分かっていても食べたくなる味

 海外にいた少しの期間を除いて、ずっと池袋の近くで暮らしているのに、どうしてもスマートにおすすめのレストランを提案することができない。有名なレストランは混んでいるリスクがあるし、予約したり並んでまで行くほどの熱意がない。そんな私がここ数年、急に誰かと池袋で食事をすることになったときに行くお店がある(相手が嫌でなければ)。

 西口に3店舗を構えている中華料理の楊というお店。テレビでも何度か紹介されていて有名なのに、そんなに混んでいない。というか、3店舗あるのでどれかは入れるイメージ。先日、友人に「池袋でおすすめのお店ある?」と聞かれ、辛いものが大丈夫かどうか、エスニックが好きか確認して、楊に行ってみた。時間も19時頃で、まだ早めだったので空いていた。楊といえば汁なし担々麵。なので、それを頼むことは決まっていた。そして、これはとにかく辛い。私は辛いものが特別好きでも得意でもないけれど、楊の汁なし担々麵は大好き。味が純粋に美味しいのです。なので、いつも辛さ控え目を中国人の店員さんにお願いする。それでもかなり辛い。「控え目」より分かりやすく、劇的に唐辛子と山椒を減らすという意味の日本語はないのだろうか。

 正確には、食べてるときの辛さはそこまででもない(控え目にしてもらってるし、何回も食べて慣れている)。怖いのは翌日。初めて楊に行った次の日の朝、通勤のため池袋から品川までの山手線に乗っているとき、渋谷あたりで下腹部に熱さと痛みを交互に感じた。なんかこう、冷えの時の痛さとは違ってヒリヒリする。とにかくトイレに行きたい。でも渋谷じゃトイレまで辿り着ける自信がないし、混んでたらアウトなので、恵比寿も耐えて目黒で途中下車。トイレに入れたときに安心感。詳しくは控えますが、香辛料が胃や腸など内臓を駆け巡る感じがしっかり分かりました。食べ物って、こんな感じのタイミングで消化されていくんだ、と。健康診断のバリウム検査か汁なし担々麵でしか味わえない感覚。もちろん、会社は遅刻しました。嘘つくのも面倒なのでとても正直に「昨夜食べた担々麵による腹痛で、目黒駅のトイレにいるので少し遅れる」旨、上司に連絡。そこまで詳細だと、皆様心配しつつ許して下さいました。いい職場です。

 後から知ったのですが、牛乳で事前に膜をはっておくと、少しこの痛みを軽減できるとか。でも、つい忘れてしまうんです。で、当然先日行った時もなんの対策もせず。幸い、次の日は土曜で午前中は予定がなかったので、安心して汁なし担々麵を楽しめました。麺のやわらかさと、絡み合ったひき肉と、2種類?のナッツの香ばしさと、ひりっとくる辛さのコンビネーションがとっても好き。気が付けば、他の席にも女性客がたくさんいて、みんな汁なし担々麵は頼んでいた。

 ただ、友人もあまり辛党ではないようだったので、他にレタスチャーハンと水餃子を頼んだ。メニューでおすすめされていた紅油水餃子。深く考えずに頼んだ結果、どんぶりいっぱいのマグマにぷかぷか水餃子が浮かんでいた。担々麵の辛さを補完したくて頼んだのに、とんだダークホース感(チャーハンのほうは優しい味で、正解でした)。早くマグマから餃子を救出しなきゃ、とアツアツのうちにいただきました。味は美味しかったです。でもスープは怖くて手が付けられなかったのが心残り。

 翌朝5時頃、寝ているときにやっぱり腹痛がやってきた。寝ぼけていてそれが腹痛と気づくまでちょっとかかったけれど、安定のトイレ時間でした。自宅で本当によかった。そして今回は腹痛がくるのが早かった。代謝良かったのか。ちなみに友人は朝は問題なかったとのことで、私が単に胃が弱いのかもしれないと思った。翌日どうなるか分かっていても、食べたくなる楊の担々麵。翌日の腹痛までが楊の汁なし担々麵。帰るまでが遠足みたいな。でも、今度は牛乳飲んでから行こう。

 

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