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中国が狙う技術覇権

企業乗っ取り

ノーテル・ネットワークスという企業は、カナダを代表する電気通信とデータネットワーキング機器を製造する多国籍メーカーでした。
しかし、2009年中国によるサイバー攻撃を機に、破綻へと追い込まれてしまいます。
この事件を伝えた、米情報サービス会社「Bloomberg(ブルームバーグ)」の記事を要約すると、事件の概要はこう。
カナダの安全情報局(CSIS)は1990年代後半からノーテルに対して中国のハッカー集団からの攻撃を警告をしていました。
しかし、ノーテルはそれを放置。
そのため、2004年、ノーテル最上級幹部のアカウントに侵入されてしまい、社内データが上海へ送信されてしまいます。
これが2009年まで続いてしまったため、同社は破綻にまで追い詰められてしまいました。
ハッキングの犯人は誰なのかは、ハッキリと分かっていません。
しかし、当時のシステムセキュリティー上級顧問でハッキングを調査したブライアン・シールズ氏によると、中国政府の関与が疑われるようです。
なぜなら、衰退するノーテルの前に現れたのが中国のファーウェイで、5Gテクノロジーの基盤を開発していたノーテル社員を約20人を引き抜いていました。
さらに、ファーウェイはノーテルに対し買収や支援を持ちかけています。(実現はしませんでしたが)
ファーウェイの後ろには、中国政府がいると推測されています。
なぜなら中国政府はファーウェイに750億ドル(約8兆2000億円)の支援をしていたようで、さらに米情報機関によると融資の上限も1000億ドルに設定されていると分析されています。
ノーテルから盗まれた情報がファーウェイに渡っているかどうかは不明ですが、人材はファーウェイに渡ってしまいました。
ファーウェイが5Gで世界でリードする企業になったのには、こういった経緯があるんですね。
こういった経緯で技術を手に入れ、技術競争や経済競争で有利な立場を築いているのです。
そして、こうした技術は単に文明の発展に使われるのではなく、デジタル監視システムを構築したり、軍備拡大にも用いられます。

スパイ企業ファーウェイ

そもそも、ファーウェイは、1987年に中国の最高指導者だった鄧小平が人民解放軍の軍事技術関係者に創業させた通信機器メーカーです。
創業者である任 正非(じん せいひ)も人民解放軍出身で、創業は彼の仲間であった元人民解放軍6人よって行われました。
2013年、当時CIA長官だったマイケル・ヘイデン氏は、米議会でファーウェイに対して「スパイ企業だ」と言ったのですが、それにはこういった背景があるからですね。
2019年7月にはブルームバーグによって、ファーウェイの複数の従業員が、中国人民軍当局者と協力して研究プロジェクトに取り組んできたことを調査によって明らかにしています。
記事によると、ファーウェイの従業員は、人工知能や無線通信など少なくとも10の分野の研究プロジェクトにて人民解放軍の様々な組織のメンバーとチームを組み、衛星画像と地理座標を収集・分析などの研究を行っていたようです。(ファーウェイは否定してますが)

シャープ買収

2016年、シャープは台湾企業「鴻海(ホンハイ)」に買収されました。
鴻海は台湾企業なのですが、中国政府から150億円相当の補助金を受けていて、さらに中国にある中国にある鴻海の工場には3万人以上の共産党員が働いているそうです。
鴻海は補助金の見返りとして人民解放軍に技術提供をしているというので、それが本当なら日本の技術が人民解放軍に利用されている可能性が高いですね。
また鴻海は、半導体メーカーである「東芝メモリ」の買収も狙っていました。
東芝メモリが欲しかった理由は、高精度レーダーの技術を手に入れるためです。
高精度レーダーは高速入出力でデータを処理しなければならず、そのためには高度なメモリ技術が不可欠でした。
そもそもなぜ、高精度レーダが必要かと言うとアメリカの戦闘機「F35」を模造した中国製戦闘機「J31」を製造するためでと言われています。
ただ、東芝メモリは結局、鴻海の手には渡らず、2017年9月、米ファンドのベインキャピタルを中心とする「日米韓連合」に売却され現在は「キオクシア」という社名になっています。
少し、話はズレますが、東芝の合弁相手であるアメリカ半導体大手「ウエスタンデジタル(WD)」はこの売却に反対しています。
なぜなら、ベインキャピタル経由で、WDの技術が日米韓連合に含まれる韓国のSKハイニックスに漏洩するのではないかという懸念からです。
現にSKハイニックスは東芝の元社員を引き抜く際に、その人物に東芝メモリの技術を盗ませていました。
2014年、元社員は「不正競争防止法(営業秘密の不正開示)の罪」で起訴されています。
この場合は韓国へ技術が流出していますが、どっちにしろ日本の技術が海外へ流れてしまったことには変わりません。(参考:日本のIT企業が中国に盗まれている

超限戦のため

このように日本の技術も中国から狙われています。
直接中国に奪われなくても、鴻海のように台湾経由で中国に流出してしまう可能性もある。
中国は時にサイバー攻撃を行い、ときに台湾など利用し、あの手この手で技術覇権を狙ってきます。
なぜそこまでして技術を手に入れたいのか?
もちろん、経済的な発展もありますが、それ以上に軍備を拡大することが狙いだと思われます。
これらの企業買収はただの経済活動じゃありません。
すでに戦争の一部だと考えられます。
中国では「超限戦」という戦争の概念があります。
超限戦とは1999年中国人民解放軍、政治部の大佐2名が発表した論文で、今後の新しい戦争について予測したものです。
「超限戦」を一言で言えば、「勝つためにはあらゆる手段を講じる」と言ったところでしょう。
あらゆる手段を具体的に言えば、国家間の戦闘行為を始め、国家テロ戦、外交戦、諜報戦、金融戦、ネットワーク戦(IT戦)、法律戦、心理戦、メディア戦などなど。それは25種類にも及びます。
そして、今回書いた技術覇権争いもこの中に入ると、考えられます。
買収によって企業を拡大していくのは金融戦になるし、半導体事業の拡大はネットワーク戦に有利になるし、それによって外交戦にも有利な展開に持ち込めます。
また、軍事利用されれば、実際の戦争にも活用されてしまう。
ただ、中国の超限戦的な考えはある意味正しく、世界では経済もメディアもスポーツさえ、戦争の武器になりうると認識されているのですが、日本では「経済は経済、戦争は戦争」という認識のままです。
経済戦争が本物の戦争に結び付くという想像が足りないんですね。
あらゆるものを戦争の道具として活用し、本気で世界の覇権を握ろうとしているのに、この調子じゃ気づいたときには全てを乗っ取られていそうです。
民間レベルから、そろそろ中国の脅威に警戒しなければ、数十年後には香港やウイグルのようになってしまうのかもしれません。
ただ、中国の侵略方法は、今回書いたように台湾企業を経由して企業買収を行うといった非常に分かりにくいものです。
さらに、以前「やさしい独裁」という記事にも書いたように、中国国内の統制方法はは「やさしく諭すような統制」です。
もしかすると日本への侵略も、「社会秩序の維持」という名目で、信用スコアなどを用いて道徳的に行われるのかもしれません。
それに従わないのなら暴力的な措置がなされるのかもしれませんが、従うのならやさしい独裁統治に組み込まれます。
もし、それに組み込まれたなら、相互監視によって互いに弱みを握り合うようになるので、なかなかそこから抜け出せないようになるでしょう。

僕は中国の日本への侵略は、始めのうちは香港やウイグルのように乱暴なものではないと考えています。
恐らく日本国民が気づかないレベルで進められ、いつの間にか中国企業に有利な法案が通り、目をそらした隙に尖閣諸島に中国人の村ができてしまう。
さらに沖縄の離島や、北海道などの観光地はリゾート開発という名目でバンバン土地が中国に渡り、電力網も通信網も、水道も含めて社会インフラが中国系企業のものになっていて、気付いたときには中国なしでは生活できなくなってしまうのかも。
(ちなみに、電力網に関してはアジアスーパーグリッドという計画があり、これは中国、韓国、日本をまたいだ送電網を敷き、自然エネルギーを相互に相互に活用できるという構想です。ただ、これは国土の広い中国に有利な設定で、電力の供給が中国に握られてしまうという懸念があります)

これからも日本が自立した国でいるためには、中国の細かい動きに目を光らせ、場合によってはNOを突き付ける覚悟が必要になるでしょう。
僕たち個人にできることは、中国製品や中国製アプリに気を付けたり、サイバー攻撃に気を付けたり、政治家の中国に対する発言に目を光らせるといたことくらいしかできませんが、そしたことをコツコツと積み重ねつつ平和と主権を守っていきましょう!

参考
日本のIT企業が中国に盗まれている」(深田萌絵)
Bloomberg「中国の攻撃でナンバーワン企業破綻か~」
Bloomberg「ファーウェイの一部従業員~
アジアスーパーグリッド

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