのでそこまでピンとこなかったかもしれません。
でも、実際にやられたらかなり頭に来るんじゃないでしょうか?

このように、勝手な妄想で期待を膨らませて、勝手に裏切られたと感じてしまうことは誰にでもあります。

では、ロス効果に振り回されないためにはどうすればいいのでしょうか?
答えは、期待しないことです!
期待するからこそ、ちょっとしたことで裏切られた気分になります。
でも、はじめから期待しなければ期待外れなことがあったとしても裏切られたとは思わないですね。
逆に、期待せずにダメだろうなと思っていた方が、良いことがあったときよろこびは倍に感じられます。
ゲイン効果のおかげですね。


マイナス思考では人生損すると思われがちですが、実はマイナス思考の方が傷つかないしよろこびも大きく感じられるんですね。
完全に期待を無くすことはできないかもしれませんが、根拠のない期待はなるべくやめた方がいいでしょう!

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