見出し画像

小さいおじさん〜その2〜


 

好物はジンジャエール



ギャンブラーという仕事を自信を持って続けていたある晩、小さなおじさんから連絡が来た。

「今日、近くまで行くんやけど飯行かへん?」

そんな連絡をもらって急に夜会うことになった。

その日も21時ごろまでパチンコ屋でのギャンブラーという仕事こなす。
換金した足で急いでご飯の待ち合わせ場所に向かう。

約束したお店に着くと、ジンジャエールをビールのようにクゥーーっと飲む小さいおじさんがいた。


小さいおじさん「おっ、来た来た。どうやった今日は?まぁもちろん勝ってるか!まぁ何食べたい?」

急な会話の始まりに「この店初めてでわかんないし、なんでもいいっすよ!」とだけ答える。


小さいおじさん「なんやそれ!なんでもいいなら適当に俺が頼むわ。それにしてもタフな仕事やってるよな。俺ならよーせぇへんわ。てか、できひん。ほんまに。あっ、ジンジャエールお代わり」

そう。小さいおじさんはお酒が強くないらしい。ほとんど飲めない。だからジンジャエールが死ぬほど好きなのだ。


メニューをパラパラめくりながらまた話し始める小さなおじさん。


小さいおじさん
「お前の仕事ってさ、ほんま特殊よな。しかも世間からしたらめちゃくちゃ楽というかグータラなイメージしかないよな。ロン毛でマスクで普段着スウェットやし、どこから見てもマイナスなんてマジ笑える」


そうなんですよ!本当に!って心のそこから思って大きくうなずいた。


小さいおじさん
「誰もお前が夜に必ず下見に行って、朝4時から並んで、開店までのその間も本やネットで勉強して、24時間スロットのこと考え続けてるなんて思わんて。絶対。それどころか、仕事もせんと時間とお金を浪費してる奴に見えるわな。そこに半端ない努力があるなんて思われないもんな。しかも声に出して言いにくい仕事やし。」


、、、本当にその通りだった。

「何してるの?」そう聞かれて、「ギャンブラー」なんて答えが返したら、
普通は”えっ。。”ってなる。
その言葉の持つイメージがもうダメな奴を連想させる。

けれど、その背景にある努力を小さいおじさんは見ていてくれた。
そして、僕が日々感じていた悩みや不安を見通していた。


小さいおじさん
「お前さぁ、これからどうやって生きたいの?」


急に右手にネギマ、左手には無くなりかけたジンジャエールを手にしながら聞いて来た小さいおじさん。

・・・どうしたい?


ぼく
「せ、成功したいです。」

そう一言勇気を出して言葉を返す。


小さいおじさん
「お前の成功って何?」

肉だけ食べたいのか、ネギマのネギを箸ではけながら聞いてくる小さいおじさん。


ぼく「自分のビジネスを持って、成功してお金を持って自由になるです。」

僕なりの理想の状態を伝える。


小さいおじさん「ビジネスって知ってる?まぁ今はええわ。わからんやろうし。なんでそうなりたいん?ほんまのとこ言えよ。」

ネギだけ残しながら食べ続ける小さいおじさん。


ぼく「一度の人生だからやっぱりお金持ちになって自由になって、たくさん旅行して、富も名声も欲しいです。そうなったら認められるだろうし。。」


小さいおじさん「ふ〜ん、なるほどなぁ。じゃあやめたら?ギャンブラー。」

急に上を見ながら何やら考え、強い雰囲気で言う小さなおじさん。



小さいおじさん「そうなりたいとか思ってんねやろ?今のギャンブラーって仕事してても不安で、見返したい欲が強くて、毎日幸せ感じれぇへんのやろ?そんなん自分が幸せじゃないならやめたほうがええって。ほんまに。お前さ、不安なんやろ?結局。やめたらお金どうしよう?とか、今の仕事はもうこなせてて、知ってる人たちの環境もあって安心で、これがなくなったらどうしよう?って不安なんやろ?けれど今のままじゃあかんこともわかってんねやろ?いや違ったらごめん。でもそんな感じやろ?」


ぐうの音も出なくて、心のど真ん中にあったことを言われて腹が立って、悔しくなってきた。


小さいおじさん「お前さ、多分誰からも本気で会話してもらったことないんちゃう?俺、本気で今から話するな?

あんな、決めれへんってずるいでほんまに。ああしたい、でもこうなりたくないなんて贅沢やん?ああする。こうなる。ってまず決めなお前が。決断できる自分にならなあかんて。人の言うことと時間の流れに任せてばっかやん。決めなかんてほんまに。世の中や人のせいにして生きんなよ。」


まさかまだ、ご飯も手をつけずに、自分の触れられたくない部分をこんなに言われるなんて思いもしなかった。



チャンスは自分が呼び込めるもの



小さいおじさん「例えばな、お前が来た時に俺聞いたよな?"何食べたい?”って。お前は自分の欲しいものを手にするチャンスがあったのにそれを拒否したんやで?この店知らんからってメニューも見んと俺に任せたんやで?もしメニューめくってたらめっちゃこれ食べたい!ってもんに出会ってたかもしれんのにやで?
あんな、ほんまに毎日毎日、決めることの連続なんやわ。選択と決断!今日何時に起きる、何食べる、どこに行く、これ全部自分で選んで決断してるやん。そういう決断できるならなんで自分の人生決めへんの?てか、そこを一番自分で決めないいかんとこじゃないん?」


自分で薄々わかっていたことをズバズバ言われて涙が止まらなかった。

わかってる。変わりたいと思ってる自分の心も。けれど怖くて怖くてしょうがない。

今の生活を辞めてしまったら全てが未知数。

何もなくなる。僕が僕でいられなくなる気がずっとしていた。




小さいおじさん
「ゆっくり考えて決めるも大切だけどな、一瞬の決断やて。食べたいもんも、この物がいるのかいらんかもこれからは5秒で決めや。そんで決めたことに何が起こっても自分で決めたことに後悔するのやめてみ。一瞬の決断はな、頭じゃなくて心から出るんやわ。それに無駄に考えてるんはほんまにもったいないで。それやめたら一番大事な命の時間を無駄遣いせんですむ。自分の心に従う生き方ちょっと出したりぃや。ほんまに一瞬の決断がお前の人生変えてくれるから。」


一瞬の決断。。

ご飯屋さんに行ってもメニューを見て迷う。
服屋さんに行っても何を買おうか迷う。
カラオケに行っても何を歌おう、コンビニで何を買おう?

決めるのにいつも時間がかかっていた。
納得して買わないと後で失敗して後悔したくなかったから。

けれど、小さなおじさんは、全く自分のしてこなかった考え方を提言して来てくれた。


一瞬の決断がお前の未来作るで。ほんまに。

その言葉に妙に不思議な力を感じた。


小さいおじさん「もっかい聞くけどさ、自分の心がしあわせじゃないなら辞めたら?ギャンブラー」

5、4、3、、、


ぼく「やめます」


たった一言、振り絞って出た言葉。けれど自分の心からの言葉と決断。
人生で初めての大きな決断だった。

これで5年後がどう変わってるんだろう?
わからない。見当もつかない。
けれどこの瞬間、ギャンブラーをやっている自分の未来は無くなった。
その変な安心感と、不安になんだか気持ちが軽くなって笑ったのを覚えている。

そして目の前で、ネギマのネギだけとって避けてたのに箸でネギを食べ出す小さなおじさん。


「食べるんかい!!!」

心の中で今日イチの大声で突っ込んだ。



2.一瞬の決断が5年後の未来をつくる


つづく、、、

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?