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炎天下とvolvic

お茶が無くなった。

いや、正確には空になった水筒に入れたウォータークーラーの水が無くなった。軽く舌打ちをしながらも幸い近くに自販機があったのでリュックから財布を取り出そうとしたのだが、この間訳の分からない餃子のメモ

を買って小銭がない事と、近くにコンビニがある事を思い出してそこまで歩くことにした。

世間では夕方と言われる時間帯にも関わらず歩数に比例してカッターシャツが汗ばんで来て、歩幅はだんだん短くなり背中は丸まって息が切れてくる。その様子たるやまさにウォーキングデッド以外の何者でもなかったであろうクソガ…小学生女児にでも見つかってたら速攻お縄であった。

この交差点を右折したらもう少しというところであの器械は無残にも赤になった。

なぁお前は時間通りに動くことしか出来ないのか?どうしてそんな非情なことができるんだ?そんな風にブツブツと文句を言いながらあいつに睨んで見ても返事はない。まったくもって嫌な奴だ。仕方がないので近くに日陰がないか探してみるとちょうどいい感じの木があったのでそこに行くことにした。その時、僕の目に入って来たのはあの四角い物。いつもなら無駄遣いマシーンとしか思ってないのだけれどその時はそのときばかりは天国のように見えた。もうお金のことなんてどうでも良かった。

何も迷うことなく財布をカバンから取り出す。何も考えずに1000円を入れて商品を選び汗まみれの手でボタンを押すとピッという電子音の後にガコンッと無機物な音がした。それを何かを考えることなく手を伸ばす。いつもより焦りながら、けれども確実に蓋を開ける。プシュという音がして、恐る恐る口を容器に近づけて

飲む

信号機が青になったのも忘れて飲む。結果として赤信号になってしまったが、寧ろ私の心は晴れやかだった。あんなに嫌な奴だと思っていた信号機でさえ仕事をまじめにこなすいい奴に思えた。夏場の飲み物の力たるや恐ろしい。

そのまま何事もなかったかのように目的地に向かう。そうすると沢山の人間がペットボトルを持っていることに気づく。あぁこの人も自分みたいに色々あって買ったんだろうなと思った。なんだか全ての人に優しくなれるような気がした。夏場の飲み物の力たるや恐ろしい。

向かいの若いイケメンサラリーマンもペットボトルを持っていた。volvicだった

アイツは許せない。

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