魅せられたモノへ還る

 逃げ水の如く逃げる光。それを追うのは…容易くはなかろうが、それでも追わねばいられず。
 薬物の如き酔いは四肢を捕らえて感覚をも浸食する。
 眩暈にも似た甘さを与えるその手を求むるは、愚かか……。

 否。…それは必然。
 必然であるが故に求むるモノ。
 必然であるが故に希う。

 光は水銀灯か誘蛾灯か。
 いずれにせよ、求めずにいられぬこの身を唯一縛るモノは…生。限りある時の中でもがく哀れなるイキモノ。

 その歩を止めるなかれ。
 求むるは心に非ず。言葉故に。
 確かな繋がりを求むるならば、その歩を止めるなかれ。
 止めるなかれ………。

#小説

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